表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
才色兼備の少女が隣の家に引っ越してきたんだが  作者: 江谷伊月
第二章.凡人と天才の憂鬱
43/44

39.桃すけと水族館デート(前編)。そっくりさん発見?

 今日は土曜日。謎の理由で桃と遊ぶことになった俺は、彼女からの連絡によって水族館に来ていた。


 混雑しているかと思いきや、休日にしては人は少なかった。これは歩きやすくてラッキーだ。


 さて、そろそろ待ち合わせの時間だが、桃のやつどこにいるんだ?


 確か入り口近くに集合だったはずなので、その付近にいると思うのだが。


 探していると、ようやく桃の姿を発見する。黄色のワンピースがとても似合っていて可愛らしい。


 彼女は入り口前でキョロキョロと挙動不審に辺りを見回していた。俺のことを探しているのだろう。


 よし、少しイタズラでもしてやろうか……!


 俺は人混みに紛れ、桃に見つからないよう注意しながら彼女の背後へと回る。


 そして、バッと勢いよくその肩を掴んでやった。


「おっす桃すけ!!!」


「ひゃああああああああああ!?」


 公衆の面前にも関わらず、甲高い声で叫ぶ桃。なかなか良い反応だ!


 当然、桃は一気に周囲の注目を浴びることとなってしまう。


「あわわ、ごめんなさい……!」


 あわてて桃がペコペコと謝罪すると、人々は若干怪しいものを見る目をしながらもそれぞれ歩き去っていった。


「ねー信じられない!! びっくりさせないでよ零人くん!!」


「いやー悪いな!」


「悪いな、じゃないよもー!! ボクがどれだけ恥をかいたと思ってるのさー!!」 


 ぷんすかと怒っている桃。さすがにやりすぎたかな。


「ごめんって。お詫びにほら、お前の分の入館チケットも買っておいたから。とりあえず中に入ろうぜ、な?」


 俺はそう言って二枚のチケットを取り出した。


「え、ホントだ……! でも悪いよそんなの!」


「いいって。逆に受け取ってもらわなきゃ詫びにならないから」


「それはそうだけど! お詫びなんてなくても許すよ!」


「まあまあ。もう買っちまったんだし、素直に受けとってくれよ」


「うう、分かった。ありがと……」


 やっとのことでチケットを受け取ってくれる。


「さあ桃! Let's水族館へGoだ!」


「お、おー!!」


 俺たちは元気よく、水族館の中へと入っていった。


「(うう、変なところて優しいんだから……)」


 ウキウキしながら水族館の中に入った俺の耳には、桃の小さな呟きは届かなかった。



――――――――――




 中へ入ると、早速目の前に大きな水槽があった。水槽の水ではいろんな魚たちが悠々と泳いでいる。


 水族館特有の水の匂いを感じながら、俺たちはそれらを見物していた。


「見て見て零人くん、お魚さんがいっぱいだよ!!」


「そうだな。とても綺麗だ」


「うん! すごいすごーい!!」


 桃は子供のようにはしゃいでいる。開始早々テンションMAXみたいだ。


 魚たちを見物をしながらゆっくりと前に進んでいくと、トントン、と腕を小突かれる。


「ねーねーあれ見て零人くん! 物凄くでっかいイカさん!!」


 桃が指差している方向を見ると、バカでかいイカの剥製らしきものが展示されていた。


 剥製なのでもちろん生きてはいないが、ギョロっとした丸い目に、何本もある長い触手、それにでかい図体なのも相まって物凄い迫力と不気味さを醸し出していた。


「うわ、ホントだ! えーと、体長4メートル!? 何食べたらそんなでかくなるんだ……?」


「うーん……。あのイカさん、もし刺身で出されたら全部食べきれるかな?」


「お前アレ食う気か!?」


「うん! まあもしそうなったらの話だけどね!」


 なんて食いしん坊で、そしてサイ◯パスな発想だろう。展示物を食べ物として見るなんて。桃のやつ……恐ろしい子……!


 ある程度巨大イカなどを見た後、俺たちはすぐ横にあったトンネル水槽へ入っていった。


「わあ……!」


「おお……!」


 トンネル水槽では、あらゆる方向でさまざまな魚たちが自由に泳ぎ、仲良く戯れていた。


 種類によって、または個体によって違う動きをしているにも関わらず、何故か全体の泳ぎは一体感のようなものを感じさせる。


 彼らが水の青の中で織り成す神秘的な遊泳ショーを見ると、まるで自分もトンネルの水の中にいるような、そういう感覚にさせられた。


「あ、見て見て零人くん、エイさんがいるよ!」


「お、おう。ホントだ」


 桃の言葉で現実に引き戻される。どうやら感動的すぎて見惚れていたようだ。


 見ると大きなエイが、俺たちに自分を見せつけるかのように真上を泳いでいた。


「あはは、このエイさん変な顔~!」


「ああ、お前そっくりだな」


「ん、それはどういう意味かな!?」


「どういう意味って、そのまんまの意味だけど」


「ってことは何!? ボクの顔が変だとでもいうの!?」


 桃はむーっとほっぺをパンパンに膨らませてこっちを威嚇していた。


「はは、冗談だよ。けど変な顔って言われると傷つくだろ? エイさんだって悲しんでるかもしれないぞ」


 せっかく来てくれたエイに失礼なこと言った罰だ。それにあのエイ、案外可愛かったのに。


「確かに……。ごめんなさい、エイさん」


 ペコっとエイのいる方向に頭を下げて謝罪する桃。エイは気にすんな、と背中で語っているかのように泳ぎ去っていった。


 俺たちも前へとゆっくり歩いていく。


「お、こっちにはハリセンボンがいるぞ」


「え、ホントだー! 可愛いなあ……!」


 今度はトゲトゲじゃないモードのハリセンボンを発見する。トゲトゲのお怒りモードとはまた違う愛嬌があっていいな。


 桃はそのハリセンボンを間近でじーっと見ていた。ハリセンボンが動くと同時に桃も後を追うように一緒に動く。どうやらハリセンボンが大好きみたいだ。


「随分そいつを気に入ったみたいだな」


「うん……! この子、すごく可愛い顔してる!」


「ふーん。こいつ、お前そっくりだな」


「ふえっ!?」


 さっきと同じネタをやっただけなのに、めちゃめちゃ驚かれる。


「な、何だよ?」


「い、いや何でもないよ……! それはちょっと嬉しいかも……」


「はあ……?」


 何でエイだと怒って、ハリセンボンだと喜ぶんだ? 訳が分からなすぎる。


「えへへ、よーし! 次の場所へ行こう!」


「あ、ああ。そうだな」


 まあ何でもいいや、考えてても仕方ないしな。


 俺たちはトンネル水槽を後にして、ペンギンたちのいる場所へと向かった。


「ふっふーん♪」


 移動中の桃は、とても機嫌が良さそうだった。不思議なやつ。


閲覧ありがとうございました。

※10月末くらいまで不定期投稿になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