第26話 それぞれの場所
部屋に戻ってすぐ
リサはお風呂に湯をためて
長いこと漬かっていた。
いろんなことを思い巡らせると
胸がキュンと傷む。
本心を伝えたら
ブレッドとの未来はあるだろうか
いや
フォード弁護士から言われた通り
ブレッドは私とは立場が違う
グループのトップとしての
責任がある
結婚もある意味
その責任の中に含まれるのだろう
考えたところで
二人の歩む道が交わることはない
涙を浮かべながらため息をついた。
そのあとは
なにをやるにも気が入らず
時間ばかりが過ぎていった。
ベッドに入ってからもなかなか眠れず
日付が変わってしばらくたってから
ようやく眠りについた。
翌日
昼頃の飛行機に合わせて
リサは空港に来ていた。
人を愛するときめきや胸の高鳴りを感じた
忘れられない数日間だった。
滞在していた日々を振り返り
甘酸っぱい気持ちを抱きながら
リサを乗せた飛行機は時刻通りに飛び立った。
陽がだいぶ西に傾いた頃
リサは帰宅した。
明日から また仕事だ
自分に言い聞かせるように
小さく呟く。
荷物を片付けると疲れが押し寄せ
食事もしないまま
リサはシャワーを済ませて
早めにベッドに入った。
夜中
ふと目が覚めて携帯電話で時間を確認すると
着信が2件あるのに気付いた。
ブレッドからだ。
時間を考えメールを送る。
「電話に気付かず連絡が遅れてごめんなさい。
いろいろお世話になりました。
無事に帰宅しました。
体に気を付けてお仕事がんばってね。」
当たり障りのない
感情を隠したメールだった。
すると
すぐに返信が来る。
「今 電話してもいいかな?」
ブレッド…
電話くらいならいいかな
「うん 大丈夫よ」
リサが返信すると
すぐに電話の着信音が鳴る。
リサ?
寝てたの?
ブレッドの優しい声が
リサの耳に響く。
うん
ついさっき目が覚めたの
無事に着いて安心したよ
見送りに行かれなくてごめんね
ううん
私が来ないでって言ったんだもん
でも
行くつもりだったんだ
顔が見たくて
だけど 急に会議が入ってね
一人で寂しくなかった?
そうね
ブレッドと楽しく過ごしたから
少し寂しかったわ
僕は
すごく寂しかった
リサの顔が見たくて
リサの声が聞きたくて
会いたいよ リサに
その言葉に
リサはドキドキして声が震えた。
ブレッド…
1日会わなかっただけじゃないの
数日前まで お互いのこと
かすかな記憶しかない私たちだったのよ
またすぐに
お互いが傍にいない生活に
馴れるわよ
自分にも言い聞かせるように
リサが言った。
言ったろ?
リサは僕の時間の一部になってるって
会う前のような
リサがいない生活には戻れないよ
でも
そうしなきゃ
リサ…
ブレッド
そろそろ寝るわ
久しぶりの勤務だから
残業があるかもしれないし
あぁ
そうだね
ごめん
ううん
じゃ
おやすみなさい
おやすみ リサ
また連絡するね
通話を終えると
恋しさが募ってリサの胸は傷んだ。




