恋は駆け引き。迂直の計を先知る者が勝つ
全く。なっちゃいないわね。世の中、バカばっかりよ。
恋をするんじゃない。恋に堕とさせるの。
私の目標は、営業部の宮代さんね。同期の出世頭。クールでイケメン。センスもいいし、笑う角度も私の理想そのもの。
優良物件には邪魔者がつきもの。まあ敵に値しないのを除けば、総務部の斉藤さん。少し年上だけど。これにはいい人のふりをして知り合いのダンディなおじさまを紹介しといたわ。
次は営業部の米倉さんね。宮代さんの部下だからっていい気になっちゃって。これにはチャラ男三人組にワゴン車でさらわせといた。会社にも来なくなったから、よっぽどよかったんでしょ。感謝して欲しいくらいだわ。
清純そうな部長の娘さんには、痴漢おじさんをあてがっといた。精神的にやられて家から出れなくなったみたい。若いんだから社会勉強になったでしょう。
周りの虫は取り除いたんだから、今度からは猛烈にアピールよ。
帰り道に偶然を装って近付く。
最初は僅かな時間。偶然が重なって一緒に帰るようになる。
そのうちに食事に誘われるようになって、当然のように夜を共にするようになる。
女の体は武器よ。これを活用しなくてどうするの? 相手を蕩かせて執着させるにはもってこい。当然、テクニックは磨いてある。
宮代さんもなかなか上手よ。ひょっとしたら、今までで一番良かったかも。相性もバッチリ。
そして幾度かの逢瀬を経て、彼のシャワー中に、避妊具にこっそり針を刺しておいた。彼に逃げられない事実を突き付ける。なんならDNA鑑定して貰ってもいいのよ。
宮代さんに会ってる間は、関係がないように男達は遠ざけていたから。これで私の計略はなったわ。
◇
私は純白のウェディングドレスを着ていた。当然相手は宮代さん。私はこの戦いに勝ち抜いたの。負けた人はただ弱すぎただけよ。
エステも整形も全部このため。将来有望で理想的な宮代さんをゲット出来たんなら安い投資でしょ。
披露宴では、たくさんの人たちが私たちを祝福してくれた。そんな中、高校時代の私の引き立て役だった、夢美がそっと近付いてきて耳打ちをしたのだ。
「なんだ二人とも、あの頃から付き合ってたんだ。全然気付かなかった。宮代くんのこと『キモい』とか『キショい』とか言ってたのは、カモフラージュだったのね~。大学も職場も一緒のとこにするなんて、マジどんだけ。ラブラブね。おめでとう!!」
……え!?
私は驚いて彼のほうをみると彼はニコリと理想的に微笑んだ。
ア ナ タ は ダ レ で す か?