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才色兼備の少女が隣の家に引っ越してきたんだが  作者: 江谷伊月
第一章.二つの始まり
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5.引っ越しの挨拶。才色兼備の少女が隣の家に引っ越してきたんだが

評価、感想いただきありがとうございます!

うれしかったです。

読んでくださっている方のご期待に添えるかは正直不安ですが、一生懸命頑張りたいと思います。


 俺は異例な事態に遭遇していた。


「こんばんは。夜遅くにすみません。このたび隣に引っ越して来ました。園神と申し……あら?」


「………………ゑ?」


 そこには、絶世の美少女園神夏音が、驚いた様子で立っていた。


 今、「隣に引っ越して来ました」って言った?


 ええっと、つまり……?


「まさか……。隣に引っ越して来た人って、園神さんなの……?」


「え、ええ。そうみたいね」


「マジかよ!!」


 思わず声を出して驚いてしまう。


「私も驚いたわ……。まさか席が隣の人が家まで隣になるなんて」


「まさか俺も、転校生が隣に引っ越して来るなんて思ってもなかったよ……」


 何て偶然だ。こんなことがあるのか?


「……まぁいいわ」


「え?」


「これからよろしく。はいこれ、手土産のお菓子。親御さんにもよろしく言っといてね。それでは、失礼するわ」


「え。ちょ……」


 何事もなかったかのように、早々と玄関の扉に手をかけようとする。もう会話は終わりなのか?


 折角、偶然隣の家になったというのに。


 やはり他人、ましてや俺なんかどうでもいいってことなのか?


 そう思うと、なんだか胸がチクッとした。


「ちょっと待ってくれ、園神さん!」


 気づけば俺は園神さんを呼び止めていた。……え? 何で俺は声をかけたんだ?


 凡人が天才に進んで関わる必要はないって思ってたのに。


 俺なんかが関わっても迷惑なだけだと思ってたのに。


「何かしら?」


 園神さんが振り返る。えぇい! こうなったらずっと聞きたかったことを聞いてやる!


「どうして、そんなに冷たい態度をとるんだ?」


 きっと、「そんなのどうでもいいじゃない」とか言われるのだろう。


 恐らく無駄な質問。それでも聞きたかった。



「え……? 私はそんなつもりはなかったのだけれど……」


 しかし、返ってきた答えは、俺にとってあまりに予想外なものだった。


「…………………えぇ!?」


 俺は驚愕の声をあげる。


「私、冷たくしているように見えたかしら?」


「あ、あぁ。まぁ」


「そう……。私としては、普通に接していたつもりだったのだけれど」


 そういうと彼女はほんの少しだが、表情を沈ませる。


「へ? そうなのか?」


「……そうよ」


「俺達の事なんて、どうでもいいって思ってるんじゃないのか?」


「それは大きな誤解よ……」


 今度は呆れたように言う。


「ただ、私はコミュニケーションをとることが得意ではないの。だから楽しい会話はできなかったかもしれないわ」


 てことは、俺はただ、勝手に勘違いをしていただけってことか?


「なんだ、そうだったのか……」


 一気に力が抜ける。関わらないように、とか色々考えていた自分が馬鹿みたいだ。


 ていうか俺は、結構失礼な事を考えていたんじゃないか?


「園神さん、ごめん」


 俺が謝ると、園神さんは意外そうな顔をする。

 

「……なぜ謝るの?」


「……正直言うと、俺はてっきり園神さんは頭が良いから、俺達のことなんてどうでもよくて話しかけるの迷惑なんじゃないかって、勝手に想像して園神さんのことを避けようとしてたんだ。だから、その……。ごめん」


「………」


「でも、そうじゃなかった。園神さんは、そんな見下したような考えをもたない、普通の女の子だった。だから改めて、クラスメートとして、隣人として、これからよろしくたのむよ」


