7話 感想戦みたいなもの
リベル宅 アカツキの部屋
目が覚めると自分の部屋にいた。随分長い間寝ていたようで少し体が重い。転生したときのような気分だ。まぁあのときと違ってアカツキとしての記憶はあるけどな。
(取り敢えずリビングに行くか。)
リベル宅 リビング
リビングにいくと父さんが座っていた。父さんは俺が降りてきたことに気づくと俺の方を向いた。
「おお!アカツキ。やっと起きたか。」
「ああ。どんくらい寝てた?」
「二時間くらいだな。体の調子はどうだ?」
「寝過ぎたせいで少し重いが特に支障はない。」
「なるほどそれは良かった。おい!ハル。アカツキが起きてきたぞ。」
「え?本当!本当だわ!良かった~!」
母さんはそう言いながら抱きついてきた。
「ちょ!やめてくれ!恥ずかしいから!いや、ホントに!まじで!」
「やだわ!我が子の無事を体で感じたいの。」
「な………それ言われたらどうにも出来ん………ま、心配かけたし今は大人しくするか。」
それから母さんが俺を放すまで二時間かかった。………ながい。
俺が母さんの熱い抱擁から解放されたあと、家族会が開かれた。議題はもちろん先程の戦いについてだ。
「じゃあ改めて、生きてて良かったわ。」
「思ったけど、ちょっと大袈裟じゃない?滅茶苦茶疲れただけで、死ぬことはないだろ。」
「いや?魔法には魔力切れがあるから。」
「魔力切れ?そんなん聞いてないんだが?」
「魔力切れは死んでしまうことがあるから、知ったとたん恐怖で魔法が使えなくなることがあるの。」
「それはさきにいっといてくれないかなぁ!」
「いや、ゴメンゴメン。アカツキは魔力量が最初からすごく多かったし、増える量も多かったから、初級魔法くらいじゃ万が一のことはないかなと。」
「じゃあなんでそんなに焦ってんだ?」
「いや、魔法を使って倒れる人って大体魔力切れだから………」
「そうだなぁ。俺の周りも魔力切れで死んだやついっぱいいるからなぁ。」
「「…………………」」
勝手にしんみりしないでくれよ。やりにくいだろ………それにしても、魔力切れか。俺のスキルが魔方系だった場合、気を付けなければな。
「おっと、しんみりしちまったな。じゃあ家族会、開始だ。」
やっと始まった。
「まぁ取り敢えず、勝利おめでとう。」
「おめでとう!」
「ありがとう。」
「本当にいい戦いだった。華麗な剣さばき、常識にとらわれない魔法の使い方、様々な策略。どれをとっても見事だった。剣さばきは日頃の訓練からわかっていたし、魔法もアメに聞いていたからいいが、あの策略たちはどこで身に付けたんだ?特に騙し討ちのやつ。」
「本で読んだだけだよ。ただそれたけ。」
まぁ、某黄色いマッハ20の怪物も漫画だし嘘はついてない。
「そうか………そんな本あったか?」
「忘れてるだけじゃない?」
「まぁそうか。」
「じゃあ、ついでに聞いてもいい?あなた何で初級魔法であんな威力出せるの?前から気になっていたんだけど。」
「母さんが俺に魔法を教えてくれたとき、「魔法は想像」て言ってたじゃん。」
「そうね。」
「そう。だから想像したんだ。火の玉が普通より大きくなるイメージ、つまり通常よりも酸素を取り込むようなイメージで魔法を放ったんだ。」
「それであの威力に………これは魔法の歴史が変わりそうだわ。それが普及すればスキルを持っていなくても………」
「ああ、でも魔法の原型を崩すことはできないんだ。」
「魔法の原型?」
「うん。例えば火の玉立った場合、形を玉状から変えられないんだ。それに魔力消費も凄くて、結構使い勝手が悪いんだ。」
「なるほど………欠点は原型を崩せないこと、そして燃費が悪いことか………ますます興味深いわ!今すぐ研究したい気分よ!というかしてくるわ!」
そう言いながら母さんは自室に走っていった。あの人あんなキャラだっけ?
「ああ、アカツキは初めてか。アメは魔法の研究が趣味でな。お前を身籠るまでは魔法の研究にまる1日使うほどだったんだ。最近は鳴りを潜めていたが、今のアカツキの話で火がついたっぽいな。あれは明日まで出てこないぞ。」
「えぇ………なんか悪いことしたかな。」
「はは。まぁ今まで頑張ってきたぶん今は好きなことをさせてあげたいしいいだろ?」
「まぁ、それならいいんだけど………」
その後、俺達は夜ご飯結局母さんが出てくることはなかった。
リベル宅 アカツキの部屋
今日はいい日だったな。戦闘の怖さも知れたし、あと俺の、というか前世の策略が通用することも。あっちから積極的に攻撃してこなかったとはいえ父さんに勝てたしな。つーか、積極的に攻撃してこなくてあのかんじか。正直体が震えまくってたからな。くっそこえぇ。本気の構えをしたときのあの圧迫感。あぁ、今思い出しただけでも体が震えてきやがる。あの感覚を冒険者は毎日感じているのかね。だとしたら物凄くこえぇが、ちょっぴしわくわくすんな。おらワクワクスッぞ、てか?
「それにしても、明日で十歳かぁ。」
この世界に転生してから明日でもう、十年。正確にはもうちょい短いがまぁ、いいだろう。そして、明日はこの家、つまり親元から離れ学園に行かなければならない日でもある。それを考えるとこれも少し怖くて、寂しいが、楽しみでもあるな。はっ、変な気持ちだ。
俺はそんな、新世界への恐怖、不安。そして正反対の、期待を孕んだ不思議な気持ちで眠りについた。
『影の王との親和性が50%になりました。ステータスアップのギフト、影の王の装備を渡します。並びに影の王との意識の同調を開始します。』
また………この………声………か………
ざっくり説明シリーズ
魔力切れ
人間には魔力が必要である。魔法系スキルを持っていないものでもごく少量の魔力を持っており、それで生命を保っている。そして魔力が完全になくなると吐き気や頭痛が起こり、最終的には死に至る。原因は誰もが体内に保有している魔臓だとされているが詳細は不明。