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俺を殺しに来た天使が許嫁になったんだが……?  作者: 卯村ウト
第2章 移ろいゆく関係の末は
138/237

#138 いや、姉ちゃんちょっとヤバいよ。



 その後も、文理選択のことについて、三人で話していると、不意に玄関のドアが開く音がした。

 俺は咄嗟に食器を置いて身構える。


 こんな時間に玄関のドアが開くなんてまずあり得ない! 空き巣か⁉ 泥棒か⁉ それとも強盗か⁉


「ただいまー」


 だが、次の瞬間に聞こえた聞き慣れた声で、俺は警戒を解く。そして心の中に驚きが満ちていく。


「おかえりー」

「お帰り母さん」

「お帰りなさい」


 廊下からリビングへと姿を現したのは、俺の母さん。仕事から帰ってきたのだ。

 それにしても珍しいな……。時計の針はまだ六時三十分を指している。いつもだいたい日付を過ぎて帰ってくるのに、今日はそのおよそ六時間前に帰ってきているなんて。


 確かインフルエンザの時も早く帰って来ていたよな? もしかして、最近何かがあったのだろうか?


「珍しいね、お母さんがそんなに早く帰って来るなんて」

「『ノー残業デー』とやらの一環で、今日は早く帰るように言われたのよ。珍しいことにね」


 いつもは仕事をしていると残業を命じられるのだろう。お疲れ様です。


 これを見越している、というわけではないが、俺は夕食を作る時はいつも母さんの分まで作ることにしている。だから、今は食卓の上に出ていなくても、台所にはまだご飯とかおかずとか味噌汁とかが残っているはずだ。


「母さんの分は台所にあるから、自分でよそってね」

「分かったわ」


 はー、今日はよく寝られそうね、と呟きながら母さんは台所に移動する。そして、お椀を取り出すと自分の分の白米をよそい始めた。


「そういえば舞」

「ん? なに?」


 夕飯の準備を終えて食卓の上に持ってくる途中、母さんは姉ちゃんに思い出したように言う。


「この前の模試の結果、どうだったかしら?」

「ぶっ!」


 姉ちゃんは吹き出すと、急に静かになる。あ、これは突かれたくないところを突かれたときの反応だ。


「えーっと……ナンノハナシカシラ?」

「……はぁ、この調子だと、またスゴい点数を取ったんでしょうね……いただきます」


 母さんはため息をつくと、黙々とご飯を食べ始めた。


「えー、そんなことないわよ!」

「なら各教科の点数と偏差値を言ってごらんなさい」

「…………」


 途端に押し黙る姉ちゃん。きっと偏差値五十もいっていないんだろうなこりゃ。

 母さんは、この沈黙を『成績が悪くて言えない』と受け止めた。


「……なら、スマホ没収かしら」

「やだー! それだけはやめてー!」


 姉ちゃんは途端にガタンと立ち上がって、必死に母さんに懇願し始めた。


「どっちを選んでも、苦労しそうだね……」

「まあ、そうだな」


 この様子に苦笑しながら、五十嵐は呟く。

 まあ、五十嵐ならどっちに進んでも大丈夫だと思うけどな!



次回、2022/07/04 19:00頃投稿予定!

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