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復興計画 2

 亜人の国に来るときに使用した馬車に大量の金品を乗せ、俺とシャーリーは人間の国へ出発した。

 国庫の金品を金に換え、そこからさらに怪しまれないよう色んな店で食料を買い込む。基本は干し肉などの肉食系亜人のためのもの中心だ。正直亜人の国に入った時のことを思い出すと「何故あんなののために」と思わなくもないが、全ては世界のため、シャーリーとムガルのため、そして自分のためだと割り切る。ムガルの話によると亜人の、特に肉食系の空腹は人間のそれとはかなり違うようなので、仕方ないところもあるのかもしれないが。

 結局買い出しして戻るまでに一週間以上かかってしまった。


「できるだけ早く戻りたかったんだけどな」


 馬車を操作しているシャーリー(結局馬車は買った。御者も人間なので怪しまれるし負担になりそうだったためだ)にそう零す。

 もちろん、遅くなれば遅くなるだけ人口が減っていくからだ。


「・・・本当なら人口が増える季節なのに」


 そう物憂げに呟くシャーリーに俺は多少驚きながら視線を向ける。


「人口が増える季節なんてあるのか?」

「あー・・・亜人は基本的に春しか交配しないわ。できないわけじゃないけれど、パートナーあってのものだしお互いに気が乗りやすいのが春っていうか・・・」

「発情期があるのか。そこも動物に近いんだな」

「恋の季節って言って!」


 しかしそれは王としては人口のコントロールがしやすくて素晴らしいことではあるな。出産の時期は恐ろしく忙しいんだろうが。

 ・・・一度に複数出産したり、妊娠期間が短かったりもするんだろうか。


「というかお前、今発情期なのか」

「仮にも元王女に何を聞いてるのよ・・・性欲が高まるのは大体15歳くらいからよ。まだ14の私には関係ないわ」

「ふーん、なら襲われる心配はないか」

「コントロールできない程人間から外れてないわよ!」


 ・・・。


「・・・14!?年上じゃなかったのか!?」

「何を今更・・・亜人は人間より成長が早いから12歳くらいから姿は大人同然になるわ。というか、年下だと思ってたからそんな言葉づかいなんじゃなかったの?」

「それなら元王女って判明した時点で改めてる。まあ最初痩せ細ってた時に焦ってて荒い言葉づかいでそのままだな・・・そういえばお前、随分健康的になったな」


 思えば初日以外はそう痩せ細ってもいなかった気がする。人間そんな簡単に太ったり痩せたり、まして筋肉がついたりはしなさそうだが。

 俺の言いざまにシャーリーが振り向いて睨んでくる。


「太ったって言いたいわけ?」

「まあ部分的には・・・」

「亜人はエネルギーの効率がいいのよ。体型くらいすぐに変化するわ」

「随分とハイスペックな種族なんだな」

「私たちから見れば寿命も長くて年中交配できるから個体数も多い、しかも頭もいい人間も同じようなものよ」


 結局は一長一短というところのようだ。

 というか、何故かシャーリーは俺を睨んだまま前を見ない。


「・・・何だよ。ぶつかるぞ」

「馬だって頭があるんだからぶつからないわよ。・・・お尻が痛いんだけど」

「は?」

「もう着くんだからそろそろ代わりなさいよ!ずっと私に馬車の操作を押し付けて!」


 どうやらずっと自分ばかり働かされていることへの不満が溜まっていたらしかった。


「しょうがないだろ。俺は馬車の操作なんかできない」

「最初にそう聞いた時は道中で覚えるって意味だと思ってたわ」

「それに俺は亜人の国をどうやって生き延びさせるかってことを考えるので手一杯だ」

「う・・・それを言われると弱いけれど・・・」


 言い訳でもあるが、本音でもある。俺も王子の端くれではあったが、産業が食糧自給すらままならないレベルで崩壊している土地の復興とかシミュレートしたことすらない。とりあえず買ってきた食糧からリンゴを出してシャーリーにかじらせ、黙らせる。


 一応道は二つある。食糧自給を中心にする計画と、商品作物を中心にする計画だ。

 ただ、それぞれ問題があるのだ。食糧自給を中心にすれば農作物の収穫には数か月、畜産に至っては1年ほどはかかる。ネズミとかなら可能かもしれないが・・・結構多い肉食系の腹が満ちるかは疑問だし、寿命も短いから保存が利きにくい。それだけの期間、国民の食糧は増える見込みのない国庫から出さなきゃならない。いつ尽きるかは博打だ。

 商品作物を中心にすると貿易が発生するため不安定になる。一つの作物に頼ると輸出量が増加して価格崩壊を起こしかねないし、嗜好品が中心なので売れ残ったときに自国で消費しても食糧問題の解決ができない。貿易は俺がやるにしても、亜人の国が原産だと知られたときに国は終わるし、貿易の限界量も少ない。


「短時間である程度の収穫量か収入が発生して、なおかつ輸送に便利なもの・・・」


 工芸品だろうか、やはり。

 自然のものを加工して品質の高い道具を作れれば、原材料を輸入してしまえばそう時間をかけず大金が手に入る。

 ただ問題は二つ。

 値崩れの問題が解決しないので単価の高いもの・・・つまり一定以上の品質があるものを作らなければならないこと。一応大きくて重いものでも単価は高くなるが、輸送の問題により却下。

 そして肝心の二つ目。

 亜人は総じて不器用なのだ。基礎体力に優れている分、ちまちました作業が苦手らしい。というか動物の色が濃い連中は針と糸を持つことすらできなかったりする。


 やはり賭けるなら食糧自給を中心にするのが安定だろうか。

 などと思っていると。


「っ!」


 シャーリーの指示で馬車が急停止する。俺は突然の衝撃に顔をぶつけた。


「どうした!?」

「人間の集団よ!多分、亜人の国を狙ってる!」


 そう言われて前方を見ると、剣を持った数人の男たちが亜人の国に向かって歩き出したところだった。

投稿間隔空きました。すみません。

なんか投稿した日よりその数日後にPVが伸びてるんですよね・・・ジワ売れってやつかな?

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