誘拐犯
「それで、リヴァ様。具体的にどういう政策を出しましょうか?」
ムガルは先日通された部屋の席に着くやいなや、今後のことを聞いてきた。
「しばらくは国庫から国民の食費を出すにしても、いずれは尽きます。食糧生産を確立しなければなりませんが、この領地ではとても・・・」
「それについてだが、策がある」
「策、ですか?」
「ああ。状況打開のウルトラCだ」
俺は国の壁の前に縛って放置しておいた捕虜たちを連れてきた。それと同時に彼らを捕縛した一件についての説明もしておく。
「なんと。そんなことが・・・」
「ま、こいつらは労働力なり見せしめなり好きに使ってくれ。今回捕まえてきたこいつらはその程度の働きしかできないだろうよ」
「なんだとコラ!」
「どういう意味だ!」
「シャーリー」
「はーい」
シャーリーは慣れた手つきで彼らの意識を刈り取る。・・・俺が言うのもなんだが、こいつ元王女なんだよな?ちょっとヤンチャすぎないか?
「今回のこいつらは労働力とかに使う。・・・なら、次はどうしようか?」
「次・・・?・・・!」
「え、リヴァ、それって・・・」
「そうだ。器用なことが苦手なら、できるやつにやらせればいい。教えさせればいい。亜人がいつもやらされていることだ」
「人間をさらって来て、奴隷にするおつもりですか・・・?」
「そうだ」
人間の奴隷化、及びそれによる高品質な工芸品の確保。それこそが俺の策だ。
「反対ですな」
ムガルがきっぱりと言う。
「名産品となるほどのものが作れる腕利きの人間を複数人さらってきて、人間の国が気付かないとは思えません。それに、そこの彼らもそうですが、国民が黙っているとは思えませんよ」
「国民は黙らせろ。どの道これ以外の選択肢は無いんだからいずれは納得するさ。それにさらって来るとか、奴隷にするとかは言葉の綾だ。きちんと説得して来させれば、本人の引っ越しってだけだからそう問題も起きないはずだ」
「・・・交渉を任せても、良いのですか?」
「ああ。期待していろ」
「・・・わかりました」
ムガルはため息を吐きながら了承した。彼の危惧する通り危ない賭けになるのは間違いないだろうが、しかし俺は大丈夫だろうとも思っていた。
結局のところ、人間は欲の塊だ。その欲さえ刺激してやればどうにでもなる。
「シャーリー様はどうするのですか?」
「そうだな・・・俺に着いてきてもらおう。交渉の材料になることもあるだろう」
「材料?私が?」
シャーリーは不思議そうに首を傾げる。
「失礼ながらリヴァ様・・・シャーリー様は既に王女としての地位は捨てていらっしゃいます。王女としての交渉は・・・」
「わかってるわかってる。ま、悪いようにはしないさ・・・」
二人は気付いていないようだが、シャーリーの容姿はかなり端麗だ。それこそ、他の亜人とは一線を画する(人間目線では、だが)。亜人を見下す思想こそあれど、若い技術者なら彼女をエサにするだけでホイホイついてくるだろう。
もちろんいかがわしい真似をさせるつもりはないが。
「そういうわけで、ともかく俺たちは人間の国に行ってくる。誰一人さらえなければ食材だけ買っていくことになるが・・・まあそれにしても無駄な旅にはしない」
「国民はどういたしましょうか?」
「国民は、そうだな・・・」
少し考える。もちろん農耕作業や牧畜作業に入ってほしいが・・・
「子どもを中心に、比較的手先が器用な奴、特に子どもを何人か見繕っていてくれ。そうだな・・・ムガル、今の人口はどれくらいだ?」
「肉食草食合わせて100人に足りないくらいでしょう」
「なら十人ほどだ。器用な奴が多ければもう少し増えてもいい・・・それと、一人ひとり名簿をつけておいてくれ。国民の把握がしたい」
「かしこまりました。名前だけでよろしいですか?」
「種族と年齢、それから性別もだ。筆記具がなければここに来た奴に血で壁に書かせろ」
行く前にムガルに指示を出していると、シャーリーが俺を不思議そうに見てきた。
「・・・なんだ?」
「いや・・・随分手慣れてるわね。領地でも持ってたの?」
「・・・あー」
どうしたものか。
そろそろこの二人には俺の素性を明かしてもいい気はするが・・・しかし、過剰に頼られても困る。混乱されるのも嫌だし・・・まあはぐらかしておくか。
「似たようなことはあるが、ほぼゼロから復興したことはないよ」
「ふーん・・・?」
シャーリーは怪訝そうにしながらも聞いてほしくないということが伝わったのか、それ以上の追及はしてこなかった。
11月10日に突然ものすごいPVが伸びていました。一体何があったんでしょうか・・・
そしてだというのにも関わらずブックマークが増えていないということは力不足ですね・・・頑張って面白くしようと思います。応援よろしくお願いします。