第13話 接近
リサ
そんなふうに言われると
照れ臭いよ
え えっと
だって
誰も言ってくれない なんて
言うから
もう
そんなはずはないのに
褒められることには馴れてますよね
イヤだ 私ったら
ばかみたい
頬を染めて俯くリサを
ブレッドは優しい眼差しで
見つめていた。
そんな話をしながら
デザートのケーキも食べ終わり
リサは満足そうに
おいしかったぁ
と呟く。
さてと
このあとは?
特にはありません
じゃ
今度は僕に付き合って
それと
ブレッドって呼んで
もっと楽に話していいんだよ
ほら
昨日 お酒が入ったときみたいにね
ウィンクをしながらブレッドが言う。
え えぇ
リサがご馳走すると言ったのに
結局 ブレッドが支払った。
モールの駐車場まで二人並んで歩く。
ブレッドはリサの荷物を持ち
反対の手でリサの手を握っている。
リサはお腹がいっぱいで
眠くなってきた。
急に無口になったリサを
ブレッドが頭を下げて顔を覗き込む。
リサ
大丈夫?
ちょっと眠くなっちゃって
もしかして
歩きながら寝てたの?
う…ん
ブレッド…が手を繋いでくれるから
目 瞑っちゃった
リサ
面白すぎ
そう?
ブレッドだから安心してるの
リサはまた目を瞑って
手を引かれながらトボトボ歩いた。
駐車場に着くと
助手席のドアを開けて
ブレッドはリサを座らせた。
荷物をトランクに仕舞い
運転席に座る。
助手席のリサを見ると
トロンとした大きな瞳を
一生懸命 開けようと頑張っていた。
ブレッドは
リサの頬を手のひらで包み込む。
リサ
寝ていいよ
リサは
ブレッドを見て
ううん 大丈夫
ブレッドは
微笑み返すリサの髪を指で撫で付けた。
職場でね
ランチのあとに少しだけお昼寝をするの
急な患者さんで
夜中まで勤務することもあるから
習慣になってしまったのね
あぁ
だから昨日も昼寝したんだね
うん
遠慮はいらないよ
着いたら起こしてあげるから
寝ていいよ
う…ん
そう呟いたのを最後に
リサは瞼を閉じた。
どれだけ時間が経っただろう。
ブレッドの優しい運転のおかげで
リサは気持ちよく眠り続けた。
車を停めると
リサ
起きて
着いたよ
ブレッドが声をかける。
う…ん
リサは起きない。
ブレッドは
リサの頬を手のひらで包み
リサ
もう一度声をかける。
穏やかな寝顔をブレッドに向けたまま
リサは目を覚まさない。
その寝顔を見ていたブレッドは
リサに顔を近付けて
チュッ
音をたてて頬に口づけた。
ゆっくり瞼を開いたリサが
ドキドキしながら
大きな青い瞳でブレッドを見つめる。
クスッ
やっと起きたね 眠り姫
今のは夢…?
ブレッドに聞くこともできず
リサは寝起きの頭でぼんやり考えた。