パーティ追放後、一緒に辞めた聖女様に鍛えられていたのですが……聖女様の折檻が癖になって弱いままでいます。
「今日の成果は……スライム15匹だけ!」
私は聖槍の使い手フレア。訳あってスライムを専門に倒してる聖槍使いだ。まぁその理由も他人からすればくだらない理由ではある。
ガサガサ……
茂みから何やら音がした。そしてその向こうから血の匂いがする。これはもしや……
「ガアアァー!」
出てきたのはコモドドラゴンだった。そして口周りには血がべっとり付いていた。肉食モンスターで大きな個体だと人をも食べてしまう危険度Bクラスのモンスターだ。
「これは……大きいヤツだ……」
私は冷静に分析して一旦間合いを取った。間合いを取って敵意がないと分かれば去っていく時もあるがどうやらこの子はまだお腹が空いてるらしい。
「ガアアァ!」
私が間合いから出た事でコモドドラゴンは火を吹いてきた。だが私は避ける事なく真っ直ぐ突っ込んで火炎ごと切り裂いてコモドドラゴンの口に聖槍を突っ込み串刺しにした。
私は聖槍を抜き取るとそのままコモドドラゴンを置いて近くの川に向かった。
「うわー……血で聖槍がベトベト……」
私は聖槍を川で綺麗に洗っていた。コモドドラゴンは売れば高い値段が付く。だけど私は持って帰らない。帰ったらご褒美を貰えないからだ。
私は聖槍を綺麗に洗って水も拭き取ると血が付いてないか確認。
「よし!帰ろう!」
私は戦利品のスライム15匹を持って街に帰る。
街に帰ると街の中が慌ただしかった。
「コモドドラゴンだ!人を食う巨大個体だ!」
騒いでいたのはベテランハンターの人たちでよく見ると今日は人数が少ない。
「早く討伐しねぇと被害が広がる!」
「あぁ、俺たちの仲間はアイツに1人食われたんだ!下手すると危険度Aランクになるぞ!」
ものすごい剣幕だけど私には関係ない。私は帰りを待ってくれてる人の元に急いで戻った。
私は家に帰ると1人の女性が座って待っていました。
「聖女さま!ただいま帰って来ました!」
「あら、フレアおかえりなさい。今日はどうしでした?」
「はい!スライム15匹倒しました!」
私は15匹のスライムを見せるとそれをテーブルの上に置きます。そして……
「フンッ!」
「ぐはっ!」
私のお腹に深々の刺さったのは東洋の武術はっけいだった。私はそのまま家の外に吹き飛ばされ体を木に打ちつけて気絶した。そして気がつくと逆さ吊りにされていた。
「全くあなたって子は!スライム15匹で何を喜んでるのですか!」
「……が、頑張った方です!中身を見て下さい!Dランクの毒スライムも2匹倒して今回は毒も受けてないのですよ!」
「威張れる事ですか⁉︎毒スライムなんて初心者さんの獲物でしょうが!そして今日の目標はゴブリン退治だったはずですよ!1匹も退治してないじゃないですか!」
(それはガチで忘れてた…)
「とにかく今日はその格好で腹筋500回です。見張ってますからズルは出来ませんよ!」
「はい!」
聖女さまは異空間から鞭を取り出し私を見張る。そうこれが私のご褒美、聖女さまの折檻だ。本当はもう私は一人前で聖槍も使いこなせる。ランクで言えばAランクの冒険者と言っても遜色ない。それでもここにこうしているのは……
「ほら!ペース上げないと下着を誰かに見られてしまいますよ?」
「はいぃ!」
そう言いながら布のない私の太ももに鞭を振るってくる聖女さま。これが欲しくて私は弱いままのフリをしていたのだ。
思えばあれが全ての始まりだった。
「フレア、お前はクビだ。足手纏いにしかならん!」
「えっ?」
聖剣使いのセイユからの突然な邂逅通告そして他の仲間も続けて言った。
「聖槍なんて邪魔なのよね。下手に前にでるから魔法も使えないし。」
「かと言って1番槍として突っ込ませても女だからパワーもない。押し負けて何度聖女セーラの手を煩わせた?」
「という事だ。居てもいなくても変わらないお前はクビだ。」
4人中3人から私は不要と言われた。そして黙っている聖女さまも3人と同じ意見だろう……そう思っていた。
「はぁ……では、フレアさんは邂逅という事でいいのですね。セイユさん?」
「あぁ、セーラも同意見だろう?お前が1番苦労してたもんな?」
