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俺を殺しに来た天使が許嫁になったんだが……?  作者: 卯村ウト
第1章 ある日天使がやって来て
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#063 ごあいさつ



 この家の家事の大半は俺が担っていると言ってもよい。

 つまり、水仕事はたいてい俺がやっている。


 この時期の水は当たり前だがものすごく冷たい。あー、マジで辛い。早く野菜を洗うのを終わらせてぇー!


 そんな俺の苦しみも知らず、姉ちゃんは食卓でスマホを弄り、五十嵐は炬燵でヌクヌクしながら録画した深夜アニメを観ていた。


 お前ら、少しは手伝えよ……。


 そんな気持ちをため息と一緒に押し流すと、突然姉ちゃんが思い出したように言う。


「慧、お父さん、今年も帰れなさそうだって」

「ふーん」

「反応薄っ!」

「だって親父、毎年帰ってきてないじゃん」


 親父と一緒に年を越した記憶があるのは小五の時が最後だ。もう四年も帰ってきていないからいい加減慣れた。

 今はカイロにいるんだっけ。日本より暖かくていいじゃん。カイロだけに。


「薄情だな~慧は」

「てかどうやって姉ちゃんはそれを知ったんだ? 国際電話か?」

「LIME」

「はぁ⁉」


 連絡手段が軽い! 電話ぐらいしないか?

 だが、ほら、と姉ちゃんがLIMEの画面を見せてくる。


『お父さん、今年も帰ってこれそう?』

『無理そう。今年も忙しくて、、、ごめんm(__)m』


 親父ってこんな人だっけ⁉ 全然俺の記憶と違う……。

 しかも、俺、親父のアカウントを持っていないんだけど……。姉ちゃん、いつの間にか入手していたのかよ。


「後で親父のアカウントをくれ」

「りょうか~い」


 姉ちゃんはスマホカバーをパタンと閉じて、スマホを机に伏せると五十嵐の方へ向き直る。


「そういえば、ひかりちゃん」

「はい、どうかしましたか?」


 五十嵐は一旦テレビを見るのを止めて、姉ちゃんの方を向く。


「もうそろそろひかりちゃんのご両親にもご挨拶したいわ」

「えっ⁉」


 五十嵐は突然驚いた声を出して、途端に慌て始める。

 おいおい、目がめちゃくちゃ泳いでいるぞ。ワールドレコード出そう。


「え、えーっと……」

「あれ? ダメだったかしら?」

「えええ、いえいえ、そんなわけないですよぅ! だけど……」


 そう、五十嵐は元々天使。元々人ではない。そのため、姉ちゃんが挨拶をしたいご両親はいない。

 存在しない両親に挨拶したいと言われても……と五十嵐は困惑しているのだ。


「もしかして……」


 姉ちゃんの言葉に、五十嵐は唾を飲み込む。


「ご両親海外?」


 そして、姉ちゃんは五十嵐の言い訳の材料を自分で与えてしまう。

 もちろん、五十嵐がこの機会を逃すはずはない。


「あ、はい! 実は両親ともども海外に出張に行っておりまして、当分日本には帰ってこないんです……すみません」

「あ、そうなのね。こっちこそ事情も知らずに言っちゃって……ごめんね」

「いえいえ、とんでもないです!」


 五十嵐は安堵した顔でそう言った。

 上手くごまかしたな、五十嵐。



 次回、2022/05/27 07:00頃投稿予定!

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