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第十四話 バトル

「じゃあ言っておくけど、金輪際(こんりんざい)私と佑ちゃんの邪魔はしないでね」


半信半疑の様子で、なっちゃんは由真に釘を刺した。

金輪際も何も最初からそんなつもりは無かったが、今の状態では”はい”とも”いいえ”とも言える訳がないのだ。


「だから最初から・・・」


「返事!!」


イライラしているのは、もうお互い様だった。いくら冷静に説明しようとしても、馬耳東風では話になる訳がない。


「ねぇ!ちょっとは人の話も聞いたら?!!」


怒っている様な言い方になってしまったが仕方ない。実際に怒っているのだから。

由真は短気では無いけれど、特別優しいわけでもない。よって、我慢の限界も人並みだ。

いい加減にしてよ。人の話は最後まで聞きましょうって、まだ教わったこと無いの?


「うるさい!アンタは私を傷つけたのにちっとも反省して無い!!!」


「なにそれ!だったら最初に教えてよ!!いきなり怒鳴ったのはそっちの方でしょう??!」


二人の昂りに危機感を覚えた亜紀が、遂に割って入った。

怒りを鎮めるために由真が釈明したのに、ミイラ取りがミイラになったこの状況。

亜紀にも収拾がつかない気がしたが。



「も、もう止めなよ・・・先生来るし・・」


「森下さんは黙っててよ!」


なっちゃんに怒涛の勢いで凄まれた亜紀は、ビックリしたハムスターの様に飛び退いた。

喧嘩の相手が亜紀だったら、きっと勝負にならないだろうと由真は今の一瞬で思った。

それにしても高宮の事を好きなわりに強敵だった亜紀を見落とすとは、なっちゃんは案外高宮の事を分かっていないのかもしれない。

尤も、そのお陰で亜紀は難を逃れたのだけれど。


「とにかくアンタは卑しいのよ!あの千裕とつるんでる時点で普通じゃないわ!!」


「今千裕は関係無いでしょ!誰彼構わず突っかかると友達無くすよ!!」


「あー――――――――っそう!!結構よ!下品な友達なんて要らないし!」


「自分が上品だと思ってんの?!新幹線でヒス起こして大声出すような人が?!!」


もはや高宮の件など、二人とも完全に忘れていた。

口げんかでここまで泥試合になったのは、さすがに由真も初めてだった。

パレットタウンを練り歩いた疲れもあり、本来なら早々に眠たくなるはずだが今はもう体中にアドレナリンが充満して

怒りのパワーが何処からか沸々と湧いてきた。こうなったらもう言いたい放題だ。



「高宮君にはもう彼女が居るの!優しくて可愛い女の子と付き合ってるの!!高宮君を大事に思ってるんならもう放っといてやってよ!」



―――覆水盆に返らず。


まずい事を言ったような気もしたが、取り繕うにはもう全てが遅すぎる。

決して嘘は言っていないのに、由真の精神にに光の速さで罪悪感が押し寄せた。

今、亜紀の表情を窺ってはいけない。勘付かれたら終わりだ。


なっちゃんの目から敵意が消えた。と言うより、勢いも消えたし元気も無くなった。

思わず謝りそうになったが、なんだか余計に傷付きそうなので止めておいた。

由真の中のもうひとりの自分が、由真に非難を浴びせる。

そんな事あんたが言っちゃダメでしょ!亜紀達が解決してこそ意味があるのに、なんて事しちゃったの!?


「私――・・ずっと待ってたのに」


認めたがらないと思ったが、予想に反してどこか悟った様な、寂しげな表情だった。

もしかして高宮に想い人が居る事に気付いていたのか?

空気の抜けた風船のようになってしまったなっちゃんは、フラフラと浴室へ消えていった。

”かちゃり”と鍵が閉まる音と同時に、妙な脱力感が突如部屋に訪れた。

ゆっくりと亜紀の方を見る。亜紀はずっとこちらをみていたようで、暫く目を合わせて黙っていた。

どうしよう と言わんばかりに目を泳がせて、唇を引き結んでいる。


「・・・・・・・・ゴメン」


由真が言うと、頭を振って否定した。


「こんなの・・誰のせいでもないよ。」

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