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俺を殺しに来た天使が許嫁になったんだが……?  作者: 卯村ウト
第2章 移ろいゆく関係の末は
122/237

#122 フラグ回収か⁉



 ピピピ、ピピピ、と静かな保健室に電子音が響く。

 液晶に表示された数字を、俺は無意識のうちに読み上げた。


「三十七度九分か……」


 もちろんこれは外気温ではなく、俺の体温、いわゆる腋窩温というやつだ。完全に熱あるじゃん! やはり五十嵐の読みは正しかった。


 もしかして、これはまたフラグ回収をしちゃうパティーンですかね? 朝のSHRの『俺インフルかかんねーし~』っていうのがフラグになっていたのか⁉ 絶対そうなって欲しくはない! でも、俺には一秒でフラグを回収した前科があるからなぁ……。


 いやいや、そういう気持ちこそが病気を起こしてしまうんだ。『病は気から』という言葉がある。この有名な言葉に則れば、俺は気合を入れれば絶対に病気に罹らないはずなんだー! うおー!


 ……でも、だるいことには変わりはない。今日はもう早退しようか……。


 ちょうどその時、昼休みの終了を告げるチャイムが鳴った。俺は体温計を元の場所に戻すと、『ありがとうございましたー』と言って、後ろ手で保健室のドアを閉める。


 熱が上がってきたのか、ちょっとふらつきながら教室へ戻る。

 後ろのドアをガラガラと開けて教室へ入ると、まず一番に五十嵐が俺の姿を見かけて話しかけてきた。


「慧! 大丈夫? 熱あった?」

「ああ……ちょっと俺、早退する」

「分かった。じゃあ荷物とって来るね」

「おお、サンキュ」


 教壇の方を見ると、堀河先生が偶然そこにいた、ちょうどよいところに、と俺は声を掛ける。


「先生」

「はい、どうしました? 雨宮君」

「ちょっと熱があってだるいので早退します」

「分かりました~。一人で帰れますか?」

「はい」


 本当はちょっと不安ではある。しかし、姉ちゃんは授業を受けなくちゃいけないし、母さんは仕事なので今から迎えに来てもらうわけにもいかないし、父さんは海外にいるのでここは一人で帰るしかないだろう。別に一人でも大丈夫だ。たぶん。


「そうですか~、ではお大事に」

「はい。失礼します」


 俺は先生に向かって深々と頭を下げると、振り返る。

 と、その先にはちょうど五十嵐がいた。俺の鞄とコートを抱えている。


「ありがとう」


 礼を言いながら、俺は鞄を受け取る。次に、それを一旦床に置くとコートに腕を通す。


「どういたしまして。あと、六時間目に配られたプリントはわたしが持って帰っておくね」

「ああ。迷惑かけてスマンな」

「いいよ別に……それよりも、家に帰ったらちゃんと休んでね」

「分かった。じゃあ」


 俺はコートのボタンを掛けると、鞄を持って、教室を立ち去った。

 願わくば、インフルエンザではありませんように!



次回、2022/06/26 19:00頃投稿予定!

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