壊れた世界で僕は神を殺す
何となく思いついた、救いがない設定の話。
親友同士で協力して悪と立ち向かう話は面白いと思いますが、こういうのもたまにはいいのではないでしょうか。
第三次世界大戦後、世界は核などの兵器によって人が住むには難しいほどに汚染されてしまった。そして大勢の人が亡くなって、何とか生き延びた人々が地下にとても大きなシェルター造り、そこに国を築いた。ここは元日本こと日本シェルター。僕が住んでいる国だ。
まあ、ここまで大袈裟に説明したけれど、他にもシェルター国はあるらしい。ただ、移動には専用の飛行機が必要らしく僕のような一般人には雲の上の存在だ。いや、僕が一般人というのは本当の一般人に失礼か。
僕はかつてはただの少年だった。ちょっと運動が得意で、頭も悪くなくて、でもお金持ちでもなければ、大きな不幸を背負っているわけでもない。そんな僕が普通ではなくなったのは、小学5年生の時だ。
「日本ってどんな国だったんだろうね」
「…知りたいの?」
「そりゃあ…授業ではあんまり学ばないし」
「今よりずっと高度な文明があったんだよ」
「へぇ!美紀ちゃんって物知りなんだね」
「ちがうよ」
「え?」
「光希も知ってるはずだよ」
「えっ、僕何も知らないけど」
「光希、この世界はね…」
そのとき、美紀ちゃんが何を言おうとしたのか僕は知らない。美紀ちゃんは僕の家の隣に住んでいた幼馴染で、賢くて優しい子だった。けれど、ある日突然病気でもないのに学校を休むようになり、ようやく登校するようになったと思ったらずっと大人びた雰囲気になった。まるで、知ってはいけないことを知ってしまって、嫌でも大人になるしかなかったような。
その日は僕が美紀ちゃんに少しでも元気を出してほしくて、公園に連れ出した。美紀ちゃんが休んでいた間の授業について話していたら、社会で学んだことの話になり、第三次世界大戦以前にあったという日本という国について触れた時だった。真剣な表情をした美紀ちゃんが、恐る恐る口を開きながらそう言いかけた瞬間、僕は意識を失った。
目を覚ましたとき、僕は病院にいた。そして…美紀ちゃんが殺されたことを知った。僕は何らかの方法で意識を奪われていたらしく、その間に美紀ちゃんは殺されたのだという。どうして美紀ちゃんだけだったのか、逆にどうして僕は意識を奪われただけだったのか、何も分からないまま事件は終息した。犯人は未だに捕まっていない。
「初めまして。君は、君の幼馴染を殺害したモノに復讐したくはないか?」
突然現れたその人は、神殺しと名乗った。
実は、この世界というかシェルターには『死神』を名乗る異能殺人集団がいるらしい。僕が意識を奪われ、その原因すら分からなかったのはその死神の異能によるものだとか。死神はある日突然、老若男女関係なく殺すらしい。殺される人に関係性はなく、唯一の共通点は殺害される数日前に少し様子がおかしくなり、殺害される寸前に何かを誰かに話そうとすることだけ。どうやら死神は何かの秘密を守っているらしいというのが神殺しの見立てなのだとか。他にも死神は僕たち人間のことを見下しているらしく、そういった言動が多くみられる。姿は人と変わらず、けれど人とは思えないほどの異常な治癒能力があり、大抵の怪我はすぐに治ってしまうのだとか。
「俺たち神殺しは、そんな死神の死体や骨を使って作った武器で死神を殺しているんだ。死神は確かに殺すのが難しい不死ではない。また、死神の身体なら頑丈な死神の身体に傷を残せるんだ」
美紀ちゃんは本当に優しくていい子だった。様子がおかしいのは何かいけないことを知ってしまったからなのだとしても、あの時僕に話そうとしていたのだとしても、それでも殺されていい子じゃなかった。
憎かった。美紀ちゃんを殺しておいてのうのうと生きている死神が。そして今もきっと誰かを殺し続けているだろう死神が。そして何より恐ろしかった。いつかその死神が、僕の家族や友人といった大切な人を殺してしまうんじゃないかと思ったから。命がけになるのは分かっていた。人ではないものを殺そうというのだから、そう簡単なことではないだろう。それでも構わなかった。守れるなら、復讐できるなら、どんなことだってできる気がした。
こうして僕は神殺しになり、死神を狩るようになった。
そんな僕も普段は普通の高校生をしている。老若男女関係なく予告も無しに殺されるため、テレビや漫画であるような任務や指令というものはない。代わりに私生活の中で少しでも異変を感じたり死神を見かけたら対処する。だから休日に神殺し同士で情報交換をしたり、先輩神殺しに特訓してもらったりして、平日は普通に高校に通っているんだ。
だからか、僕には中学からの親友ができた。従兄弟同士だけど両親が二人ともいないから一緒に暮らしている祐樹くんと一樹くん。祐樹くんは幼少期に両親に捨てられたらしく、母方の叔父である一樹くんのお父さんに預けられたらしい。でも、一樹くんの両親はあまり褒められた人じゃなかったらしいけどそれはともかく。一樹くんの方が誕生日が早いからか、あるいは祐樹くんが天然さんというか浮世離れしていて世話が焼けるからか、一樹くんはよく祐樹くんに対してお兄さんぶっている。
「おい祐樹!お前まさかまたお昼をそんな小さなパン一つで終わらせる気か!?もっと食べろ!!」
「……」
「何か言ったらどうだ!!」
「まあまあ一樹くん。祐樹くんは小食なんだから無理させちゃだめだよ」
「そうは言ってもこいつの腰を見ろ!細すぎる!!」
「えー…うわ」
「おい、触るな」
「細すぎでは…?」
「問題ない」
「大有りだ、馬鹿者!!」
一樹くんは真面目で短気だからか良く怒鳴っているけど、どうすればもっと食べてくれるのかとかよく僕に相談してくれる。祐樹くんが変に絡まれていれば即座に助けに入る。僕とは悪友って感じで色々悪巧みしては、巻き込んだり巻き込まれたり。
祐樹くんも普段は冷たく見えるけど、一樹くんが無理をしていれば誰よりも早く気づくし、僕が辛い時は何も言わずに側に居てくれる。無口だから愚痴っても親身になって聞いてくれるって感じじゃないけど、でもさりげなく背中を撫でてくれたり口に出さなくても相槌を打ってくれる。
だからこそ、僕は彼らのことを守りたかった。彼らを守るためなら何でもできると思った。なのに……
「まさか、君が死神とはね…祐樹」
「まさか、あんたが神殺しとはな…光希」
守りたいと思っていた親友が、何よりも憎い存在だった。




