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俺を殺しに来た天使が許嫁になったんだが……?  作者: 卯村ウト
第2章 移ろいゆく関係の末は
186/237

#186 これが映画……(感動)



「わぁ……人がたくさんいるねー!」

「そりゃそうだ。駅前だからな」


 水曜日。青色の寒空の下、駅前には人が行き交っていた。

 もちろん、家の最寄り駅ではない。隣の街の中心部に位置する大規模なターミナル駅だ。まだ朝の時間帯なので通勤通学中の人も多い。それに、都立高校は一斉に受験休みに入るので、私服の高校生らしき人も多い。


 朝っぱらから、ここに何をしに来たか。


「ねぇねぇ慧! 早く映画館に行こうよ!」

「はいはい、だからそんなに焦るなって」


 俺は走り出した五十嵐に引っ張られるようにして、駅直結のデッキの上を進む。

 人ごみの中をすり抜けるようにして進むと、すぐに目的の建物が見えてきた。多くの店が入っているからか、出入り口ではたくさんの人が行き来している。目的の映画館――正確にはシネコンは、この建物の最上階に位置している。


 気持ちが抑えられないのか、エスカレーターからエスカレーターへ乗り継ぐ時の彼女の足は妙に速い。


 シネコンに入った後、俺たちはチケットを購入する。その後もまだ時間に余裕があったので、シネコン内の売店でポップコーンや小さなお菓子を買った。


「ねえ慧、これまでのあらすじ、ちゃんと覚えてる?」

「ああ、もちろんだ」


 俺たちが今回観る映画は、有名なライトノベルが原作のラブコメだ。アニメも一期、二期と放送され、未だなお高い人気を得ている作品である。もちろん、俺たちは原作を全巻読破済みで、アニメも一期二期全話視聴済み。いつ映画を観ても大丈夫だ!


『間もなく、九時十五分より、五番スクリーンで……』

「あっ、入場が始まるよ、行こう」

「お、おう」


 アナウンスが流れた瞬間、五十嵐は俺の手を引っ掴んで入場口へと走っていく。どんだけ楽しみなんだよ……。開場しても、上映開始までまだ二十分以上もあるぞ……。まあ、五十嵐が楽しみなら良いんだけどさ。


 引っ張られて入場ゲートを通過し、その時に入場特典をゲットしながら、俺たちは五番スクリーンへ向かう。あまりにも入場が早すぎたのか、スクリーンのある部屋に入った時にはまだ誰もいなかった。人生初のシネコン一番乗りである。


「わぁ……ここが映画館……」


 五十嵐は誰もいないシネコンをキラキラした目で見回している。

 俺も誰もいないシネコンを見るのは初めてだ。


 ひとしきり見回した後、後からやって来る人の邪魔にならないように、さっさと席につく。

 俺たちが確保した場所は列の真ん中くらい。横にも真ん中くらい。近すぎず遠すぎず斜めすぎず、ちょうどいい場所だ。


 上映が始まるまでの約二十分間、俺たちは入場する時に貰った特典の限定小説を読んだり、お菓子を食べながら時間を潰す。


「いよいよだね……」

「ああ、そうだな」


 お馴染みの映画泥棒が流れた後、部屋全体が暗くなり、横に座った五十嵐が呟く。

 そして、映画が始まった。



 次回、2022/07/28 19:00頃投稿予定!

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