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第十三話 フラグ

出来たら顔を合わせたくないのだが、帰りが遅いとそれはそれで困る。

各部屋のルームキーは、3人で一枚しか無い。

その一枚を今はなっちゃんが持っている訳で、せっかくの夜も下手に外出できないのである。

千裕たちがここへ来てくれないかと、淡い期待が胸をよぎる。


「遅いね・・・」


青い、大きめのギンガムチェックのパジャマを着た亜紀が時計を見て呟く。

午後9時48分。間もなく消灯の見回りに先生が来る筈だ。

自らが不満と言うよりは、寧ろなっちゃんが先生に咎められるのを心配している様に見える。

由真に慈悲の心が足りないのか、はたまたそれで然るべきなのか、気に留めずにのんびりテレビを見ていた。


「多分男子の方には行ってないよ。先生なんかに見つかったら、女子部屋に居るより怒られそうだしさ」


亜紀の心中を察してそんな事を言った由真だが、もし自分が亜紀の立場だったら気が気じゃないだろうとも思った。

そう思い始めると、次から次へと嫌な予感がして止まらない。

まさかとは思うけど、本当に高宮の所に押し掛けたのだろうか?

もしかしてなっちゃんは、最初からそれが目的なのかもしれない。

それでカードキーを持って・・?いや、だったら亜紀ちゃんを待たせて私がちょちょいと確認して来れば良いんじゃないか??


「ううん・・・それはいいの。佑介を信じてるし、津山君も戸田君も居るから」


決して強がりではなく、どうやら本当に高宮を信用しているようだ。なんだか羨ましくなる。


「それよりも、由真ちゃんは良いの?」


「え?何が??」


―――自分の欲求が見抜かれているというのは案外認めたくないものだ。

誰が見ても滑稽な程、バレバレなとぼけ方になってしまった。自分の頬を思いきり引っ叩きたくなった。無論、恥ずかし過ぎてである。


「桜井君の所に行かないの?私もう少し起きてるよ?」


「いいよ私は・・。苦手な奴も一緒の部屋だし」


「苦手な奴?」


「里峰って男子」


「里峰君?そうなの?どうして??」


亜紀の驚きようを見ると、普段はあんな口を利いたりする男子ではないのだろう。

だとすれば、詩織が今朝言っていたように反省しているのなら、私から話しかけた方が良い。

それにしても思春期の男子は、時折女子よりも七面倒臭い部分がある。何故あんな風に私を罵ったのか、まずそこから説明して頂きたいのだが。


「ちょっとイザコザがあってね。気にする程じゃないけど」


「そうなの・・・」


話せば話すほど、亜紀の優しげな雰囲気にホッとする。

控えめであるが決して暗く無いし、自分の意見も案外ハッキリ言うタイプだ。

高宮君、なかなか見る目あるじゃん。良い奥さんになるよ、この子は。


―――バタン!と、金属でできたドアが音を立てた。


後ろめたい事は何も無いのに、由真は飛び上るほどびっくりして振り返った。

すらりと伸びた細い脚を丁度肩幅に開いて、なっちゃんが腕を組んで仁王立ちしていた。

何だっけ、あれみたい。昔ドラマでやってた、脚立(きゃたつ)担いで仁王立ちしてた髪の長いOL・・・。


「私の味方はいっぱい居るから」


威嚇するような目つきで、しかし口元には笑みを浮かべて彼女は宣告した。

とはいえ、千裕や詩織、亜紀が居る以上は完全なる村八分にはならない。それを十分理解していた由真は大して怖くも無かった。

第一、近隣住民(女子集団)数人が誤解によって私を嫌ったとしても村長(詩織)や大地主(高宮)とは既に友人な訳で、

誤解が解けるのも時間の問題である可能性が高い。人間、それを踏まえると適切な対応ができるもので。


「なっちゃん、良く聞いて。私、ミチハルが好きなんだ」


なっちゃんの眉が訝しげに歪む。


「詩織に頼んだんだ。ミチハル入れてって。そうしたら高宮君も・・・」


「はぁ・・・?」


くそ、しぶといな。まだ疑うのか。


「だからホントに高宮くんは何っっとも思ってないの!!」


力いっぱい否定した。

―――後ですごく後悔することになるとも知らずに。

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