第21話 わかれのとき4
つい先程までの
重苦しい雰囲気はなくなった。
駐車場に着くと
ブレッドが助手席のドアを開ける。
ありがと
リサの言葉にブレッドは微笑んだ。
それから
荷物をトランクに入れて
運転席に座ると
夜景が見たいなぁ
でも 暗くなるまでには
まだ時間がかかるだろうなぁ
と呟いた。
それも
いつものリフレッシュ法なの?
リサが笑顔で聞く。
いや
ロマンティックな気分にして
リサを誘惑しようかと思って
えっ
リサが目を丸くして驚く。
あはは
やっと
僕のほうが優位になった
さっきまで
リサにいじめられてたから
い いじめてたなんて
人聞きの悪いこと言わないで
それに
ブレッドのこと
大好きって言ったじゃない
だけど
家族に対する 好き でしょ?
あ~ ブレッド?
探ったりするなら…
あぁ
わかった わかった
リサの意地悪
あはは
おかしいわ
つまらないことで
笑い合えることが嬉しかった。
こんなにも心を許しているんだと
リサは思った。
もうそろそろ
暗くなってくるわよ
とりあえず移動してみたら?
リサが言うと
OK
じゃ 行くよ
ブレッドの運転する車は
ビル群から少し離れ
この辺りで一番高いタワーに向かった。
あれに昇るのね?
車のフロントガラス越しに見える
空に届きそうなタワーを指差して
リサが言う。
うん
そうだよ
もっといられたら
他にも一緒に行きたい所があるのに…
ほんとに明日帰るの?
ええ
いつまでも社長不在じゃ
オフィスのみなさんも困るでしょ?
僕は社長になってからというもの
まとまった休みってなかったんだ
少しくらい大丈夫
それに
こう見えてもやり手の社長なんだよ
ほんと?
ブレッドってば自分で言ってる
あれ?
誰からも聞かなかった?
いいえ
聞いてないわ
じゃ
違うかも
あはは
ブレッド
おかしい~
楽しく笑い合っているうちに
車はタワーに到着した。
駐車場に車を停めて
ブレッドが運転席から降りると
助手席側にまわってドアを開け
リサが降りるのを見守った。
まだ少し早いけど
展望台に行ってみようか
途中の階は何があるの?
たしか
水族館だったと思うよ
わぁ
行ってみた~い
そうだね
夜景見るには早いから行ってみようか
駐車場から
エレベーターで水族館に上がると
夕方近いこの時間には
家族連れよりカップルがたくさんいた。
もしかして
みんな考えていることは同じかしらね
うん そうだね
薄暗い通路を歩きながら
水槽の明るさが二人の笑顔を照らす。
大きな水槽の中には
いろいろな種類の たくさんの魚が泳いでいた。
よくぶつからないわよねぇ
クスッ
リサ
感想がおかしくない?
そう?
だって あんなにたくさんいて
みんな泳ぎ続けてるのよ
疲れてスピードダウンする魚に
追突したりしないのかしら
それよりさ
こんなにいたら
家族や恋人とはぐれちゃうよね
ふふふ
ブレッドだって私のこと言えないわ
魚に家族や恋人っているの?
子孫をふやしているんだから
恋人から家族になってるんじゃない?
そうかなぁ
いや
そんなに真剣に考えなくても
やっぱり
僕たちの感想って変かもね
微笑み合いながら寄り添う二人は
他のどのカップルにも負けないくらいに
愛し合っているように見えた。




