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俺を殺しに来た天使が許嫁になったんだが……?  作者: 卯村ウト
第2章 移ろいゆく関係の末は
117/237

#117 LIMEのホーム画



「これで今日の放送を終わりまーす」

「本日の担当は雨宮と湯崎でした」


 最後にそう言うと、俺はマイクのスイッチを切る。

 ふぅー、今日の放送も終わったー! 回転椅子の背もたれがギシッと軋む。


 放送って、変なことが言えないから気が抜けなくて緊張する。だって、俺の音声が校内中のスピーカーから流れていているんだぞ? これで、もし何か失敗したら……と思うと、緊張して何も言えなくなってしまいそうになる。

 その点で言えば、相手の湯崎はいつも気楽そうだ。放送中でもかなり適当なことを言っている。しかしながら、アウトなゾーンには絶対に踏み込まない。絶妙なバランス感覚だと思う。俺よりよっぽど放送慣れしている。ホント、羨ましいよ。


 その湯崎を見ると、彼女は俺の隣で『弁当~弁当~』と呟きながら弁当箱と箸を取り出して、早速食べ始めていた。俺も腹減ったし、食べ始めるか。


「いただきます」


 さあ、今日の弁当は何かな~……って作ったのは俺だからもちろん知っている。無論、弁当の中身が入れ替わったりとか消えていたりとか、怪奇現象は起きておらず、蓋を開けたら今朝作ったものがちゃんと入っていた。


 ただ、俺はいただきますの直後から弁当を食べ始める派ではない。まずは水筒で喉を潤してから食べる派の人間なのだ。

 というわけで、机の上に置いておいた水筒を手に取ると、蓋を開けてお茶を飲もうと口を付ける。


 ちょうどその時、突然何かを思い出したようで、湯崎がパチンを指を鳴らす。


「そういえば雨宮、五十嵐ちゃんとデートしたでしょ?」

「ぶぶっ!」


 思わず吹き出しかけて、俺は慌てて口に手を当ててどうにかこらえる。あー、鼻がツーンとしてお茶の味がする……。

 それにしても危なかった。もし放送機材にかかっていたらタダでは済まなかったぞ……。


 俺はお茶をゴクンと飲み込むと、まだ鼻がツンとしているのを感じながら。


「それ、誰から聞いた⁉」

「あ、デートに行ったことは否定しないんだ」


 しまった! またやっちまったー!

 というか、前にももっちーに同じようなことをやられたよな! この二人、結構手口が似ているぞ。


 って今はそんなことを考えている場合じゃない。もっと重要なことがある。


 クリスマスにデートに行ったことを知っているのは、当事者である俺と五十嵐、提案者である姉ちゃんと、姉ちゃんとチケットをくれた水無瀬、この四人だけのはずだ。もっちーにすら話していないのだ。ましてや、湯崎なんて五十嵐と話したことすらないはず。だから、何故このことを知っているのかものすごく気になる。もしかしてまた口軽姉ちゃんが漏らしたとか……?


「えーっとね、五十嵐ちゃんのLIMEのホーム画で分かった」

「LIMEのホーム画⁉」


 俺は一旦箸を置くと、慌ててスマホを取り出して起動する。そしてLIMEのアイコンを連打して五十嵐のアカウントを開く。というか、湯崎、五十嵐のLIMEを持っていたんだな……。

 その間に、湯崎は説明を続ける。


「五十嵐ちゃんのLIMEのホーム画の写真の端っこに、雨宮の横顔が映っているんだよ。かなり暗かったから分かりにくかったけどね」

「……ホントだ」


 五十嵐のアカウントのホーム画の写真はいつの間にか、遊園地に行った時の写真に変わっていた。写真には暗い空の下、光り輝くイルミネーションが映っている。午後五時くらいに撮ったやつだ。


 そして、湯崎が言った通り、写真の端っこに注目する。すると、写真の左端に、同じようにイルミネーションにスマホを向ける男性の姿。


 ……確かに俺だ! 情報社会怖ええええぇぇぇぇええええ!


 ということは……。もしこの写真を見て、俺を発見した人は、当然五十嵐と俺が二人でデートに行ったという考えに至るだろう。いや、そうでなくても見つけた人がLIMEなりリアルなりで友達に伝えて広めているかもしれない!


 ばっと湯崎の方を見ると、俺の考えを察したのか、ほわんほわんした笑顔で。


「大丈夫、まだ誰にも言っていないし、D組は誰も気付いていないよ……たぶん」

「たぶんって何だよ! たぶんって! 不安になるじゃんか! そこは言い切れよ!」

「ハハハ、やっぱり雨宮って面白いね~」


 くそぅ……弄ばれている気しかしねぇ……。


 とにかく、今は五十嵐にこのLIMEの写真を早急に変えさせる必要がある。俺は、五十嵐へLIMEでメッセージをポチポチと打ち込み始めたのだった。



 次回、2022/06/24 07:00頃投稿予定!

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