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俺を殺しに来た天使が許嫁になったんだが……?  作者: 卯村ウト
第2章 移ろいゆく関係の末は
155/237

#155 友達の友達の話



「姉ちゃんって、バイトしたことあったっけ?」


 夕食の時間。姉ちゃんと、俺と五十嵐の三人で食卓を囲む。


「あるわよ……もしかして、バイトしたいの、慧?」

「うん。五十嵐と一緒にバイトしようかなーって」

「あー、そうなのね……」


 そう言うと、姉ちゃんは微妙な顔をする。


 どうしたんだ? てっきり姉ちゃんのことだから、『バイトは絶対やるべきよ!』と強気で推してくるかと思ったのだが。何かあったのだろうか?


「慧、それにひかりちゃん」

「ん?」

「どうかしましたか?」


 すると、姉ちゃんは珍しく、真剣な声色で俺たちに呼びかける。


「あのね……バイトはね、あまり悪いことは言いたくないけど……これは私の友達の友達の話なんだけど」


 随分と遠い関係性だな。この辺で起こった出来事なのだろうか?


「その子は、女子で、とある飲食店のチェーン店でバイトをしていたんだけどね。なんとセクハラにあったの」

「ええ……」


 五十嵐は『セクハラ』というワードを聞いて、嫌な顔をする。

 バイトにセクハラなんてするのか……。そのチェーン店はかなり労働環境が悪かったのだろう。


「厳密にはセクハラまがいのことなんだけどね……。なんでも勤務中に、同じアルバイトの男にわざとぶつかられたり、偶然を装ってお尻を触られたりしたんだって」

「うわ……」

「そんな店が今時あるのかよ……」

「それがあるのよ。ホント、最悪だわ」


 姉ちゃんはググっと拳を握り締める。


「……それで、その女子はどうしたの?」

「えーっとね、男が次にセクハラしてきたときに耐えられなくなって殴って、そのままバイトを辞めたわ」

「そりゃまた豪快だな」


 コレ、もしかして姉ちゃんの体験談じゃないか? 友達の友達って、姉ちゃんの友達から見たら姉ちゃんは友達だし。バイト先でキレて殴るなんて姉ちゃんくらいしかしそうにないし、姉ちゃんならしかねない。


 それだとしたら、姉ちゃんはいつバイトをしていたんだろう……?


「だから、バイトをするなとは言わないから、バイト先を選ぶときは充分に気をつけてね……ひかりちゃん」

「は、はい」

「それと慧、同じバイト先ならひかりちゃんを守ってあげなきゃだめだからね!」

「お、おう」


 しばらく、食卓の上が静寂に包まれる。

 そして、向かい側に座っている五十嵐がポツリと。


「慧、わたしやっぱりバイトするのはやめようかな……」

「心変わりするの速いな!」


 まだ決心してから二十四時間も経っていないぞ⁉


「バイトは人によるからね……じっくり考えた方がいいわよ」

「はい……」

「そういえば、どうしてひかりちゃんはバイトをしようと思ったの?」

「えっと、わたしの部屋の中に勉強机が無くて……それを買うお金が欲しくて」

「そうだったのね。でも、それだったら、物置に使っていない机があるから言ってくれれば出すわよ」

「机あるのかよ!」


 てっきり無いものだと思ってた!

 ということは、机の問題が解決するから、バイトをする動機は失われる……のか?


「どうするひかりちゃん?」

「あ……じゃあ、お願いします」


 ということで、バイトの話は一旦保留になったのだった。



 次回、2022/07/13 07:00頃投稿予定!

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