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俺を殺しに来た天使が許嫁になったんだが……?  作者: 卯村ウト
第2章 移ろいゆく関係の末は
175/237

#175 やはり今年もヤバかった



 湯崎から予想外の義理チョコを貰ったその夜。夕食を食べ終わった直後だった。


「あ、そうそう。慧、それにひかりちゃん。渡したいものがあるんだけど」

「……あー、うん。分かった」

「分かりました!」


 姉ちゃんが何をしようとしているのか、俺にはすぐに分かった。

 今年も覚悟していたが、まさか一日早いとは思っていなかった。ちょっとまだ心の準備ができていない。俺は食器を台所に運ぶ途中、一旦立ち止まって深呼吸をする。……よし、覚悟はできた。


 そして、そのまま食器をシンクの中に置くと、俺はいつもとは違い、姉ちゃんの正面の席に座った。五十嵐は普段の席である俺の隣に座る。


「それで、渡したいものってなんですか?」

「ちょっと早いけど……じゃ~ん!」


 姉ちゃんが得意顔で、テーブルの下に隠していたものを俺たちの目の前に置く。


「これは……チョコレートですか⁉」

「その通りよ!」


 そりゃあ、箱の上面にはでっかくチョコレートと書いてあるんだし、当然だろう。

 でもなぁ……。チョコレートはチョコレートなんだが、姉ちゃんが出してくるものだから、絶対にロクなものじゃないんだよなぁ……。


「というわけで、これは二人へのバレンタインチョコ。開けてもいいわよ」

「わぁー! わたしも頂いていいんですか?」

「もちろんよ。ひかりちゃんにはいつも慧がお世話になっているもんね」


 どちらかというと、主に俺が五十嵐のお世話をしているような気がするのだが、俺の勘違いだろうか。

 そうツッコみたい気持ちを押さえていると、早速五十嵐がベリベリとテープを剥がして箱を開ける。


「うわぁ……!」

「おぉ……!」


 箱の中は仕切りで三十個程の小部屋に仕切られており、様々な形の小さいチョコレートが、それぞれの小部屋の中に入っていた。どうせまともな手作りチョコレートじゃないだろう、と思っていたが、そもそも手作りではなかったのだ。これは認識を改めなければならないかもしれない。


「これ、結構高かったんじゃねえの?」

「そうなのよ~。だいたい千五百円くらいしたかしら」


 そして意外と高い。こう言っちゃなんだが、今回は期待してもいいかもしれない。


 ――だが、そんな期待をした俺が馬鹿だった。


「それじゃあ、いただきます」

「いただきます」


 俺たちは早速賞味しようと、それぞれミニチョコレートを一つずつ手に取る。そして、それを口の中に入れた。


 次の瞬間、口と鼻の中がものすごい感覚に襲われた。

 『辛い』でもない。『甘い』でもない。そう、一言で言うならば――


「姉ちゃん……これ、カカオ何パーセント?」

「え? 九十九パーセントだけど」

「やっぱり!」


 めちゃくちゃ苦かった。


 そして、俺たちは口を押えながら水を求めて洗面所へ駆け込んだ!



次回、2022/07/23 07:00頃投稿予定!

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