第3章 「重複した指人形」
そういう訳で、私はアルティメマンシリーズが今でも大好きなの。
私の小さい頃の思い出でもあるし、私が特命遊撃士を志すきっかけでもあるからね。
だからアルティメマンシリーズのグッズを見かけると、ついつい欲しくなっちゃうんだよね、私って。
この間だって、近所の文房具屋の軒先に置いてある100円ガシャポンの機械にアルティメマンの指人形が入っていたから、つい回しちゃったんだよね。
1回目でいきなりアルティメマンジョルジュが出たんだから、私も驚いたよ。
日仏共同制作で全編フランスロケを敢行し、主人公もフランス人という異色作である「アルティメマンジョルジュ」は、オリジナルビデオシリーズとしてリリースされたから、いまいち知名度が低いんだよね。
だからあまりグッズ化されていなくて、こうして出てもシークレット扱い。
それが一発で出たんだから、「全8種、サクッとコンプリート出来ちゃうんじゃない!?」って思うのは人情だよね。
結果的に、一応コンプリートは出来たんだけど、ダブりが随分出ちゃったんだよね。それも、使い道の思いつかないキャラクターばかりがね。
ダブりの1種類目は、「究極地帯~アルティメットエリア~」第8話「深淵から覗くもの」に登場した、深海人類ギルマン。
人類誕生以前から地球の海を勢力圏にしていた半魚人で、ラストで巨大化した時は迫力があったなあ。
何しろ「アルティメットエリア」は、アルティメマン達が祖国の防衛のために地球から一時的に引き上げた後の話だったから、どうやって人類が折り合いをつけるかで毎回ヒヤヒヤしたものだよ。
敵も侵略宇宙人ではなく、地球産の怪獣やホモ・サピエンス以外の人類、そして妖怪といった地球生まれの怪異で統一されていたから、地球本来の生態系における生存競争という見方も出来て、アルティメマン達が無闇に干渉出来ないという解釈が、マニア向きの書籍に載っていたなあ。
お次は、「アルティメマン」第20話「灼熱に溶ける街」に登場した、溶岩怪獣マグマス。
元々はマントル層で平穏に過ごしていた怪獣だったんだけど、人間の地底開発で地上に引きずり出された可哀想な怪獣だったな。
だからこそ、マントル層にまで達する穴を空けて、マグマスを安住の地まで送り届けてあげたアルティメマンの優しさが光る、珠玉のエピソードだったよ。
そして、「アルティメゼクス」第1話「まほろばの光」に登場した幻影宇宙人ユフラテ星人。
電撃怪獣ボルトドンを操り、一度はマホロバ・ユウを瀕死に追いやってしまう強敵だったな。
まあ、それがきっかけでアルティメゼクスがマホロバ・ユウと合体してしまうんだけどね。
いずれも初期3部作の通好みなエピソードの悪役だけど、こいつら自体にはあまり人気がないんだよね。
こいつらがそれぞれ2体ずつダブっちゃったから、途方に暮れているんだ。
まだ、分身宇宙人ユーベル星人や侵略機械獣レギオドロイドなら、分身攻撃中や量産型という解釈が出来るんだけれど、ワンオフの悪役だと、どうしようもないんだよなあ。
それで、日本橋のホビーショップに買い取って貰おうと思って持ち込んだんだけど、結果は冒頭の通り。
安く買い叩かれちゃうのもやるせないけれど、同じ指人形が何体もあるのを見るのも、心が痛むんだよなあ…
「ああ…何かいい手はないかなあ…」
ダブった指人形が視界に入らないように、学習机の使っていない引き出しに収納しながら、私は1人呟いたの。