第1章 「特命遊撃士 枚方京花少佐 その生い立ちと憂鬱」
第3話「堺電気館のスクリーンに誓え!」とリンクしています。
時間軸としては、こっちが過去になります。
「この査定額って、まさかと思いますが、1体分の値段じゃないですよね?6体全部で100円ですか?」
「すみません。あいにくですが、シークレットや全種セットじゃない場合は、それぐらいの値段しかつかないんですよ…」
「はあ…」
これは、大阪市の日本橋にある中古ホビーショップの店員と私が、買い取り査定の際に交わした会話の一部なんだ。
私こと枚方京花は、堺県立御子柴高等学校で勉学に励みながら、人類防衛機構に所属する特命遊撃士として都市防衛の大任に従事している、どこにでもいる普通の15歳の女の子。
チャームポイントは左サイドテールに結んだ青い髪。
個人兵装はレーザーブレード。
そして、階級は少佐。
もっとも、人類の文明守護と都市防衛を使命とする特命遊撃士である以上、同世代の民間人の子達と一線を画した特徴は、色々とあるけどね。
一番分かりやすい特徴は、私達は人類防衛機構という公的組織に所属している「防人の乙女」なので、広義の公務員にカテゴライズされる事だね。
当然だけど、お給料だって貰っているよ。
階級や配属先によって変わってくるけれど、消防隊員や警察官、それに自衛隊員並の給与額と考えてくれたらいいよ。
だから、同世代の民間人の子達よりも懐具合は豊かだね。
その代わりに危険と隣り合わせの毎日だけど、強い正義感と友情があるから続けられるんだ。
そして、民間人の子達とは比較にならない程に、正義と友情を重んじる事こそが、特命遊撃士である私達共通のメンタル的な特徴だろうね。
理不尽な悪の暴力に怒りを燃やし、志を同じくする友を思いやる。
この考えに少しでも疑問を持つようでは、人類防衛機構では1日も保たないよ。
同じ10代の女の子達でも、人類防衛機構に所属している私達と民間人の子達とでは、意味合いが大きく変わる物があるんだけど、それって何だか分かる?
その答えは、テレビで放送されている特撮ヒーロー番組なんだよ。
人間サイズの等身大ヒーローなら「マスカー騎士」、数10メートルサイズの巨大ヒーローなら「アルティメマン」が有名だよね。
この類の番組のメインターゲットは幼稚園から小学生位の男の子で、そこにかつては男の子だった成人男性のファンが混ざっているという傾向だよね。
確かに、「イケメン俳優やアイドルが主人公」という文脈で視聴している若い女性もいるけど、10代半ば以上の女の子が熱心に見ているイメージは、そんなにないよね。
でも、それは民間人の子達に限っての事なの。
私の所属する人類防衛機構においては、特撮女子は一大勢力なんだよ。
だって、考えてみてよ。
私達が日頃行っている作戦や業務を端的に現せば、人類の文明守護と都市防衛という大目的のために、それらを脅かす邪悪と戦う事なんだよ。
それって要するに、マスカー騎士やアルティメマンといったヒーロー達が、テレビの中でやっているのと同じ事だよね。
ある意味では私達は、具現化した正義のヒーローなのかも知れないね。
そんな訳で、人類防衛機構に所属している特撮女子は、特撮ヒーローを自己投影の対象にしている子が多いんだよね。
特撮ヒーロー番組を見る事で、ヒーローに共感しながら勇気を分けて貰い、それを明日の戦いに活かすんだ。
-今日も貴方から勇気を頂きました。私も頑張ります、先輩!
これは、同じ第2支局に配属されている特撮好きの特命遊撃士の子が、特撮ヒーロー番組を見る時の心構えなんだけど、この心構えには私も同感だね。