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馬車上会議

説明のところリニューアルしてみました。以前は奇をてらったものにしていましたが、結局普通の方がいいんじゃないかなって思ったのでこちらに。新規客も呼び込みたいです。

 そうして俺たちは人間の国に旅立った。

 第一目標は食糧の買い込み。第二目標は技術者の確保。

 ムガルには言わなかったが、実は第三目標もあったりする。とはいえこれはついでなので優先度は低い。第二目標までをクリアしたい所だ。


「で、実際どんな職人をさらうわけ?」

「まあ一人しかさらわないわけではないが・・・一人は武器職人がいいな。亜人たちも武器くらい作っていただろ?」

「そうね。職人も居たわよ。今も居るかは・・・その、わからないけれど」

「十分だ」


 単価も高く、実用性があって亜人の技術力でも作れることが証明されている。これ以上ない条件だろう。


「あとは・・・あのあたりは何が産出されるんだ?」

「そうね・・・水は豊富ね。それから周辺には結構木材があるみたいよ」

「木材か・・・って、周辺ってことは人間の領地じゃねえか」

「それくらいしか思いつかないんだもの」


 なるほど、少しわかってきた。ずっと謎だった亜人の国が未だ無事な理由。

 ぶっちゃけ攻め滅ぼそうと思えば一瞬で滅ぼせるはずだ。それこそ、ギルを出すまでもなく。だというのに攻められない理由が思いつかなかったのだが・・・単純に必要がないからか。

 土地が肥えているわけでもなく、特に産出されるものもない。この間の連中みたいな奴隷産業で私腹を肥やそうとする連中はともかく、国家を挙げてわざわざ滅ぼすほどの理由もない。

 何より共食いを経て勝手に減っていく。今攻めても何の得もないということだ。


「なるほどな。詰んでるなあ・・・」


 しかしだからこそまだ辛うじて滅んでいないのだと考えなければならないのだろう。やはりシャーリーの父は優秀な王だったということか。

 俺は馬車を操るシャーリーの頭に手を乗せた。


「・・・何よ」

「別に。ま、方針は簡単には決まっている。高級品は作れっこないんだからそこそこのものを量産するしかない、とかな」

「まあ、そうね。現実的だと思うわ」

「というか、以前の亜人はどうやって日銭を稼いでいたんだ?」


 どうやっても武力だけで技術というものを持たない亜人が裕福だったとは思えないのだが。


「普通に漁や農業、牧畜や狩猟だけよ」

「工芸品とかは無しか?それじゃ産業が成り立たないだろう」

「武器とか衣服とか建築とか、その程度の生活必需品だけね。元々国というよりは各一族が勝手に生きてるのをまとめた、みたいな国だったから一族だけで完結していたのよ」

「あー・・・なるほど」


 そういえば人間と亜人は交易していなかったんだったか。どうも交易が存在しないという感覚がわからん・・・亜人間で多少はあったんだろうが、中心ではないようだし。


「じゃあ衣服の産業も良さそうだな。・・・いや、むしろ革に加工する方がいいのか」


 シャーリーの着ている服を見て思う。今はぼろぼろなその服だが、元々の作りも良さそうには見えない。ただ、丈夫さは見え隠れしているので、おそらく元の布や革の方が良いのだろう。


「・・・というか。お前服汚すぎだろう。王都まで戻ることもないし、次の街くらいまで行ったら新しい服買うぞ」

「・・・いらないわよ。それより食糧をもっと買っていかないと」

「要るんだよ。誰が従者の服も揃えられない貧乏な商人から物を買うんだ」


 俺たちに実績は無い。舐められたら終わりなのだ。ついでにシャーリーの耳と尻尾も隠しておきたい。亜人と交易しているなんて噂にでもなれば二度とやっていけない。


「・・・わかったわよ。でも、安いのでいいわよ」

「いや、そこそこ高いのを買う」

「同情のつもり?」

「いや、明確な理由があるが・・・」


 お前の顔は売れるからだ。

 などと言えるわけもないので、口をつぐむ。


「あるならいいけど・・・でも、そういう理由ならあなたの服もなんとかした方がいいんじゃない?」

「そうか?」

「人の服装にどうこう言うつもりはないけれど・・・商人には見えないわよ。貴族の次男とかみたい」


 言われて、改めて自分の服装を見てみる。神も俺が商人としての活動を始めるとは思っていなかったのだろう。装備も相まって、確かに貴族の次男が家を出て傭兵として生きているみたいな格好だ。商人というよりは、護衛だろう。


「もうすぐ次の街に着くわ。一緒に服を新調しましょ」

「・・・そうだな」


 その言葉から数分後、シャーリーは馬車を停めた。宿屋の横の馬小屋に入れ、宿屋ととりあえず一日契約して部屋に入る。

 日は沈みかけ、空は赤く染まっている。


「さっさと服を買いに行くか。その後は酒場だ」

「酒場?リヴァ、酒なんて呑むの?」

「そんな余裕あるか。一杯くらいは呑むが、情報収集のためだ。腕さえよければわざわざ王都で探す必要はない、つーか噂にならないだけ僻地の方がさらうには都合がいいんだ」


 必ずしも納得した上で来てくれるとは限らない。腕に惚れ込んだ奴がいれば、結局実力行使になることもある。噂にならず、なったとしても王とギルに話が行かなければいいのだ。

 もっとも、王都の方が腕がいい奴が居そうなので最終的には王都に行くことになりそうだが。


「・・・リヴァ、なんか手慣れてるわね」

「やかましいわ」


 ともかく、俺たちは近所の服屋に行くことにした。

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