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旅立ちと出会い

 時は過ぎ、領内にある初等部を卒業を迎える。

 簡単過ぎて詰まらなかった初等部で神童と言われ、初等部の延長の中等部や専門分野を研究する高等部学園への進学を期待されたが全て断った。

 いよいよ16歳の成人を待たずに12歳の誕生日の翌日には旅に出る。

 両親はまだ早いと困っていたが、スキルもないのに剣術、魔法まで沙汰なく熟す俺を見て軍に入られるよりはマシと諦めたようだ。

 誕生日は盛大に祝われた。

 最後には涙を流していた両親。

 俺は皆が寝静まった頃を見計らって家を出る。

 

 「黙って行くつもりか?」

 「と、父様」

 「これを持っていけ」

 そう言って金貨の沢山入った袋を渡された。

 「こ、こんなに頂けません」

 「アッシュのスキルは購入しないと手に入らないんだろ?だったら軍資金は必要だ。気にするな。剣も杖も化粧品も本物だった。これはアッシュが得る筈の相応の利益だ。これだけ払ってもまだ俺達は得してる」

 「ありがとうございます。では行ってきます」

 「たまには帰ってこい。ガーベラが心配するからな」

 「はい」

 

 領地を出て日が傾き掛けると野営地を探す。

 街道には宿場町や野営場が用意されている。

 

 万物通販で空間魔法が付与されたテントと、家具や風呂、キッチン、料理の材料を購入した。


 テントの大きさは1人〜2人用くらいの大きさだが、中は空間魔法で拡張されていてテント内を適温にする魔法も付与されている。

 中は入ってみると30畳程ののスペースがありそうだ。

 先ずは風呂を入れる。

 風呂用こ魔石に魔力を込めて、魔法で水を出す。

 少し待つと水が適温のお湯に、シャンプー、リンス、ボディーソープを購入して風呂で疲れを取る。


 さっさと家具を配置したキッチンで夕飯を作る。

 今日はカレーだ。

 

 「うっ、上手い」

 この世界に来てからずっと食べたかった。

 あやふやな前世の記憶の中でもカレーははっきりと覚えていた。


 「クンクンクン。この匂いはなんです?涎が止まならいです。このテントからです?」

 カレーをお代わりして食べようとした時、テントが開いた。

 「だ、誰だ?」

 「あのー。このいい匂いは食べ物です?じゅるり」

 顔を出したのは同じくらいの年齢の可愛らしい金髪の獣人の女の子だった。

 「君は狐の獣人?」

 「はい、狐人族のカナデです」

 「僕はアッシュベイル、アッシュでいいよ」

 「アッシュ、その手に持った物はなんです?」

 「カレーって言う食べ物だよ」

 「あーいい匂い。家を出て旅をしていたのですが、路銀を無くして何日も食べていないのです」

 「ならどうぞ、作り過ぎてまだあるからいっぱい食べて」

 「ありがとうです」

 

 そう言うと大盛りのカレーを5杯も食べた。

 「おかわりお願いです」

 「ごめん、もう無いよ」

 「あらら、こんな美味しい食べ物は初めてでした。ごちそうさまです。アッシュも旅をしてるですか?」

 「そうだよ」

 「ならカエデ付いていくです。よろしくお願いです」

 「え?なんで?」

 「美味しいご飯にあり付けそうだからです。なんでもするです。お願いするです」

 「ダメだよ、俺男だし」

 「美味しいご飯があれば気にしないです。お願いです」

 「わかった、わかったよ。一緒に旅をしよう」

 「わーい。明日もカレーです」

 「いや、明日は違うの作るよ。そうだお風呂沸いてるから入っておいで」

 「お風呂?」

 「こっちおいで」

 

 風呂に行くと説明をする。

 「湯船に浸かる前に軽くお湯で流して入ってね。これは身体を洗う石鹸、これは髪の毛洗うやつ、これは髪を洗ってお湯で泡がなくなるまで流したら髪に付けてよく流して。それが終わったらまた湯船に浸かって身体を温めてね」

 「わかったです」

 

 カエデが風呂に入っている間に追加で家具や衣服を購入し配置し、簡単なプライベート空間を確保した。

 「出たです。初めてのお風呂は気持ちよかったです肌も毛もピカピカの艶々です」

 「カエデ、ここに色々用意したから使って」

 「これ全部使っていいのです?」

 「中に適当に用意した部屋着なんかも入ってるから使って構わないよ」

 「す、凄い可愛いです。本当にいいのです?」

 「ああ、一緒に旅をする仲間だからね」

 「そんな。ありがとうです」

 「何か足りない物があったら言ってね」

 「わかったです」

 尻尾をブンブン揺らしながらベットにダイブするカエデ、俺も自分のベットに入ると明かりを消した。

 「明日から賑やかな旅になりそうだ」


 次の日、朝食を用意していると目を擦りながら大欠伸をしてカエデが部屋から出てくる。

 「おはよう」

 「おはようです。いい匂いです」

 「朝食はハムエッグとフレンチトーストだ」

 「どっちもいい匂いです」

 「さあ、食べよう」

 「はい」

 「いただきます」

 「それはなんです?」

 「そうだな、この朝食にどれだけの人が関わったからわかるか?そしてさらにこのハムは動物の命を奪い食卓に並ぶだろ?関わった全てに感謝して頂くからいただきますなんだ」

 「わかったです。カエデもいただきますするです」

 「「いただきます」」


 旅は順調そのもので徒歩25日目にしてガンダルシア帝国の帝都、水の都と呼ばれるレヴェラルに到着した。

 先ずはここで冒険者ギルドと商人ギルドに加盟し、他国への旅費を稼ぐ予定だ。

 父の領地にはギルドは無かった。

 歩いて1時間程の所にある第二の帝都と呼ばれる公爵領があるからだ。

 父は公爵家と懇意の仲、伯爵家の長男と公爵家令嬢が許嫁になる程の仲。

 いや、下手すると俺を含めた兄弟全員が公爵家の姉妹と許嫁にされてしまう程の仲なのだ。

 そんな危険を冒してまで公爵寮のあるギルドへはいけなかった。


 そんな訳で、初めてのギルドである。

 期待と緊張が入り混じりながらギルドの扉を開けた。

 

ご覧頂きありがとうございました。

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