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俺を殺しに来た天使が許嫁になったんだが……?  作者: 卯村ウト
第1章 ある日天使がやって来て
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#088 The other combination⑤



「はぁ……はぁ……ううっ」

「ごめんね、無理言って」

「だ、大丈夫……うっ」


 荒い呼吸、顔面蒼白の状態でベンチに座って泣きかけているのは水無瀬菫。そして、ベンチの前に座って菫に心配そうに声を掛けているのは、雨宮舞。

 彼女たち二人はさっきこの遊園地最大のジェットコースター、ブリガンドに乗って来たばかりだ。


 しかし、それを楽しんだのは舞だけ。舞に連れられて不可抗力的に乗り込んだ菫は最初の急降下で、あまりの恐怖に気絶してしまったのだ。


「というか、乗っている間の記憶なんてないわよね?」

「でも……でもぉ……」


 ジェットコースターが一周して戻ってきた時、舞は菫が隣の席で気絶しているのに気づいた。彼女はその運動神経を駆使して、菫をおんぶしてここまで連れてきて座らせた後、起こしたのだ。

 目覚めてからずっと、菫はこの調子である。記憶は無いはずだが、彼女の中ではジェットコースター=怖いものとしてトラウマになってしまったようだ。


「ごめん……」

「ううん、大丈夫……」


 なんか思いっきりキャラ変わっているわね……こっちのキャラも可愛い、と舞は不覚にも密かに心の中で思ってしまった。

 それでも、元気づけなければならない。元の調子に戻してあげなければ。それをするには何をすればいいのか。彼女は考えた。


 そして、彼女の至った結論は……。


「……私の前で泣くな、我が半身。この程度のことで泣くような時間跳躍者(タイムリーパー)だったか、君は」

「……レーゲンパラスト」

「フフフ……君のスタンスは『過去には囚われない』ではなかったか? 恐るべきブリガンドは既に過ぎ去った。さあ、君の目的を思い出せ、我が半身よ」


 そんな舞の中二的な言葉に、菫はハッ、と何か大切なことを思い出した、という顔をすると。


「……我が目的は二人を追い、来るべきその時に備えて万全を尽くすこと!」


 菫は涙を拭うと、スッと立ち上がる。心の変わりようの速い中二病である。


「追跡を再開するぞ、レーゲンパラストよ!」

「おー!」


 菫は立ち上がって、人ごみの中を早足で歩いていく。

 そして、しばらく歩くと、不意に舞の方を振り向いた。


「レーゲンパラスト、その……これからずっとあの口調でいて欲しい」

「却下よ」

「何故!」


 流石に中二病の口調は精神的に疲れるし、やっぱり恥ずかしいからね、と舞はこっそりため息をついた。



 次回、2022/06/08 19:00頃投稿予定!

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