7.身体測定。武志の悲劇
今回は日常多めです。
見てくだっている方々に合えば幸いです。
誤字、不明点などご指摘お願い致します。
2時限目。身体測定の時間。体育館で身長やら体重やらを測る。
「次、神田君」
次は武志の番のようだ。武志は返事をして身長を測る台のようなものに立つ。
「……!」
「神田君、かかとをつけてください。……こらっ、かかとを微妙に浮かさないでください。見栄をはってはいけません。あとそんなに精一杯ピンっと背筋を伸ばしても、身長にさほど影響はありませんよ」
武志は一生懸命身長を伸ばそうと試行錯誤していた。先生も呆れているようで、溜め息をついている。
「次。高崎君」
しばらくして、俺の番が来た。さて、伸びているのか。
「175.5cm。次は、体重計の所に行くように」
まぁ、こんなものだろう。因みに二年生の時は175.2cm。あまり変わっていない。
俺の身長は決して低いわけではないが、平均より少し高いくらいだ。別に飛び向けて高い訳じゃない。……俺はどれだけ特徴がないんだ。
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体重なども測り終わり、身体測定が終わった。教室にいつもの三人で集まる。
「二人とも何センチだったんだ? 身長」
「えぇ~。そういうお前は何センチだったんだよ?」
武志がふてくされたように聞く。
「俺は175.5だ」
「なっ……!」
武志はショックでうなだれていた。何にショックを受けているんだこいつは。
「駿樹は?」
「178.1……」
「ぐはぁ……!」
トドメの一撃を食らったかのように、武志は膝をついて倒れこむ。
武志は俺達より身長が低いのだ。だから先程も、身長を伸ばそうと必死だったのだろう。
どれ、ちょっとからかってみるか。
「あれ、武志くん? どうしてひざまずいているのかな? もしかして、身長が伸びてなかったとか? そんなわけないかあ」
わざと挑発するように言ってみた。分かりやすい煽りは逆に相手の神経を逆撫でする。
「ぐぅ……! おのれぇ……! 二人共伸びたからって……!」
武志が恨めしそうにいう。あれ、反論してこないのか。
「で、何センチだったんだ……?」
特に武志を慰めることもなく駿樹が聞く。武志は渋々といった感じで答えた。
「…………………………166.9」
あぁ……。
「「0.1cm縮んだのか……」」
「うわぁぁぁぁぁぁん!」
武志の去年の身長は167.0。哀れなことに身長が縮んだ挙げ句166台になってしまったようだ。
「何と言うか……。残念だったな。さっきは煽ったりして本当にごめん。大丈夫、きっとまだ成長する見込みはあるはずだ」
「そんな急に優しくされても逆に傷つくよ! 見ないで! そんな哀れな生き物を慈しむような目で僕を見ないでよ!」
なんて可哀想なんだ。縮んだのを知らなかったとはいえ煽るなんて、少々気遣いが足りなかったな。
すると、駿樹が武志の肩にポンと手を置く。
「ま、まぁ……。そんなに落ち込むな。俺もたったの1cm程度しか伸びていない……」
「僕縮んだんですけど!? てめぇら慰めるの下手すぎだろ!」
慰めようとする気持ちは駿樹も一緒のようだ。やはり俺達は親友なんだな。素晴らしき友情。
よし。もう一人の哀れな親友に、俺達の思いを伝えよう。
「大丈夫だ武志。俺らは親友だろ?」
「あぁ……。俺達は身長なんて些細なものを気にしない。だから……」
「お前ら……」
俺と駿樹が息をピッタリ揃えて言う。
「「これからもよろしくな、166cm(笑)」」
「お前らなんて親友じゃねぇぇ!!」
こうして俺達の絆はさらに深まった(?)。
―――――――――――――――
昼休み。俺は親友二人を園神に紹介する。
「紹介するよ園神。こっちの背の低いのが武志、高い方が駿樹だ」
「えぇ。分かったわ」
「その紹介の仕方何か嫌なんだけど……。てかそれより!」
武志はガバッと俺の腕を掴んで後ろ側に引っ張る。
(何だよ……?)