私を嘲笑いながら聖女さまに同意を求めたセイユさん。しかし聖女さまの答えは私の思ってた考えと全く違うものだった。
「では、私もフレアさんと抜けますね。」
「「「……は?」」」
「大体まだフレアさんはパーティに入って間もなく12歳のまだ子供、なのにろくに稽古もせず、使えないとレッテルを貼る事自体私は気に食わないです。」
「なんで、俺がそんな事をしなくてはならんのだ!第一、こいつは槍で俺は剣だ。全くの別職だ。」
「言い訳はそれでいいですか?ならばもう話す事はありません。行きましょうフレアさん。」
「あ、えっ?」
私が戸惑ってる間に聖女さまは私の手を掴んでその場を後にした。そして少し離れたところで聖女さまは息を吐いた。
「ふぅー……ありがとうね。フレアちゃん!」
「えっ?あ、あの……私ご迷惑をしか掛けてませんよ?」
「良いんですよ。あの人たちとは最初から馬が合わなかったのです。良いきっかけを下さりありがとうございました。それに……あの人たちを見返してあげたくないですか?」
「え……は、はい!」
「うん。良い返事ですね、ではしばらくは二人暮らしです。こうなると宿よりお家を探した方が良さそうですね。」
そうして私たちが家を借りて2年目だ。聖女さまは槍の戦い方を猛勉強して私に叩き込んでくれました。そしてミスをしたらその都度折檻された。そしてそれが癖になったのが今の私だ。
次の日……
「今日はゴブリン倒してくるのですよ。」
「はい!」
「……やはり今日は私も付いて行きます。」
「どうしてですか?」
聖女さまも外に出る事はある。だけどそれは前日から準備をしてからです。しかし今日の様に急遽出る事はありませんでした。
「嫌な予感がします。」
そう言うと杖と医療道具一式、そして食糧をあるだけ異空間に詰めて準備しました。
「今日は危ないと思ったらあなただけでも逃げて下さい。分かりましたね。」
「は、はい……」
物凄い剣幕で言われた為私は素直に返事をしました。
ゴブリン退治は意外とすぐに終わりました。聖女様は敵の探知にも優れている為すぐに見つけて少し苦戦するフリをして倒した。
「及第点です。パワーがない場合は受け流す様言いましたよね?何故真っ向勝負したのですか?」
「わ、私だってそろそろ力が付いて来たので……勝てると思いました。」
普通にしても勝てるけどまだ聖女様と離れたくない……その一心で私は弱いフリを続けた。
「かちきなのは良いですが。初の相手にそれは命を落としかねません。やめなさい。」
「はい。」
頭にコツンっとゲンコツを落とされた。ここで大技は使わないのは音を立てて他のモンスターを呼ばない様にする為だ。そして次に行こうとした時それは現れた。
「グワァァァァァ!」
地鳴りの様な雄叫び。そして少し離れたところで物凄い音がした。聖女様はすでに空を飛んでいた。
「あれは……地龍⁉︎」
聖女様が見たのは大地が隆起した中から出て来た龍……地龍だった?危険度Sランクオーバーのモンスターだ。聖女様は一度降りてきて私に言い聞かせます。
「良いですかフレア、あなたは街にこの事を知らせて下さい。私はアレの相手をします。」
「そんな……聖女様だけでは無理ですよ!私も戦います!」
その言葉に聖女様は私の顔にビンタした。
「良いから行って下さい!あれは最早人が相手に出来るものではないのです。1人の犠牲で街の多くの人が救われます。あなたに出来る唯一の事です。」
「そんな……」
「あなたは私の可愛い弟子です。出来ますね……?」
年は8つ違う。でもその目はお母さんの目だった。私が頷くと聖女様は凛々しい顔になり飛んで行ってしまった。
私は街へ直走った。そして街の前には大勢の冒険者がいた。
「みなさん!」
「なんだ……小娘じゃないか?今立て込んでんだ!早くお前も逃げろ!」
私は呼吸を整える。そして言った。
「聖女様……聖女セーラがあの地龍を止めると言いました。なので逃げて下さい!」
「はぁ!?何言ってやがる?あんなの1人でどうこう出来るはずないだろうが⁉︎」
「はい……ですが。聖女様は1人の犠牲で多くの命を救いたいと言っていました……なので私もこれを伝えたら戻ります!」
「はぁ⁉︎お前自分が何言ってるか分かってんのか⁉︎お前みたいなのが行っても足手纏いにしか……」
そこで私は今まで隠していた闘気を爆発させる。
