第35話 受診
昨夜の雨が空気を清らかにして
朝から陽射しが眩しかった。
リサはいつものように勤務についている。
朝から4人の予約があり
患者に合わせた栄養指導を行っていた。
最後の患者は60代の女性で
リサを気に入り
個人的な質問をしてきた。
ちょっと訊いてもいいかしら
結婚指輪をしていないようだけど
独身だから?
それとも仕事の都合で?
独身なんです
答えたくなかったが
入院患者とは顔を合わせることも多い。
雰囲気を壊さないために
さらっと返事をして話題を元に戻した。
じゃ
これで終わります
またなにか疑問点があったら
いつでも指導の予約をとってくださいね
お疲れさまでした
リサが立ち上がり
患者をドアの向こうに送り出すと
一人になった部屋でほっとため息をついた。
半分くらいは
理解してくれたかな…
1度では無理そうね
指導用のカルテに
内容や患者本人の理解度など細かに記入し
午前中の仕事を終えた。
午後になると
比較的時間に余裕ができた。
以前から進めている
病院食の新しいレシピについて
担当者との何度目かの打ち合わせも
ずいぶん形になってきていた。
お疲れさま
仕事終わりに食事でもどう?
調理師のケイトが声をかけてきた。
ありがとう
でも 予定があるの
ごめんね
ううん
いいのよ
もしかして
昨日のイケメンとデート?
えっ?
昨日 ナースステーションで話題になってたって
エイミーから聞いたの
外来スタッフが騒いでいたらしいわ
リサの恋人かも…って
そ そうなの…?
病院勤務は過酷だし
出会いの機会も少ない。
軽症患者や付き添いの家族を
意識して見てしまう傾向がある。
ましてや
ブレッドのような人目を惹く容姿なら
こっそり見に来たナースもいただろう。
リサは苦笑いをして曖昧に返事をすると
じゃ またね
ケイトに手を振ると
逃げるように部屋を後にした。
資料を抱えて廊下を歩いていると
外来スタッフにバッタリ会った。
あら リサ
ちょうど今 コールしようと思っていたの
なに?
お客様よ
もしかして…と思ったリサは
頬を上気させて尋ねた。
誰かしら?
昨日の彼よ
ありがとう
エレベーターで降りて
足早に廊下を歩いて行くと
外来の診察室前にいるブレッドを見つけた。
廊下の窓ガラスから差し込む強い陽射しが
金髪に弾いて輝いて見える。
近付いていくと
気配に気付いたブレッドが
満面の笑みを浮かべて立ち上がった。
リサ
来てくれたんだね
私を呼んだでしょ?
いや
今日は何も言ってないけど
そう
あなた
1度しか来てないのにすでに有名人らしいわ
リサが苦笑いをしながらブレッドを促し
二人並んで長椅子に座った。




