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俺を殺しに来た天使が許嫁になったんだが……?  作者: 卯村ウト
第2章 移ろいゆく関係の末は
148/237

#148 まないt……



 昼食そっちのけで、水無瀬とアリスは教室の後ろで取っ組み合いを始めた。


 気迫では水無瀬の方が圧倒的に上だったが、取っ組み合いをするときに主に関わってくるのは身体能力だ。一時間目の持久走からも分かる通り、二人は体力的にほぼ互角だ。特別身体能力が優れているわけでもない。だから、膠着状態のまま取っ組み合いは延々と続いていた。


「誰がまな板だぁー!」

「アンタのことよっ!」


 うわぁ……。女子って怖ええええぇぇぇぇええええ!


 水無瀬は涙目になりつつ、アリスは元の勢いを取り戻しつつ、修羅場を展開していた。騒ぎを聞き付けた他クラスの輩も、教室の後ろのドアからこちらを見ている。


「というか、早くやめさせないとマズいよな……」


 でも、俺が間に入るのはあまりよくない気がする。男子だから。事故が起こりそうな気がする。


 と、もっちーがスマホを取り出すと、誰かに電話をかけ始めた。


「……あ、もしもし、先輩っすか? ちょっと手伝って欲しいことがあるんで、今すぐに一年C組の教室まで来てもらっていいっすか? ……あ、はい。じゃ、お願いします」


 いったい誰に電話をかけたんだ? 電話口から相手の声が漏れてこなかったから分からなかった。だが、もっちーの電話で呼び出す時のこの口上、なんか聞いたことがあるな……。


 数秒後、廊下の方からバタバタと誰かが猛スピードで駆けている音が聞こえてきた。どんどんこちらに近づいているようで、音がデカくなっていく。


 そして、野次馬を押しのけて教室に入って来たのは……。


「二人とも、何をやっているのよ⁉」


 姉ちゃんだった。


 確かに姉ちゃんは力が強いし女子だし、この喧嘩を仲裁するにはうってつけだ。

 しかし、そんな姉ちゃんの登場に、取っ組み合い真っ最中の二人は全く気づかない。互いに罵詈雑言を浴びせ続けている。


 そんな二人の様子を見て、姉ちゃんは五十嵐の方を向くと。


「五十嵐さん、少し手伝ってもらってもいいかしら?」

「あ、はい」


 姉ちゃんの呼びかけに応えて、五十嵐は立ち上がる。いったい何をするんだ?

 姉ちゃんはそっと喧嘩中の水無瀬の後ろに近づくと、動き回る彼女の襟首をひょいと掴んだ。


「⁉ なにをす……」

「はいはいそこまでよ~」


 ビックリして振り返る水無瀬。そして姉ちゃんの顔を見た瞬間、一瞬で押し黙った。

 どんな顔をしているのかは、こちらからは見えないが、きっと冷や汗がだらだら出ているだろうと、容易に想像がつく。


 姉ちゃんはその一瞬の隙を突いて、水無瀬を羽交い絞めにした。もちろん、水無瀬はじたばたとなおもしつこく暴れるが、姉ちゃんの腕力には勝てない。ズルズルと引きずられて、アリスから無理やり離される。


 一方、その間に、五十嵐はアリスを羽交い絞めにしていた。


「なっ……! ひかり!」

「ごめんアリス、でも悪く思わないで……」


 こっちはわりとあっさり捕まっている。抵抗らしい抵抗はしていない。最初に手を出された方だからだろうか。


 と、暴れる水無瀬を立たせつつ、姉ちゃんが五十嵐に声をかける。


「五十嵐さん」

「こっちは大丈夫です」

「それじゃあ、行くわよ……生徒会室へ」

「放せー! 金髪牛女めー!」

「誰が牛女だっ!」


 二人とも、最後まで罵りながら、割れた野次馬の間を通って教室の外へ連行されていった。


 生徒会室に連れて行かれて、多分生活指導の先生に怒られるのだろう。まあ、あれだけの騒ぎを起こしていれば相当かもしれない。


 とにかく、ひとまず教室には平和が戻ったのだった……。



次回、2022/07/09 19:00頃投稿予定!

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