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第七話 誤解

なっちゃん(宮間奈津(みやまなつ))はバレーボール部の部長で、

身長がミチハルと同じくらい高いサバサバした女の子だ。

顔は十人並みで可もなく不可もなくといった感じなのだが、モデル並みに細身で

概ね店で売っている服は何でも似合うようだ。

デザイン性の高いロングTシャツに、レギンス。本当にモデルみたいだ。


転校当初の人見知りも無くなり、なおかつ体育の時のファインプレーの連続に

ちょっと憧れを抱いていた由真は、そのなっちゃんに珍しく自分から話しかけた。



「隣だね。よろしく、なっちゃん」


努めて明るく、でもくだけ過ぎないように慎重に言葉を選んだ。


―――つもりだったのだが、

なっちゃんは由真と目を合わさずに窓の外を眺めていた。

聞こえなかったのかも知れない。背中を、冷や汗が伝う。

宙に浮いた言葉をどこかへ追い払いたくて、座席に腰を下ろしながらもう一度言った。


「よろしく。良かったね、今日晴れ・・」


言い終わる前になっちゃんはすくっと立ち上がり、

顔をしかめて大きくため息を吐いたかと思うと長い足で由真の膝をまたいで向こうの女子集団の方へ行ってしまった。

香水のような甘く濃い匂いが、鼻のあたりにいつまでも漂っていた。

何も悪い事をした覚えはない。

確かに今まで廊下ですれ違っても挨拶なんてしなかったが、それだけで腹を立てるほどお互い仲良くも無い筈だ。じゃあ、どうして?なんで??


たった今へし折られた好奇心に代わって、耐え難い心細さが全身に染み渡った。

もしや、いやはや、これは・・


”ハブ”られた・・・?


由真はじぶんの脳細胞を総動員して理由を挙げてみた。


ギャルの千裕と仲が良いから?


それとも、おそらく3年生で一番美人な詩織に気に入られたから?


単に私が暗そうだから??


それとも・・・いや、キリがない。

全部推測に過ぎないのだ。もしかしたらイヤホンつけてたのかもしれないし。

超高性能、ワイヤレスで無色透明の装着している事を誰にも悟られない逸品。

―――なんだか、コンソメの良い匂いがしてきた。


「ポテチ食う?」


声を掛けられ後ろを見ると、千裕が座っていた。隣には同じ班の高宮がふんぞり返って座っている。

差し出された袋からポテチを数枚取り、手の平にとっておいた。


「千裕」


ちょっと不満げな声で、由真は続けた。


「なっちゃんって、どんな子?私何かしたっけ??」


千裕は皆まで聞かずに やっぱりね、 という顔をした。

同じく高宮も、うんざりしたような顔でポテチをばりばりと頬張っていた。

答えを求めるような表情で、千裕を見つめる。


「あの子さ」


千裕が言いかけると、高宮が割って入った。


「他の奴には言うなよ。俺まで困った事になるしよ」


勿論と言うように、由真は何度も無言で頷いた。

千裕が小声で続けた。


「あの子、高宮が好きみたいでさ」


もう一度頷く。


「まぁ、そんなの誰でも知ってるんだけど。高宮も知ってるし」


「ああ、それで詩織は・・」


「うん、まぁ・・・仕方ないんだけどね。ミチハル入れるとなると高宮も入れなきゃ不自然だし、

高宮誘うとなると、なっちゃんも入れないとヒス起こされるし」


高宮が一瞬、千裕に何か訊きたそうな顔をしたが、しかし黙っていた。

由真の方は、質問した。


「でも私関係ないよ?」


高宮には気の毒な話だし、想いの報われないなっちゃんも憐れと言えば憐れだが、無視をされる筋合いはない。

しかし高宮は全ての謎が解けた様で、目を見開いて由真に言い放った。


「お前・・!そうなの??!

―――ミチハルの方か!!マジかよ!そっちか!それで詩織は・・」


高宮に悟られて耳まで真っ赤になりながら、そのセリフで由真も全ての状況を把握した。

ミチハルと高宮、どちらが女子に人気かと言ったら高宮の方だ。

詩織と千裕は元々高宮に興味は無く、それはなっちゃんも分かっていた様だ。

しかし詩織は何故か高宮を誘った。それはきっと水澤由真が高宮を・・・

・・・なるほど、凄い分析だ。強引な気もするけど。


「由真・・・どうするよ」


無い眉を八の字に曲げて千裕は問いかけた。

さて、どうしたものか。

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