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復興計画

タイトル「GHQの真似事」とか「ジェネリックGHQ」とかにしようかと思ったんですがコメディ色が濃くなりすぎるのでやめました。リヴァとかGHQ知らないし。

「遅いわよ!」

「悪い、ちょっとトイレが混んでてな」

「ブラックジョークはおやめください、リヴァ様。もうトイレで用を足すような者はいません」

「・・・ふーん?」


 帰ってきた俺たちにシャーリーが怪訝な目を向けた。


「・・・なんだ?」

「別に、なんかリヴァとムガル、仲良くなった気がするなって」

「そうか?」

「あーやらしい、トイレで何してたのかしら」

「しゃ、シャーリー様!?いけません、そのような下品なことを王族が!」

「私もう王族じゃないもの。それにもう子どもじゃないわ」

「な・・・まさか、リヴァ様・・・!」

「そういう意味じゃないだろ」


 妄想たくましいやつめ。

 しかし仲良くなった、というのは実際事実だろう。俺はムガルが信用に足ると思ったし、ムガルは俺に秘密を吐露した。明らかに関係性は変わったのだ。・・・いや、いやらしい方向じゃなくて。


「そんなことはどうでもいい。今後のことについて作戦を立てるぞ。まずは当面の食糧問題についてだ。原因は明らかだな」

「周りが人間の国に囲まれているため買い物ができず、土地も狭いため十分な食料が集まらないことです」

「そうだな」

「それってでも、リヴァが買い物してくればいいんじゃないの?」


 もはや俺が人間であるということは隠すつもりがない。ムガルも一応止めたものの、体裁上知らないふりをしておくというだけのことだろう。よってシャーリーのこの発言にも特に問題はない。後で説教だが。


「それが定石だな。一応もう一つ策はあるが」

「策、とは?」

「一番近い人間の街を攻め滅ぼせば色々と解決はする。まあ・・・いろんな問題が起きるからやらんが」


 しかし真剣に考えていたことでもある。どうせいつか侵略戦争はせねばならない。それならさっさと滅ぼしてしまえば一応食糧問題は解決する。

 ・・・ただなあ。人間が大軍を率いて攻めてくる可能性があるのと、そもそも亜人の統率が取れないから普通に負けそうなんだよなあ。

 というわけで一旦亜人の正気を取り戻すのが先決だ。


「じゃ、とりあえずそういうことでいいかしら。そうと決まれば早く買って来ましょう」

「いや待て。まだ話さにゃならんことがある。・・・シャーリー、これはお前に聞かなきゃいかんのだが」

「・・・?何よ」

「その・・・金を貸してくれ」


 シャーリーは固まった。


「あ、いや・・・言い方が悪かったな。国民に配るとなると手持ちがまるで足りんので、国庫から金を出してくれってことだ」

「ああ、なるほど・・・それはもちろん、この国の問題だし。ただ・・・ムガル、どれくらいあるかしら?」

「人間に半分以上持っていかれましたが、この国の国民もかなり減りましたので十分かと」

「わかったわ。じゃあそれを馬車に積んで行きましょう」

「・・・ところで気になっていたのですが」


 ムガルが言いにくそうに口を開く。


「なんだ?」

「シャーリー様はリヴァ様に付いていくのでしょうか?」

「ああ、そうだな・・・」


 どう運用すべきか、とは思う。

 一応この先には2ルートあるのだ。

 ルート1。前王の娘であるシャーリーを新たな亜人の女王に据えて復興を目指すパターン。

 ルート2。俺かムガルーーー後のことを考えるとムガルかーーーがリーダーとして矢面に立ち、復興を進めるパターン。


 ルート1の場合、おそらく民の結束は強まることだろう。民は結構『命令されること』を求めているものだ。前王が慕われていたのならば猶更、シャーリーの命令に異を唱える者は居ないだろう。

 ただし、復興の後、シャーリーは二度と普通の暮らしはできまい。王となり、この国に生涯を捧げるだろう。何かあれば


 対してルート2の場合は、シャーリーには俺の右腕として暗躍してもらうこととなる。最終的な目標である、ギルの暗殺に関しても役立ってくれるはずだ。・・・どうせ正面から兵を率いても勝てるわけないし。

 シャーリーの自由は得られるが、反面シャーリーはもう王女に戻れはしないだろう。復興が終わってから出てきた王女など、まず信用されない。しかもシャーリーの身は間違いなく危険になる。また、ムガルの性格上亜人の国は共和制になるだろう。


 結束の面に関してはおそらくそう問題は起きないはずだ。結局のところ生物は食べ物をくれる相手にはなつくのだ。飢えに苦しんでいるならば猶更。ただ、多分民の従順さはかなり変わってくる。それこそ、ルート2の場合草食系の亜人は肉食系の亜人と組むことを嫌がるだろう。ルート1のように『王の命令だから』という言い訳を無くすからだ。

 結局一長一短なわけだ。


 ・・・正直なことを言うと、シャーリーは俺と共に来てほしい。素直で勤勉、誇り高く戦闘力もある。教養も身に着けていて、容姿も(耳と尻尾が世界によってはヤバいが)端麗。かなり優秀な人材だ。ムガルも欲しいがーーー何を言ってもこの国から離れはしないだろう。それに、年齢のこともある。


 ま、ルートはどっちでもいいな。ならばいっそのことシャーリーに決めさせよう。


「シャーリー。俺と来るか、それとも女王として亜人の国を引っ張るか、どっちがいい?」


 極端な二択。

 しかしシャーリーは決めなければならないのだろう。それは権力を持つ者の義務だ。


「・・・買い物だけに関わることにはならなそうね」

「まあ、そうだ。俺と来ることを選べばお前はもう女王には戻れないし、女王に戻れば一生国から逃れることはできないだろう。

 選択肢があるだけマシだがーーーお前の人生はここで決まる」


 ちょっと冷たい言い方になっただろうか。しかし、ここで甘やかしても彼女のためにはならない。誰かに敷かれたレールの上を走る人間では、どちらの道も務まらない。


「ムガルは、どう思う?」

「それは、私の希望に沿っていただけるという意味ですかな?」

「いえ、単に家臣としての言葉が聞きたいだけよ」

「そうですか。ならば・・・というか、どちらにせよ私の答えは『シャーリー様に従う』。それだけです」

「そう・・・ありがとう」


 シャーリーは悩む。

 時間をかければ民はまた死ぬだろう。それが分かっていながら、なお悩む。これは国にも関わる選択だから。

 そして、悩みつくした後にシャーリーは顔を上げる。


「私が民なら、国が大変な時に国外に居てーーーあまつさえ命の恩人の手伝いを顎で使うような王に率いられたくはないわね」

「・・・いいのですか?それではあなたはーーー」

「ムガル。最後の命令よ」


 薄い笑顔で、ゆっくりとムガルに命令を告げるシャーリー。

 ・・・なんだ。

 結構女王に見えるものじゃないか。


「復興した亜人の国を任せるわ」

「・・・はい、必ず」


 そう言うとシャーリーは俺の手を引いて馬車に乗った。

 分かるのだろう。今ーーー

 ---ムガルとシャーリーの人生は、道を分かったということに。

リヴァのキャラが定まってないなーというのは私も感じています。イヴァンス編が終わったら最初の方の口調とか直そうかな。

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