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俺を殺しに来た天使が許嫁になったんだが……?  作者: 卯村ウト
第2章 移ろいゆく関係の末は
159/237

#159 小遣いピンチ!



 俺と五十嵐は大通りに合流すると、東へ進んでいく。


 高校生になってから電車通学になり、いつも乗り降りする駅が自宅の北にあるので、この大通りも滅多に通らなくなった。小学生・中学生時代はずっと通学路だったのだが……。理由が無くなると、慣れている道も通らなくなるものだ。


 俺がそんな真理っぽいことを考えている一方、五十嵐はあちこちを見回していた。

 具体的には『へぇー、こんなところがあったんだー』とか、和菓子屋のショーウインドウにはりついて『わぁ……おいしそう……』とか言っていた。お前、さっき朝食を食べたばかりだろうが……。


「おいしそう……」

「おい、行くぞ」

「じゅるり」

「モシモシイガラシサーン?」


 あ、もしやこれは……。


「ねえ慧、これ買って!」

「やっぱりそう来たか!」


 今月小遣いピンチなんだが。というか、五十嵐も小遣い貰っているんだよな?


「ねえお願い……買って?」


 ね、ねえ、そんな捨てられた犬が『拾って』とアピールするような目をしないでくれます五十嵐さん? そろそろ止めてもらえないと、俺の立場が『彼女にお菓子を買ってやらないケチな彼氏』になってしまうんだが。いや、お前の彼氏になった覚えはないが、通行人から白い目で見られているんですけど!


 数秒間逡巡している間も、五十嵐は結局その目を止めてくれなかった。これ以上続けられると、俺の世間的な立場がヤバくなりそう。


「はぁ……仕方ねえな……いったいいくらだ?」

「やったー!」


 もう来月までやっていける気がしねえ……。



 ☆★☆★☆



 数分後、俺の手は和菓子屋の紙袋を提げていた。トホホ……。アニメやドラマに出てくる振り回され役の気持ちがよく分かる……。


 さらに、そこからいくつか交差点を通過していくと、遂に目的地の一つが見えてきた。


「あっ! 学校があるよ!」

「あれが、俺の通っていた小学校だ」


 特に何の変哲もない小学校だ。

 もちろん、日曜日なので授業はやっていない。近所の小学生野球チームが、グラウンドを使って野球の練習に精を出していた。


 五十嵐はその光景をひとしきり眺めると、不意に言う。


「ねえ、慧が通っていた中学校ってどこ?」

「さらに奥側にあるぞ」

「じゃあ、そっちも見てみたいな!」


 五十嵐のその一言で、脳裏に一瞬不安がよぎる。

 だが、俺はそれを押し殺して答えた。


「……ああ、それじゃあ行くか」

「うん!」


 俺たちは、小学校の正門前を通り過ぎて、さらに東へと歩みを進めるのだった。

 言い知れぬ不安を抱えながら。



次回、2022/07/15 07:00頃投稿予定!

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