38.桃すけ登場。三度目の誘い
武志の将来の話も終わり、昼休みの時間も刻々と過ぎていく。昼飯も食べ終わり、また五人で雑談していたその時だった。
ガラガラガラッ!!
誰かが勢いよく教室に入ってきた。その人物はなにやら機嫌が悪そうで、俺たちの方を見るや否や、こちらにぷんすかと歩いてきた。
「零人くん!!」
「な、なんだよ桃すけ、今来たのか。随分機嫌が悪そうだな?」
そう、入ってきたのは白井桃こと桃すけだった。
「こっちに来て!!」
「はぁ? いきなりなんだよ……っておい! 引っ張るな!」
桃は一言いうと、突然俺の制服の右袖を掴んできた。そしてそのまま引きずられるように、俺はどこかに運ばれていったのだった。
「……おい、なんだったんだ今の。零人が桃すけに誘拐されていったぞ。僕たちも行くか?」
「いや、ほっときなさい武志。どうせ、そろそろこうなる頃だって思ってたし」
「はあ……? 葵は桃すけが来ることを知ってたのかよ?」
「んー、まあそんなとこかしらね。はぁ……」
そんな二人のやり取りも聞けぬまま、俺はずるずると桃に連行されていった。
―――――――――――――――
半ば強制的に桃に連れてこられた場所は、空き教室だった。以前涼花に呼び出され、デートに誘われた場所だ。
「で、なんだよ。どうして俺をこんなところに連れてきたんだ」
とりあえず連行された理由を問い詰める。何かもう察しはつくけど。
「どうしてって、話があるからに決まってるじゃないか~!」
桃は何故かご立腹の様子だ。先程からずっと機嫌が悪い。
「あのな、話があるんだったらもうちょっと普通に呼び出せば良いだろ。危うく制服の袖が破れるところだったぞ」
「ふーん! 季節的にこれから暑くなるし、破れた方が涼しくて良かったんじゃないかな!」
「いやこれ長袖だから! 暑くなったら普通に半袖着るわ!」
確かにもう少しで春が終わるのでこれから暑くなるだろうが、破れた長袖をわざわざ着用するなんて斬新なクールビズはしたくない。
「まあとにかく、話ってなんだ? お前を怒らせるようなことをした覚えなんてないぞ?」
「……さっきクラスの友達から聞いたんだけどね」
「うん?」
「零人くん、葵ちゃんとスズちゃん二人ともとデートしてるって」
う、この事桃のクラスメートにさえ知られてるのか。変な噂をされてないといいんだが。
「あ、ああ、それがどうした?」
「あーーやっぱり本当だったんだ!!! 零人くんの変態! 二股男!!」
「人聞きの悪いことを言うな!!」
いきなりものすごい罵倒をされる。二股男ってなんだよ!
あの二人とは付き合ってもいないというのに。変に誤解してないか?
「というわけで零人くん、ボクともデートしてよ!」
「いやどういうわけですか……?」
なぜそういう結論に至ったのか。俺にはさっぱりだった。
「何よ零人くん! 葵ちゃんやスズちゃんとはデートしたのに、ボクとデートするのは嫌って訳かい!? ひどい、ボクとは遊びだったんだ……!」
「昼ドラか!! 別に嫌って訳じゃないから落ち着け!」
この子はどうしても俺を女たらしにしたいようだ。
「ホント……? 嫌じゃない……?」
「う……!」
目をうるうるさせながらこちらをみる桃。身長差の関係で自然に上目遣いになり、それが愛嬌を増して更にかわいらしく見えてしまう。
元から整った顔立ちなので、破壊力は抜群だった。
くそ。さっきまでやかましかったくせに、急にしおらしくなりやがって……。
「お、おう。嫌なわけないだろ」
「えへへ、やったー!! わーい!!」
するとまた元通り、元気に跳び回りながら喜ぶ桃。……ジャンプするごとにその豊かな二つのアレが揺れるので、目のやり場に困ってしまう。
「お、おい! はしゃぐな!!」
「へへ、はーい! って零人くん、何か顔が赤いよ? 具合悪いの?」
「べべ別に、何でもないんだからね!!」
動揺しすぎて何故かツンデレ風な話し方になってしまった。やっぱり男が言うと気持ち悪いな……。
ていうかそんな立派なモノを二つも持ってるんだから、少しは激しい動きを自重してほしい。どうしても目がそこにいっちゃうだろ。
……嘘ですごちそうさまでした。
「? まー大丈夫ならいいや! それじゃあ後で日程とかの連絡するね! じゃーね零人くん!!」
「お、おい!!」
桃は用件を伝え終えた途端、俺の制止も聞かずに凄い早さで去っていった。
相変わらず元気なやつだな……。あの小さい身体のどこにそんなパワーがあるのやら。
閲覧ありがとうございました。新作『神(自称)の命令なんて関係なく、幼馴染みと青春したい!』の方も良かったら読んでください。(露骨な宣伝)




