002話 もう一つのプロローグ
当時生まれて間もない僕と五つ年上の姉、瑠那はとある事情から人間の研究施設で育てられる。
そこでは非人道的な実験が数多く行われており、怯える毎日を過ごしていた。
そんなある時、二人の姉弟は研究施設に捕らえられていた両親や他の同胞達の手助けにより、脱走する事に成功する。
しかしその事が施設内の軍人達にバレてしまい、二人は追われる事となる。
容赦無い攻撃が降り注ぐ中、姉の瑠那は必死に弟の有守を庇う。
その小さな身体には無数の弾痕が刻まれており、生きている事自体が奇跡な程の致命傷を負っていた。
軈て瑠那は地面に倒れ、殺される事を覚悟したが、その場に偶然居合わせた魅嶽纏璃と言う者によって助けられる。
「【その後、何とか一命を取り留めた瑠那と無傷で生還した有守は、纏璃に引き取られ育てられる事となった。】、か.....................何か出来すぎた話だな」
「姉である瑠那の証言と僕のアドリブで仕上げた報告書なんだけどどうかな?」
「いいと思う..............でも一つ気掛かりなのがあってね」
「と、言うと?」
「纏璃、君が二人を育てられるとは思わないんだけど..................」
「響丞にだけは言われたくないね」
「はぁ..............まぁいい。いざとなれば啓音や癒妃に任せておけば何とかなるだろうし、有守も家の啓丞と同い年みたいだから友人になれるかもしれないしな」
「響丞のとこの息子も産まれたばかりだったもんな.....................これで僕達はパパ友って訳だ」
「勝手に言ってろ。取り敢えずこの報告書は受理しておく。あと二人の戸籍も登録しておきたいから後で呼ぶからな」
「はいはいー」
「それともう一つ。手掛かりは見つかったか?」
「全然..............姉さんに関する事は全く無い。寧ろおかしいくらいにね」
「そうか..............一応気を付けろよ。ここ最近人間側の動きも怪しくなってるからな」
軽く手を振りながら部屋を後にする青年、纏璃。
仕事を終えた彼は、有守達二人の居る自宅へと帰るのであった。