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俺を殺しに来た天使が許嫁になったんだが……?  作者: 卯村ウト
第2章 移ろいゆく関係の末は
181/237

#181 警告



「……俺?」

「そう。あんたよ、雨宮慧」


 しばしの沈黙。二月の冷たい空気が、ひんやりと音を立てているのが聞こえてきそうなくらい静かだ。

 ……俺? いまいち状況が掴めないんだが。


「本当に俺?」

「だからそう言ってるじゃない! ……話を進めるわよ?」

「あ、ああ」


 正直まだ完全に呑み込めていないが、これ以上待たせるとアリスがキレそうだし、先に進むしかない。


「あたしがアンタに会いに来た目的は一つ……アンタへの伝言を託されたのよ」

「伝言?」


 天使が俺に何の用かと思ったら、伝言だけ?


「そうよ」

「そんなことのために、ここに降りてきたのか?」

「……そんなことって何よ。『神様からの伝言』と言っても、まだそんなことが言えるわけ?」

「なんだと?」


 これは聞き捨てならない話だ。神から直接俺に向かって伝言だと? 五十嵐に持たせた携帯電話を通じてじゃなくて、わざわざアリス――ミカエルという天使を寄こして? そんなに重要なことなのか?


「じゃあ、言うわよ。一度しか言わないから、その耳をよーくかっぽじって聞いておきなさいよ」

「お、おう」


 そこで、アリスは一息つくと、ゆっくりと朗読するように言葉を紡ぐ。


「『近く、天使セラフィリに崩壊の危機が訪れる。それを防げるのは、かつての光のみだ』」


 数秒間、俺たちの間に無言の空気が流れる。


「……これだけ?」

「これだけよ」

「なんじゃそりゃ」


 聞く限り、何かの詩のようにも聞こえる。

 だが、ここから意味を理解するのはかなり難しそうだ。重要なことは暗示を使って述べられているみたいだし、意味深長で直接的な言及はなされていない。だが、この先に悪い未来が待ち受けている、というニュアンスは何となく理解できた。まるで予言のようだ。


 『セラフィリの崩壊』……。ものすごく怖いワードだ。まるで彼女の存在そのものに関わるような、そんな不安なワードだ。だが、伝言の後半には救済策らしきものも述べられている。『かつての光のみ』。これが何を意味するのか、俺にはこの場ですぐに理解することができない。時間をかけてじっくり考える必要がある。


「それにしても、お前、たったこれだけのことを伝えるために、何カ月かかってんの? お前が地上に降りてきてから一カ月半も過ぎているが」

「……それは……セラフィリと一緒に過ごしていたから、思わず夢中になっていただけだし……」

「ダメじゃん!」


 本来の目的を忘れて一カ月半も道草食っているなんて、どんな仕事できない天使だよ。


「うるさい! 別にいいでしょ⁉」

「よくねえよ!」


 アリスは逆ギレした。売り言葉に買い言葉、いや、この場合はボケとツッコミか? ともかく、言葉の応酬が激化しようとしたその時、キーンコーンカーンコーンと、呑気なチャイムの音が聞こえてきた。


 俺たちは、すぐに無言で廊下を猛ダッシュした。



 次回、2022/07/26 07:00頃投稿予定!

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