第46話 慰め
リサの前では平気そうにしていたブレッドだったが
ゴードン理事に関する報告を聞いて
かなりショックを受けていた。
父の代からいる生え抜きのゴードン理事は
ブレッドにとって
血縁こそないものの
信頼する親しい存在でもある。
そのゴードン理事の背任行為。
両親が他界したときに
心ない人たちから
土足で踏みにじられたブレッドの心。
再び辛い想いが胸に広がる。
理事会の決定を仰ぐまでもなく
失脚は免れない状況だった。
フォード弁護士は 肩を落とすブレッドに
早くこの状況を終わらせることが
ゴードン理事を救うことになる
と言われ
事を明らかにすることに決めた。
その日の夕方
リサは 新しいレストランのスタッフと
初めて顔を会わせた。
そして
メニューへの取り組み方や
栄養士からのアドバイスなど
ごく簡単に話しながら
スタッフそれぞれの人柄を知ることに
時間のほとんどを費やした。
スタッフは皆
リサの笑顔と穏やかな接し方に好感をおぼえ
リサもスタッフに好印象を抱いた。
次の集まりの約束をすると
帰り支度のために
リサは自室に戻ることにした。
ドアを開けると
高層ビルが作り出した煌めく夜景が
窓の向こうに輝いていて
思わず感嘆の声が漏れる。
わぁ
なんて綺麗なの
暗いままの部屋を
真っ直ぐに窓に向かって歩き
夜景に目を奪われていると
突然 後ろから抱き締められた。
一瞬 息を飲んだが
僕だよ
と耳元で囁く声に
足の力が抜けて 体を預けた。
大丈夫?
驚かせちゃった?
うん
ごめん
ブレッドは
後ろからリサの頬にチュッとキスをした。
ダメ…
驚いて腰が抜けた
えっ
ほんとに?
どうしよう…
どうしたらいい?
クスッ
おかえし
大丈夫よ
ブレッドの腕の中で くるりと向きを変えると
リサはブレッドの瞳を見上げた。
なんだかとても疲れているみたい
暗い部屋の中
夜景の光が二人の顔を浮かび上がらせると
リサがブレッドの両頬に手を添えた。
大丈夫?
なにかできることはある?
僕を抱き締めて
ブレッドはそう言って長い腕を広げる。
リサはブレッドの背中に手をまわし
胸に頬を寄せた。
ブレッドはリサの肩を包み込み
額に口づける。
お仕事終わったなら
早く帰って休んだほうがいいわ
う…ん
それがまだ帰れないんだ
もう少しやることがあってね
明日じゃダメなの?
ブレッドの腕に囲われたまま
上目遣いで訊いた。
クスッ
そんな顔で言われたら
どんなに仕事が山積みでも
明日にまわしてすぐにでも帰りたいとこだけど
う~ん
じゃあね
少しだけ今日のうちにやっつけた方がいいかも
家に帰ったところで
気になって休めないでしょ?
特に具合の悪いところはなさそうだし
私にできることがあれば手伝うわ
じゃ
「がんばれ」 の特効薬
ブレッドの言葉に首を傾げながら
ん?
とリサが訊くと
ブレッドの唇が
リサの艶やかな唇に重なる。
食むような口づけがようやく終わると
リサは蕩けそうな顔でブレッドを見上げた。
リサ
そんな顔で僕を誘ってるの?
ち 違うわ
頬を染めて俯くリサが
愛しくて仕方ないブレッドだった。




