第36話 病状
ねぇ
どうして診察室の前にいるの?
検査結果を聞きにね
どこか悪いの?
悪いところは
すでにリサ先生が治して下さいました
ふ ふざけないの
血液検査をしたんだ
血液型を調べようと思って
ついでに
アレルギーもね
何か症状が出たの?
うん
蕁麻疹が出たことがあるんだ
ただ
食材が限定できなくて
ちょっと困っていたんだよ
いつ頃から?
ここ1ヶ月くらいかなぁ
そうだったの…
中にお入りください
ドクターが部屋へと招き入れた。
ブレッドに手を繋がれたまま
リサも一緒に中に入ると
ドクターが
怪訝そうな顔でリサを見ている。
彼女は家族同然なので
ブレッドがドクターに言う。
では 検査結果について
お話します
机を挟んで
ドクターの向かい側に二人並んで座った。
まず 血液型については
この封筒の中にカードがありますので
それを確認してください
それから
アレルギー検査のほうですが
特殊な木にアレルギー反応がでました
食べ物でなく 木ですか?
食べ物については
アレルギー患者の多い食材から調べましたが
数値の高いものはありませんでした
反応があったアレルギーについてですが
実はまだここ2、3年に見つかったもので
症状を抑えるための薬は
従来処方している蕁麻疹の薬のみで
アレルギーそのものを抑える薬は
まだ研究中です
ドクターは立ち上がり図鑑を手にすると
机に広げて見せた。
これが陽性反応が示された木です
一般名は ティアードロップと言って
滴の形をした薄いブルーの実がなります
熟して落ちる様子が涙に似ていることから
この名前がつけられたようです
この木は…
見覚えがあるの?
家にあるよ
両親が
亡くなる少し前に見つけたらしくて
鉢植えを置いて楽しそうに話していたんだ
そうだったの
ドクターの説明は続く。
アレルギーの症状が出る原因ですが
少し変わっているんです
食物の場合は
それを食したときに
植物の場合は
それが生息している場所にいるときに
鼻炎や皮膚疾患の症状が生じます
しかし
ティアードロップに関しては
そこにもうひとつ要因が加わるのです
それは?
ブレッドの問いかけにドクターは
それは
寂しいと思う心的な要因です
つまり
この木の近くで生活をしていても
寂しさを感じなければ
アレルギー症状は現れません
症状が現れたということは
ワグナーさんの心に
寂しい気持ちが生じたということなのです
寂しいと思う原因を取り除くことで
症状は改善されるはずです
今はどうですか?
何か症状が出てますか?
いえ 今は別に
失礼ですが
最近 孤独を感じたり
人恋しいと思うことはありませんでしたか?
ブレッドはリサを見た。
少し前に両親を亡くしました
それと
愛する人が遠く離れて暮らしています
そうですか
恐らくそれらの要因がアレルギーを
引き起こしていると思われます
鉢植えを撤去するか
もしくは
離れている恋人に傍にいてもらうか
いずれにしても
原因は判明していますので
ご自身で回避できることを
やってみてはいかがでしょう
その木のアレルギーは
誰にでも発症する可能性があるんでしょうか
ええ
ただ
他のアレルギーと同じで
全く反応を示さない方ももちろんいます
わかりました
ありがとうございました
ドクターと握手を交わして
ブレッドはリサの手を引いて部屋を後にした。
作品中の植物及び病状はフィクションです。




