第25話 悲しい嘘
ブレッドが選んだのは
カジュアルフレンチの店だった。
好きな料理を選んで
ふたりでシェアしながら
楽しく食事を終える。
このあと
ホテルのバーで少し飲まない?
ブレッドが問いかけた。
こんな気持ちでお酒を飲んだら
今度こそ何を口走るかわからない。
そう思ったリサは
明日早いし
荷物の整理もあるからこれで帰るわ
ごめんね
またこの次に
きっとだよ
うん
そして会計のためにリサが財布を取り出すと
リサは僕の分を払って
僕はリサの分を払うから
そう言って
お互いにご馳走し合った形になった。
帰りの車内は
刻一刻と近づく別れのときを忘れるように
他愛ない会話で笑い合った。
ホテルに着くと
ブレッドは車のキーをドアマンに預け
リサの手をとって玄関ロビーに向かう。
エレベーターに乗ると
ブレッドが聞いた。
明日は何時の飛行機?
う…ん
早かったわよ たしか
見送りに行くからあとで教えて
ダメよ ブレッド
えっ?
見送りに来たら泣くからね
リサ
わざとおどけた口調で
リサが話し出す。
泣いたら 私
すごく不細工になっちゃうの
そんな顔見たくないでしょ?
だから来ないで
それに
ブレッドも泣くと困るでしょ?
もしかしたら
あなたの顔を知ってる人が
いるかもしれないもの
私まで巻き添えをくって
写真でも撮られたら大変
不細工な泣き顔が
世間にさらされちゃうわ
あはは
わかった わかった
話しながら
エレベーターを降りて
リサの部屋の前まで来ていた。
両手を繋いで向き合う。
じゃ
代わりに約束して
近いうちに必ず会うって
ブレッド
僕はまた明日も 明後日も
この先もずっと
リサに会いたいと思ってる
でも
仕方がないから明日は我慢するよ
だけど
またすぐに会いたい
わかったわ
そうしましょ
ごめんね…嘘ついて
頻繁に連絡を取り合おうね
そうね
ブレッド…ごめんね
少し潤んだ瞳で
ブレッドを見つめるリサ。
ブレッドはその両頬を
長い指をした綺麗な手のひらで
優しく包み込んだ。
リサの瞳を見つめ返すと
会えてよかった
そう呟いて
リサの額に口づける。
ずっとリサを想ってる
優しく微笑みながら
今度は唇にそっと口づけた。
ブレッドはすぐに唇を離すと
リサの瞳を愛しげに覗き込みながら
こんなふうに
キスしたらダメかな?
ただの幼馴染みなのに
と 囁いた。
そうよ
リサの言葉を遮るように
もう1度ブレッドが口づけた。
またすぐに離れる唇。
口づけられたリサは
目を閉じて
蕩けそうな顔をしている。
わかってる
でも…
ブレッドはそう言って
もう1度唇を重ねた。
今度はリサの頬においた手のひらを
背中にまわし
抱き締めながら強く口づけた。
ようやく唇が離れ
熱に浮かされたような瞳で
見つめ合う。
そこに
エレベーターから降りてきた宿泊客が
廊下を歩いて来た。
見つめ合っていた視線を
そちらに向け
それを合図に
リサは現実に引き戻された。
そろそろ入るわ
うん
じゃあね ブレッド
元気でね
うん リサもね
必ずまたすぐに会おうね
小さく手を振ると
リサはパタンとドアを閉めた。