 すると、園神さんは更に意外そうな顔をした。


「あなた、変わってるわね」


 そう言うと、園神さんは、少しだけ表情を緩める。


「そうか? 普通だと思うけど」


「いえ。でも普通の女の子、なんて言われたのは初めてだわ」


「え? そうなのか?」


「えぇ」


 じゃあ今まで何と言われてきたのだろう?「天才少女」、とかだろうか。自分で言っといてなんだがセンスないな。


 すると、急に園神さんの雰囲気が変わったような気がした。


「というか、本当に勝手な想像をされたものね。私はそんなに冷徹な女に見えたのかしら」


 ぐぅ……! それを言われるとキツイ。しかし、誤解が解けた今は、ただの軽口にしか聞こえなかった。


「だ、だから謝ったんじゃねぇか……!」


「そうね。想像とはいえ、人を勝手に冷徹で周囲の人間をゴミとしか思っていなくて話しかけられるだけでその人を煩わしい扱いする極悪人に仕立てあげていたんだものね」


「そこまでは言ってないだろ!?」


 今のは、ただの悪口にしか聞こえなかった。


「まぁそんな極悪女扱いされても、私は許してあげるわ」


「嘘つけ!?」


 前言撤回。彼女違う意味で「普通」の女の子ではなかった。


 しかし、本当に怒っている様子はなかった。


 しかも、俺との会話に馴れてきたのか、毒舌になったとはいえちゃんとコミュニケーションをとれていた。


 いや、本来はこういう人なのかもしれない。


「フフッ……」


 園神さんが笑う。彼女のこういう顔を見るのは初めてだ。


「……楽しそうだな?」


 少しからかってみる。


「はぁ? 何を勘違いしてるの。相手が自分と話していて楽しいと感じているとでも思っているのかしら。とんだ自意識過剰野郎ね」


「俺ただの恥ずかしい奴じゃねぇか!」


 見事なまでのカウンターだった。一撃でK.Oされそうだ。


「……あら? 随分長話してしまったわ。そろそろお暇するわね」


「あぁ、引き留めて悪かったな園神さん」


「……園神でいいわ。えっと……高峯(たかみね)くん?」


高崎(たかさき)だ。今日自己紹介したじゃないか……」


 こいつ……! 俺が名前を聞いたときは『もう忘れたの?』みたいなこと言ってきたくせに自分も忘れてんじゃねーか……!


「あらごめんなさい。印象が薄くて覚えていなかったわ。フフッ」


「お前わざと間違えたんじゃないだろうな!?」


 この人、頭良いはずじゃなかったのか?


「……高崎くんね。それでは失礼するわ」


「おう。じゃあな、園神。また明日」


 バタン。と玄関の扉が閉まる。


 性格は大分アレだが、まさか才色兼備の転校生の少女園神夏音が隣に引っ越してくるとは。こういう事もあるものなんだな。


 俺は最初は、彼女になるべく関わるまいと遠慮していた。


 しかしそれが何だか嫌だったのか、今、声をかけた事をきっかけに、彼女のことを少しずつ理解できた。


 完全にではないかもしれないが、少なくとも関わるまいとは思わなくなった。


 これは、思わぬ収穫だった。


 しかも今日で、急激に彼女との距離が縮まった気がする。上手くいけば、良い関係を築けるかもしれない。


 ……まぁ毒舌な分不安だが。


 リビングに戻ると、母さんと妹が待っていた。


「ただいま。やっぱりお隣さんだったよ。はい、お隣さんからの手土産。デーブルに置いとくから」


「お疲れ様、兄ぃ」


「お帰り零人! 随分長かったわね~。何かあったの?」


「あぁ。聞いてくれよ、二人とも」


 俺は、二人に話した。


 色々あった今日の事。


 そして、才色兼備の転校生で、隣人となった園神夏音のことを。


やっと初日が終わりました。

園神さんは、どうやら馴れた人だと毒舌になるようですね。


感想や、アドバイス等あれば、よろしくです!

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