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俺を殺しに来た天使が許嫁になったんだが……?  作者: 卯村ウト
第2章 移ろいゆく関係の末は
170/237

#170 Should we stop the Tomochoco system?



 その日の帰り道。俺はふと、昼休みのもっちーとの一件を思い出して、隣を歩く五十嵐に尋ねる。


「なあ五十嵐」

「ん? どうしたの?」

「お前、バレンタインデーって知ってるか?」

「もちろん! 知ってるよ!」


 そう言うと、五十嵐はエッヘンと胸を張る。いや、そこ別に誇るべきところじゃないんだが。


 それにしても、五十嵐の一般常識にはかなりばらつきがあるな……。古来日本から伝わる節分みたいな行事は知らないくせに、西洋では一般的なクリスマスやバレンタインデーは知っている。やはり、天使であったことと密接に関係しているのだろうか?


 そんなことを考えている間にも、五十嵐はそのまま誰も頼んでいないのにバレンタインデーの解説を始める。


「バレンタインデーの歴史は、古代ローマ帝国の時代にさかのぼるとされているんだよ。当時、ローマでは、二月十四日は女神・ユーノーの祝日で、彼女はすべての神々の女王であり、家庭と結婚の神でもあったんだ。翌日の二月十五日は、豊作を祈願する(以下略)」


 お、おう……バレンタインデーについてよく知っているな……。まるでWikiped●aから引用してきたかの詳しさだな。その内容があっているかどうかは、俺には判断できないが。


 五十嵐は、俺の横を歩きながら十分以上専門的な解説をすると、一息ついた。


「でも、最近、『バレンタインデー』っていう単語と一緒に『チョコレート』ってよく言われているけど、やっぱり何か関係がるのかな、慧?」

「そうだな」


 まあ、ここが五十嵐の知っている正統なバレンタインデーとの違いだな。


「日本では、バレンタインデーに、女性が意中の男性にチョコレートを贈る、っていう習慣が根付いているんだ」

「だから最近、皆チョコレートの話をしていたんだ!」


 五十嵐は納得がいったようだ。


「まだそれだけじゃないぞ。『一応チョコレートをあげる』みたいな義理チョコっていうやつもあるし、女子どうしで交換する『友チョコ』というのもあるらしい」


 女子特有の面倒くさい友人関係のせいか、俺の中学校時代の同級生の女子が『友チョコは廃止するべきだ』と英語でスピーチをして賞を勝ち取ったこともある。

 だが、五十嵐はそれとは対照的に、バレンタインデーにチョコレートを作る気満々な様子だ。


「じゃあ、チョコレートをたくさん作らないといけないね!」

「そうだな」


 五十嵐は、『まずアリスでしょ~、それに……』とクラスメイトの女子の名前を次々と挙げていく。いったい何人にあげるつもりなんだ……?


「そんなに作れるのか……?」

「大丈夫だよ! あ、あと慧にもあげるからね! もちろん特別でっかいやつ!」


 特別、という言葉に俺の胸が思わず跳ねる。

 そして、うろたえた俺は形にならない思考を、そのまま口から流していった。


「お、おう……べ、別に女子からチョコレートが欲しいとかそういうのじゃないからな。五十嵐がくれるって言うなら、ありがたく貰うが……」


 ヤバい、なんかアリスみたいなツンデレ口調になってしまった……。

 だが、当の言われた本人はまったく気にしていないようだった。

 何故なら、飛び切りの笑顔で。


「もちろん! わたしがあげたいからあげるんだよ!」


 バレンタインデーの前なのに、チョコレートを貰ったかのような、ドキドキ感に俺は襲われたのだった。



 次回、2022/07/20 19:00頃投稿予定!

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