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服屋にて

11/23 店員のお姉さんの性格がイメージと違ったので表現と若干の展開を変更しました。

 服屋はなかなか高級志向の店のようで、外装からしてとてもきらびやかだった。


「こ、ここに入るの・・・?」


 その豪華さに直面してシャーリーが委縮している。・・・こいつ、元王女だよな・・・?


「ここしか無さそうだからな。さっさと行くぞ」


 俺は委縮など当然することもなく、扉を開けて中に入る。笑顔を浮かべた女性の店員が「いらっしゃいませ」と愛想よく話しかけてきた。


「どのような服をお探しですか?」

「俺のものを適当に、安めに見繕ってくれ。任せるが、商人っぽく見えるように」

「かしこまりました!」

「それから、こいつの服を一式」


 背中に隠れていたシャーリーを引きずり出して店員の前に差し出す。店員は若干戸惑った顔をした。


「・・・こちらの店は奴隷に着せるには少々高いかと・・・」


 そう言って怪訝な目をする店員に俺は耳を貸すよう言う。シャーリーには聞かせられない話をするからだ。


「こいつにはまだ伝えてないんだが・・・売り物なんだ。何人かの奴隷に着せるつもりだから、ある程度丈夫で可愛いのを頼む」


 そう言うと店員は少々顔を赤らめた後、若干顔を青く染めてこくりと頷き、シャーリーを連れて奥へ行った。その後すぐ俺には別の店員が付き、一式コーディネートしてもらった。やはりこういうのはプロに頼むのが一番だ。

 俺はすぐ終わったのでシャーリーを待つこと数分、シャーリーが店員と共に出てきた。

 服はドレスのような、フリフリしたワンピースだった。内面を知っているだけにどうしてもシャーリーにはスポーティなイメージを持っていたのだが、こうして外見を整えてみると、いかにもお嬢様といった感じにおしとやかに見えるから不思議だ。靴もやや厚底の重そうな靴を履いている。お洒落のことはよくわからないが、その靴から覗く白靴下までおそらくこだわりなのだろう。


「・・・どうかしら」

「ああ。綺麗だぞ」

「・・・あ、ありがとう」


 シャーリーはそう言ったきり黙りこんでしまった。仕方ないので俺は店員と必要なことを話す。


「あまり丈夫そうには見えないが」

「ああ見えて内部は革製です。フリフリした所は取り外しができるので、必要なとき以外はワンピースとして着せておくのがいいと思いますよ」

「なるほど・・・よくできてるな」

「ま、こんな世の中ですし・・・丈夫さと動きやすさがどの商品も基本になっています」


 高級店も大変というわけだ。まあ確かに、どうやって縛っているのかはわからないが、亜人の反乱なんかも起きかねないことを考えると、どれだけ用心してもし足りないのだろう。


「いくらだ?」

「えーっと。主人さんの分も合わせて・・・これくらいですかね」


 金額は、おや。想定していたよりも安い。上下別でなくワンピースからだろうか。あるいは見た目よりも庶民的な店だったのか?

 俺は丁度の金額を店員に渡し、そこではたと思い出す。


「そうだ。こいつに帽子も頼む」

「帽子、ですか?・・・うーん、帽子が前提のファッションじゃないんだけど・・・」

「フリルを外した時を想定してくれていい」

「外した時・・・じゃあこれ、かな・・・?」


 店員は悩んだ末大きめのハンチングをシャーリーに持って行った。


「ちょっとごめんね」

「・・・?」


 そう言って店員はシャーリーに帽子を被せた。その様子になにやら違和感を持ったものの、よくわからないので一旦放置しておく。


「うん。少女趣味なワンピースに大人用のハンチングっていうミスマッチさが上手く働いてくれているわね」

「おお、なるほど・・・合うものだな」

「でもこれだと耳隠れちゃいますけど、いいんですか?人間と間違われたら罪に問われちゃいますよ?」

「罪?」

「人間を奴隷にしちゃいけませんから」


 それは意外だ。戦争の相手とはいえ奴隷なんて制度がまかり通っているのだから人間の奴隷も居るものだとばかり思っていた。

 ・・・敗戦国には何をしてもいい、ということだろうか。だとしたらやはり、俺はこの世界の人間は好きになれそうもない。


「店員さん、あなたはどう思う」


 気づけば、俺は店員にそう訊ねていた。


「・・・どう、とは?」

「俺たちのような人間についてだ。奴隷を使って自分たちの暮らしを豊かにするという人間について、どう思う」


 シャーリーは空気を読んで黙っていてくれた。あるいは店員から俺の設定について既に聞いているのかもしれない。

 何故そんなことを訊ねるのか、自分でもよくわからない。

 ただ、何故だかこの店員は他の人間とは少し違うと思ったのだ。

 割り切れていない、というか。自分を持っている気がする。


「・・・なんといいますか。まあ、あまりいい気はしませんね」

「しかしこいつらは亜人だぞ?」

「道端で犬がいじめられているのを見て楽しくなる人が居ますか?」


 なるほど。面白い意見だ。

 彼女の考え方が普通なのなら、案外この状況は変わるものなのかもしれない。

 一部の人間以外は、亜人差別を良く思っていないという可能性。


「・・・店員さん。明日も出勤しているか?」

「いえ、明日は休日ですが・・・」

「分かった。では明日の朝もここに来てくれないか?相談したいことがあるんだ。チップも出そう」

「? わかりました。待っておきます・・・」


 言わんとすることをあまり分かっていないような感じだが、しかし一応話には乗ってくれるらしい。ありがたい話だった。


「頼んだぞ。シャーリー、行くぞ」

「あ、うん」

「またのお越しをー」


 気が抜けた挨拶がかかるのを聞きつつ、俺は店から出た。

 目的を一つ達成できるかもしれないことに笑みを浮かべるのを、我慢はできなかった。


これからの展開を書いた資料を執筆中小説の最後に貼り付けて、それ見ながら書いてるんですが・・・いつかそれ消すの忘れて更新しそうで不安です。

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