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俺を殺しに来た天使が許嫁になったんだが……?  作者: 卯村ウト
第2章 移ろいゆく関係の末は
109/237

#109 やはり姉ちゃんは強かった。



 現在進行形で、俺はスゴく危険な状況に巻き込まれている。

 俺の横には五十嵐。そして、その前からは同じく天使であるミカエルが、天使の力を使って創ったナイフを両手で握りしめて、五十嵐に突進してきている。


 ……ここは五十嵐を突き飛ばして俺が身代わりにならなければ!

 そう思って、俺は五十嵐の方へ一歩を踏み出そうとする。しかし、それよりも五十嵐の行動の方が早かった。


「危ない!」


 その声を聞こえたと同時に、ドン、と体を押される衝撃。

 俺よりも早く動いた五十嵐が、体重をかけて俺を突き飛ばしてきたのだ。


 成す術もなく、俺はバランスを崩して倒れていく。そして、五十嵐も元からそのつもりだったのか、倒れかけた俺の上に、体を覆い被せてきた。

 視界の端で、五十嵐の左わき腹スレスレを、ミカエルのナイフが通り越していくのが見えた。


「わふ……ぐへ……」


 一回目は俺が床に倒れた時の衝撃で、二回目は倒れてきた五十嵐の肘が俺の鳩尾にクリーンヒットした時に漏れた声だ。

 ちょっとぉ……肘打ちなんて聞いていないんだが……。あぁ、痛ぇ……。五十嵐に押し倒されているのにそれを感じる余裕もない!


 だが、五十嵐は俺に悶える時間すら与えてくれなかった。


「早く廊下へ!」


 そんな叫び声と同時に、俺の体は再び宙に浮く。コンマ数秒遅れで、体勢をすぐに立て直した五十嵐が、俺を廊下の方へと放り投げたのだと分かった。

 ちょっと五十嵐さん⁉ 人の扱い雑ですねあなた⁉


「ぐへっ……」


 廊下の床に尻から入った後、ゴロゴロゴロと廊下を横断して壁にぶつかって止まる。廊下の床はかなり冷たいということを、俺は自分の頬をもってよく知った。


「いててて……」


 廊下に膝をついて乱暴に扱われた体に鞭打って立ち上がると、俺はリビングの方に顔を向ける。

 と、そこには壮絶な光景が広がっていた。


「死ねええええぇぇぇぇ!」

「やめて! ミカエル! 気を確かにして!」


 ダイニングテーブルは薙ぎ倒され、リビングのソファーの位置はめちゃめちゃになり、棚は倒れ……。もう何が何だか分からないほど散らかっていた。

 そして俺の前には、恐ろしいほどフットワークの軽い二人が、リビング中を飛び回っていた。ついでにお皿も飛び回り、陶器が割れる音とかナイフが刺さる音とか、壮絶な音が響き渡っていた。


 この場に俺が入ってしまったらどうなるか。怪我をして終了、になることは馬鹿でも分かる。


 ああ……。俺の家が……壊されていく……。


 俺がぼーぜんとして立ち尽くしていると、不意に玄関の方でドアが閉まる音が聞こえた。

 そういえば、ずっと玄関のドアを開けっぱなしにしたままだった!


 ドアを閉めて家に帰ってきた彼女は、家のリビングの方で響き渡る壮絶な音に直ぐに気づいて、靴を脱ぎ散らかして荷物を放り捨てるように置くと、俺の目の前で、現在進行形の大乱闘を見る。


 だが、彼女は俺とは違った。

 彼女には暴力という力があった。


 彼女は俺と同じように数秒間唖然とすると、肩を震わせ始める。拳が固く握りしめられているのを見て、俺は彼女の気持ちが分かった。


 彼女は現在猛烈に怒っている。幼い頃から――それこそ俺が生まれてきてから一緒の家に住んでいて、何度も目にしたことがあるから断言できる。


 ――姉ちゃんは、今猛烈に怒っている、と。


 そして、コンマ数秒後、姉ちゃんの怒りが爆発し、二人には制裁の鉄槌が振り下ろされることとなった。



 次回、2022/06/20 07:00頃投稿予定!

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