第17話 現実
次の朝
リサは喉の乾きで目が覚めた。
ベッドから出て水を飲む。
まだぼんやりしている頭を目覚めさせるためにも
そのままシャワーを浴びた。
そうだ
ブレッドに連絡するんだった
シャワーを終えて
昨夜の約束を思い出し時計に目をやる。
わぁ
もう少しで10時だ
ブレッド
待ってるよね
独り言を呟きながら身支度を始めた。
今日は
ブレッドのご両親の墓地に行く。
髪は乾かして自然に下ろし
メイクはいつもの10分メイク。
ダークブルーのワンピースを着た。
そして
ブレッドに電話をする。
おはよう
リサよ
遅くなってごめんね
おはよう
リサ
ゆっくりでいいよ
支度ができたらロビーに来て
わかったわ
じゃ また後で
電話を切るとリサはすぐに部屋を出た。
早めにロビーで待っていようと思ったから。
エレベーターを降りてロビーに向かう途中で
見知らぬ男性に名前を呼ばれた。
少しお話があるのですが
よろしいですか?
ああ
申し遅れました
わたくし
Wグループ顧問弁護士の
フォードと申します
ワグナー家とは
家族ぐるみのお付き合いを
させていただいております
はぁ…
それで
お話というのは?
掛けて話しましょう
さぁ あちらへ
ロビーに並べられたいくつものソファの中で
一番隅にあるソファに座った。
早速ですが
社長と待ち合わせですか?
えぇ
話の本題も
あなたと社長のことなんです
ここ数日
社長があなたと過ごされていること
存じ上げております
幼馴染みでいらっしゃるとか
はい
お耳に入れておきたいのですが
社長には縁談がいくつかあるんです
ワグナーご夫妻がご存命のときから
早く家族を持って欲しいと
望んでいらっしゃいました
今回 このような不幸な出来事がありましたが
だからこそ
社長には幸せになっていただきたい
わかりました
わたくしの意図すること
お察しいただけますか?
はい
私は明日 帰ります
初めからその予定でしたし
長居をして
彼の幸せを脅かすつもりは
毛頭ありませんから
ご理解いただけて安堵いたしました
亡くなれたワグナーご夫妻とは
頻繁に連絡を取り合っていらしたのですか?
数年前までは
近況報告程度の連絡は
とりあっていました
ここ2、3年はお会いしていません
お父様からワグナーご夫妻について
何かお聞きになられてますか?
父からは昔の話しか聞いておりませんが
何か?
いえ
お気になさいませんように
では
わたくしはこれで失礼いたします
フォード弁護士は
足早に立ち去っていった。
それから数分後
リサを呼ぶ声にハッとする。
どうしたの?
ぼんやりして
早かったね
待った?
ううん
私も今来たところよ
お花を買いたいの
途中で寄ってくれる?
うん わかった
さあ 行こうか
フォード弁護士と会ったことも
話した内容についても
リサは何も言わなかった。