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俺を殺しに来た天使が許嫁になったんだが……?  作者: 卯村ウト
第2章 移ろいゆく関係の末は
104/237

#104 もっちーからの問題



 年が明けて一週間もすれば、冬休みが終わり三学期が始まる。

 今年の冬休みは結構長かったけど、それはもう昨日で終わってしまった。


 というわけで、俺と五十嵐は去年と同じように一緒に登校して久しぶりの学校に来ている。

 教室に入ると、俺の前の席にはもうもっちーが座っていた。


「お、あけましておめでとう、そしておはようお二人さん」

「あけましておめでとう、今年もよろしく、もっちー」

「あけましておめでとうございます。今年もよろしくね、望月君」


 そういえばもっちーとは冬休み中はクリパの時しか会っていないんだっけ……。年が明けてから一回も会っていなかったな、いまさらだけど。それに特に連絡も取っていない。

 ということは、五十嵐はもう既にあの件を知っている、ということは知らないわけだな……。


 もっちーにはなるべく早くこのことは知らせた方がいい。だがどう説明したものか、と俺が思案していると、そんな俺の心の内も知るはずもないもっちーは、そのまま俺の席に身を乗り出して話しかけてくる。


「なあ、慧、気付いた?」

「え? 何がだ?」


 いったい何のことだ? 反射的に返事をした俺にもっちーは。


「さて問題。この教室には冬休み前と今で一つ違うところがあります。さて、それはいったい何でしょう? ヒントは慧の後ろな」

「後ろ……?」


 後ろを振り返ると、そこには五十嵐。視線がぶつかり、どうしたの? と言わんばかりに首を傾げられたので、何でもない、と小さな声で言っておく。


 いったい何なんだ……? このクラスで違うところ……?

 俺は何となく視線を五十嵐から視線を左に逸らす。五十嵐の隣には特に面白いものはなく机しかないが。


 ん? 机……?


 確か、去年の終業式の時点では、五十嵐の隣には机すら無かったはずだ。つまり、そこに机があるということは……。

 俺はもっちーの方に向き直ると、指をパチンと鳴らした。


「このクラスに転校生が来るってことだな」

「その通り!」


 マジかー、もう一人転校生が来るのか……。それにしてもこのクラスにはよく転校生が来るなぁ。二連続で転校生が一つのクラスに来るなんて、普通は無いことだと思うのだが。もしかしたら五十嵐が転校してくる時に、姉ちゃんが圧力をかけたのと関係があるのかもしれないな。


 そんなことを考えていると、不意に教室後方のドアがガラッと開いて、小柄な人影が現れた。


「フフフ……我が魔力に慄け、我が名はヴァイオレント・ウォーターレスシャロウ!」

「「「あけましておめでとう、水無瀬(さん)」」」

「ふぇ……」


 コートを着てマフラーを巻き、手袋と耳あてと帽子をつけた水無瀬はまるで雪だるまみたいな恰幅のよい図体になっていた。水無瀬は席に座ると、多重に着ている防寒具を脱ぎ始める。


「水無瀬さん、寒がりなんだね……」

「寒さは我がアーチェネミー……ゲホゲホ」

「大丈夫? 咳が出ているけど」

「ただの風邪だ。我は大丈夫……ゲホゲホ」


 おい、言ったそばから咳しているんじゃねーよ……。

 俺はブレザーのポケットから、いつも持ち歩いている個包装の新品のマスクを取り出した。


「マスクやるから、今日一日これつけてろ」

「う、うん……礼を言うぞ!」


 キーンコーンカーンコーン、と次の瞬間チャイムが鳴る。

 三学期が始まった。



 次回、2022/06/16 20:00頃投稿予定!

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