(おい! どうやってあの園神さんと仲良くなったんだ?)
(どうやって、って別に普通に話してただけだ。ていうか別にそこまで仲良くなった訳じゃないと思うが……)
(普通にってなんだよ!)
(あぁもう! どうでもいいだろそんなの。とにかく園神を紹介してやるって言ってるんだ。経緯なんて関係ないだろ?)
(紹介って本当なのか?)
(あぁ。さっきバカにした詫びだ)
(マジかよ! やっぱり持つべきは親友だな!)
(はぁ……。単純な奴で良かったよ)
元の位置に戻る。
「……何を話していたの?」
「いや、何でもないです! 俺、神田武志っていいます! よろしくです!」
変にかしこまった様子で言う。超絶美少女を前に緊張しているのだろうか? ……いや、気に入られようとしてるだけだな。
「まぁよろしく。あと、取りあえず敬語はいらないわ」
「はい! 分かりました!」
「分かってないじゃない……」
園神にツッコミをさせるとは……。さすがはミラクルバカ。取りあえず、園神に助け船を出そう。
(園神。武志は「敬語」とは何かを理解してないんだ)
(はぁ? 幾らなんでもそんなことあり得ないでしょ?)
(いや、そいつはそんな常識を覆す、常軌を逸したバカなんだよ)
(そう。……とてつもなく面倒な人ね)
ちょっとバカさは盛ってる気がするが、面倒なのでだいたいこんな説明でいいだろう。
「では神田くん、普段通りに接してちょうだい」
「え、普通でいいの? 分かった、よろしくね、園神さん!」
「えぇ……」
(やったな!)
(……彼は本当に高校生なの?)
それはごもっともな質問だ。俺も何回か、いや何回も疑ったことはある。
「とにかく、次は駿樹の番だ」
「あぁ……」
駿樹は園神に顔を向ける。
「木村駿樹だ……。よろしくたのむ」
「………よろしく」
「ん? 何故避けるんだ……?」
「い、いえ、少しね……」
ん? ……あぁなるほど。あの時のことがあってか。
俺は駿樹の元へ行く。
(おい駿樹。お前化学の時間、聖典読んでただろ)
(あぁ……。そういうことか……)
特に気にした様子もなく、再度園神の方を向く。
「園神さん、安心してくれ。俺は巨nむぐっ!」
危険な言葉を発しようとしている駿樹の口を慌てて塞ぐ。
(キサマ……! 一体今何を話そうとした?)
(何って……。俺は巨乳以外に興味はないから安心してくれって)
(いや失礼すぎんだろ!)
女の子に対するセリフとしては致命的だ。というかそんなセリフを堂々と言ってのけようとするなんて、こいつ頭終わってるんじゃないのか?
(いいか? 園神の胸は決して小さくはないが、取り分け大きくもない。気にしてるかもしれないだろ?)
その前に女の子に胸の話はタブーのはず。この男は何故それを理解できていないのだろう。
(はぁ。じゃあ何て言えばいいんだ……?)
(いくらでもあるだろ……。「大丈夫、現実との区別はついている」とか?)
(なるほど。仕方ないな、それでいこう……)
(いやどう考えても胸の事話すよりはいいと思うぞ……)
「何かしら。何かとてつもなく失礼なことを言われている気がするのだけど」
「恐らくそれは気のせいだ」
なんて鋭いんだ。前も視線の会話を読まれたことがあったな。
駿樹が言葉を決める。
「とにかく、安心してくれ。俺はちゃんと現実との区別はついてる……」
「本当でしょうね……?」
「当然だ。改めてよろしく……」
「……えぇ。よろしくね」
やっと紹介が終わった。やれやれ。前途多難すぎる。
しばらく四人で雑談をしていると、昼休みの終わりを告げるチャイムがなった。
うーん。やっぱり萌えがなかったですね。
作者の不甲斐なさで、日常と恋愛を両極端にしか書けない気がしています。いやまぁ、勿論頑張りますが。
次回は、新キャラがでる予定です。
感想、アドバイス等あればよろしくです。