「私はもう一人前です。なんたって聖女様が育ててくれたのですから……だから皆さんは安全なところへ!」
私はそれだけ言うと来た道を戻って行った。
私が全速力で地龍のいる場所に行くとそこはもう戦場になっていた。地龍は炎を出さない。だが。物凄い泥と毒が混ざったブレスを出している。そんな中で私を守ってくれているのは聖槍だった。この聖槍は持ち主に着く不浄な物を祓う特性を持っている。
そして空から再び泥の雨が降ってくる。それを見て私は槍を頭上で回し。全ての泥を弾く。泥の雨が止むと私は再び前進した。そして泥だらけで座りこんだ聖女様を見つけた。
「聖女さま!」
「フレア!何故ここに⁉︎」
「ごめんなさい……でも、私聖女さまと離れたくないんです!だから死ぬ時は一緒です!私も戦います!」
「ふふふ……育て方を間違えちゃったかしらね。」
聖女様は私の頭を優しく撫でてくれた。
「一緒に死んだらまた折檻してあげる。でも生き残ったら私の命令破った折檻しないとね。」
「どちらもご褒美です。」
私は立ち上がり聖槍を構える。そして闘気を爆発させる。
「私の聖女様をよくもやってくれたなー!お前なんて串刺しにしてやる!」
私は神速と呼ばれる速度まで加速し槍で地龍の胴体に突き刺した。そして一気に引き抜き後方に飛び退く。一見ただ一太刀浴びせただけ。だけど聖槍と呼ばれる所以はその能力にある。
「グアアア!」
「地龍、あなたの泥はもうただの泥だよ!」
泥を更にばら撒くももう毒性は完全に消し去っていた。これは聖槍の能力、傷を与えた相手は毒性、呪いなどの付加されてる物を全て消し去ってくれるのだ。そしてもう1つの能力は……
「聖槍よ!増えろ!」
私の呼びかけに聖槍は5本になった。これらを全て持つ事は出来ない。だけどこれを一斉に放つことは出来る。そう、先ほど付けた傷の元へ。
「グアアアァァァァ!」
例え小さな傷でも広がればそこから血が抜けていく。それが大きくなればなるほど速くだ。私は遠くからこれを繰り返す。そして怯んだ隙に先程の神速で再び別の場所に傷を付けるそうする事でまた狙われる場所が守りが手薄になる。そうなれば後はジリ貧だ。倒れるまでに時間が掛かったが私たちの勝ちだ。
地龍が倒れたのを見て私は聖女様の元に戻った。
「聖女様!勝ちましたよ!」
しかし聖女様の顔は鬼の様だった。私は気圧されその場で立ち止まってると聖女様の方から来てそして……
「フンッ!」
「グヘ!」
はっけいを食らって気絶した。
目が覚めるといつもの様に逆さ吊りにされていた。しかしいつもと違ったのは服が全て剥ぎ取られており身につけているのは下着だけだった。
「いつから私を騙していたのですか?」
声のする方にはムチを持った聖女様がいた。顔は笑ってるのに目が笑ってない。
「なんの事ですか?」
私がシラを切るとムチが私の体を捉えた。
「ひぃぃぃ!」
「話したくなったら言ってください。それまで私はムチを振ってますから当たったらごめんなさいね。」
当てる気満々である。私は待ったをかけて話すことにした。
「離れたくないから弱いフリをしてたと……」
「はい……申し訳ありません……」
結局ムチで10発叩かれた後に私は話す事を許されて今に至る。
「馬鹿な子ですね。」
「はい……」
「素直に一緒に居たいと言ってくれればこんなことにならなかったのですよ。」
「えっ?」
「良いじゃないですか。2人で生活するのだって。パーティに戻りたくないのでしょう?」
「はい……」
「じゃあそうしましょう。」
「そんなあっさりで良いんですか?」
「良いですよ。私もこの生活気に入ってますし。」
聖女様は私の縛っていた縄を解いて下ろしてくれました。
「これからは素直に言って下さいね。」
そう言って私のおでこにキスをしてくれました。私は照れくさそうに返事を返しました。
「はい……」
「では、祝勝会をしましょうか!身体を洗って来て下さいね。服は新しい物を用意しておきますから。」
そうし聖女様はて家の中へと入って行った。
(聖女さまが照れる顔……初めてみたな……)
私は少し笑って体を洗い流して家の中に入るのでした。
fin
読んで頂きありがとうございました!設定ガバガバのみきり発進でしたがいかがだったでしょうか?
楽しんで頂けてれば幸いです!