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俺を殺しに来た天使が許嫁になったんだが……?  作者: 卯村ウト
第2章 移ろいゆく関係の末は
196/237

#196 げこ



 料理を食べたり、妙に上機嫌な五十嵐と話したりしていると、不意にアナウンスが会場に鳴り響く。


『宴もたけなわでございますが、そろそろお時間が参りましたので……』


 どうやらパーティーが終わる時間らしい。腕時計を見ると午後九時をとっくに回っていた。今から帰ると家に着く頃には午後十時になってしまうだろう。


 閉めの挨拶が終わり、パーティーの参加者は三々五々と帰っていく。俺もその流れに乗って、帰ろうと席を立つ。


「よし、五十嵐、帰るぞ」

「ふやぁ~……」

「……五十嵐?」


 様子が変だ。五十嵐はトロンとした目でこちらを見つめたまま、立ち上がろうとしない。それに、妙に顔が赤い。


「おーい、大丈夫か? 熱でもあるのか?」

「らいじょーぶらいじょーぶ~えへへ~」

「お、おい!」


 すると、五十嵐は突然、立ち上がろうとする俺の袖をギュッと掴むと、そのまま俺の腕に抱きついて顔を埋めた。

 俺が困惑する間も無く、五十嵐の隣の席に座っていたアリスがガタッと立ち上がる。


「あ、アンタ、ひかりに何をしたの⁉︎」

「お、俺も何が何だか……」

「何か変なモノでも飲ませたんじゃないの⁉︎」

「飲ませてないって!」


 俺は五十嵐に呼びかけて顔をこちらに向けさせると、額に手を当てる。熱は無いようだ。だったら、いったいこれは……?

 そう思った俺の視界にふと入ってきたのは、空になったグラス。確かそこにはシャンパンが入っていた。……まさかとは思うが。


「こいつ、酔っ払っているのか?」

「ふやぁ〜」


 そう考えると辻褄が合う。さっきまで妙に上機嫌だったのも、顔が若干赤くなっているのも、今こんな風にボヤッとしているのも、全て酒に酔っているから。


「でも、ノンアルだったわよね?」

「……もしかして、アルコールが入っていたんじゃないか?」


 もっちーがそんなことを言い出した。ノンアルなのにアルコールが入っている? 矛盾しているぞ。


「どういうことだ?」

「法律では、アルコール濃度が一パーセント以上のものをお酒と定義していて、それより低い濃度のものはノンアルコールと言うんだ。つまり、ノンアルコールと一口で言っても、アルコールがほぼゼロのものと、アルコールが多少含まれているものがあるんだよ」

「そうだったのか……」


 つまり、俺がノンアルだと思っていたあのシャンパンには、実は微量のアルコールが入っていた、かもしれないのか……。

 でも、俺たちは全然酔っていないし、同じ物を飲んだはずの五十嵐は酔っている。ということは、だ。


「なるほど、コイツはとんでもなくお酒に弱いのか……」

「おさけつよいよ〜わたし」

「嘘つけ」

「ほんとだもん! おさけつよいもん!」

「はいはいわかったわかった」


 弱いじゃん! これ以上はダル絡みされそうだから、適当に流しておこう。


 それよりも、俺には喫緊の問題がある。ヤバい、余裕が無くなってきた。

 俺はなるべく急ぎつつ、しかしゆっくりと立ち上がると五十嵐を優しく振り解く。


「すまん、二人とも、俺ちょっとトイレに行きたいから、五十嵐と一緒に外で待っていてくれないか?」

「了解した」

「え〜いっちゃうの〜」

「ひかりー! こんな奴よりあたしたちと一緒にいよ!」


 アリスが引き寄せられて、五十嵐が俺の下から完全に離れる。そして、俺は荷物を持つと、壁際に立ち、帰る客を誘導している黒服へ、トイレの場所を聞きに行った。



 次回、2022/08/02 19:00頃投稿予定!

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