『忘却世界』
二日連続投稿です。嬉しい。〇〇世界シリーズの続きです。ある少年の遠い昔の記憶。
忘れてしまった。
あの時、あの場所で。
確か、女の子と男の子がいた気がする。
あの子たちは、今どこのいるんだろう。
もしかしたら、これすら、嘘なのかもしれない。幻なのかな。
「大丈夫だよ」
囁く声。暖かいけど、どこか悲しい。
「君は、忘れていない。全て憶えているさ。ただ、それは空虚な記憶なんだ。彼らは君の思いからできた物なんだよ。思いはいつか消えてしまう。でもこれは忘却じゃない。運命なんだよ」
「まあ、そうか。そうなんだと思う。でも、何でだろう。どうしても、あの子たちをボクだとは思わないんだ。ボクの思いはボク自身でしょ? それでも、きっとボクじゃない」
違う。多分違う。今まで、ボクは悲しいも、楽しいも、思ったことない。でも、あの子は、彼らは、世界があった。
「ボクには世界がないんだ」
だから違う。
「君にも世界はあるさ。君は、君という小さい容器の中から覗く世界しか見えてないんだ。ああ、本当に小さい。だから君はつまらない。故に幸せだ。何の感情も無いのだから。空っぽだね」
彼の声は、笑っている。それでも、きっと泣いている。見えないけど、寂しい顔。
「じゃあ、頂戴。感情も大きい器も」
ほんとに、それでいいの?と彼は聞いた。勿論、肯定した。
「大きい容器も、感情も、君にとっては、辛いものだよ」
「それでも、ボクしりたい。お願い。ボクにください」
『 ありがとう。ハリボテくん。君は明日に行けるよ 』
起きたときは、頭の中は、空虚だった。
「生きてていいことなんて一つもないのに」
手足は崩壊していった。残ったのは、心臓だけだった。
「記憶も残らないなんて」
『 きれいだね 』
彼はそっと、『ハリボテ』の心臓を抱えて、記憶の容器に入っていった。
ありがとうございました。このシリーズ個人的に好きです。私事ですが、曲とか作れたらほんといいなとか思ってます。
まだ続きます。よろしくお願いします。