第15話 きらめく視線
噴水の広場を後にして
二人は食事をするために
レイモンドホテルに戻った。
ホテルの最上階には
フレンチレストランがあり
ブレッドが予約をしていた。
リサの部屋までブレッドが送る。
じゃ
1時間後に迎えに来るね
うん
じゃ また
そう言って別れた。
リサはシャワーを浴びて
先程買った ワンピースを着る。
サーモンピンクの柔らかな生地が
リサの白い肌にとても似合っている。
いつもの10分メイクでは
ワンピースに負けてる気がして
アイメークとルージュを華やかにしてみた。
ちょっとやりすぎかな
10分メイクを見慣れているせいか
ずいぶん派手に見えて
やり直そうとしたときに
ドアチャイムが鳴る。
リサはゆっくりとドアを開ける。
あのね
悪いんだけど…
と言うリサの言葉を遮り
リサ
なんて綺麗なんだ
さっきまでとは全然雰囲気が違うね
見とれちゃったよ
そう言いながらとても嬉しそうだ。
そう?
ちょっと派手かなぁと思って
やり直そうとしたとこだったの
いや
そのままで素敵だよ
良かったら 行こう
うん
ブレッドが手を差し出しリサがその手を握る。
並んでエレベーターに乗り
最上階を目指す。
繋いだ温かな手は
リサの心を穏やかにもするし
ときめかせもする。
何も言葉を交わさなくても
居心地の悪さはまったくない。
時折 目が合うと
にっこり微笑み合った。
最上階に到着しレストランに入ると
夜景の見える窓際の席に案内された。
二人が席に着くと
グラスに白ワインが注がれる。
続いて
色鮮やかな前菜から始まったコース料理は
美しく飾り立てられたデザートまで
十分に堪能した。
おいしかったわぁ
幸せ ふふふ
ほんと
蕩けそうな顔してるよ
うん
食べるの大好きだもん
仕事をしてるとね
食べ損なっちゃうときが
結構あるの
粗食だしね
ここにきてから
おいしいものばかりで太っちゃいそう
あはは
じゃ 明日は粗食にする?
明日は最後の日なのよ
粗食じゃ可哀想じゃない?
たしかに可哀想だな…僕が
はぁ?
私でなくブレッドが?
僕もおいしいものが大好きだし
何より
リサが嬉しそうにしている顔を
見られなくなる
その顔を見ているだけで
何だか僕も幸せな気持ちになるんだ
ブレッド
昨日再会したばかりなのに
いつの間にか当たり前のように
僕の時間の一部になってるんだよ
リサが
私も思っていたの
最初はぎこちなく感じたけど
すぐに心が解れて
いつも隣にいるのが
当たり前のように思えるの
幼い頃の気持ちが時を越えて
今に繋がったみたい
たしか
リサの初恋の人は僕だったよね?
そんなこと言った覚えはないわ
だって
僕が引っ越した後かなりショックだったって
それはそうだけど
仲良しのお友だちがいなくなって
寂しかったのよ
なんだ そうかぁ
残念だなぁ
どうして?
その気持ちが今に繋がっていたなら
嬉しかったのに
また からかうんだからぁ
ブレッドなんて
私のことすっかり忘れていたくせに
ブレッドの初恋は?
僕?
そんなのあったかなぁ
記憶にないなぁ
ガールフレンドはいたでしょ?
うん
ただの友達ならね
相手の女性も
友達だと思っていたかしら?
と 思うけど
私なら誤解しちゃうかも
ブレッドの優しさを
愛だと勘違いされても仕方ないわよ
あなたみたいな人はそこにいるだけで
女性に恋心を抱かせてしまうもの
リサも?
えっ?
リサも僕に恋心を抱いた?
幼馴染みにまで恋心を期待してるの?
ふふふ
笑ってごまかしたリサだったが
ブレッドへの答えはイエスだった。