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才色兼備の少女が隣の家に引っ越してきたんだが  作者: 江谷伊月
第一章.二つの始まり
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3、席替え。零人の奮闘

 入学式が終わり、特別活動の時間となる。鬼山が教卓に着くと、何やら割り箸の束のようなものを教卓の上に置いた。


「よし。席替えをするぞー」


 クラスメートの一部から歓喜の声が上がる。もう席替えをするのか、早いな。ということはあの割り箸の束は、席を決めるための物か。


 ちなみに今は、クラスが出来上がった直後なので、席は名簿順に並んでいる。鬼山はこういう決まった順番みたいなのをすぐ変えるタイプなのだろう。


「席替えは、この箸のくじで決める。箸に書いてある番号にあった席に座ってくれ。因みに席の番号は、今の名簿番号の席と同じだ。視力に問題がある奴以外はどうなろうと全員恨みっこなし。分かったな?」


 あの割り箸の束はくじだったのか。どうやら先っちょに番号が書いているらしい。なるほど、紙のくじより作るのが楽そうだ。


『よっしゃ、園神さんと隣になるチャンスだ!』


『何を言っている! 園神さんの隣になるのはこの俺だ!』


『何だと? お前は周りが男子だけのむさ苦しい席にでも座ってろ!』


 教室内はそれはもう、盛り上がっていた。特に男子が。ま、あんな美少女が自分達のクラスに入ってきたんだ。当然と言えば当然か。


「それじゃ、一号車の人から順に引いてくれ」


 一号車の人達が、一斉にくじを引きに行く。俺と武志と駿樹は二号車なので次だ。葵と姫宮さんは三号車なのでその次。因みに転校生の園神さんは、三号車の一番後ろに座ったので、園神さんも三番目だ。


「次。二号車引きに来てくれ」


 二号車の人達が立ち、俺もくじがある教卓へと向かう。といっても二号車の人全員がくじを引くため、列に並んで自分が引く順番を待たなければならなかった。


「僕、園神さんの近くがいいな~。お前らはどこがいい?」


 たまたま前にいた武志が話しかけてきた。ちなみに俺の後ろには駿樹が並んでいる。


 席かあ……。前の方は何となく嫌なんだよなあ。授業中いつもより先生に見られてる気がして、変に緊張するし。ま、別にここがいい、っていう席も無いんだけどね。


「俺は後ろならどこでもいいかな」


「俺も……」


 俺の意見に駿樹も同意する。


「ええ~!? お前ら、園神の隣になりたいとか思わないの!? あんなに美人なのに!」


 武志が意外そうな顔で驚く。確かに、園神は滅茶苦茶美人だ。しかし何というか、あんな綺麗な人と俺なんかが仲良くなれるとは思えないんだよな。まあ仲良くなれたらいいなとは思っているけども。


「別に、俺のタイプではないからな……。俺が愛するのは巨n……もとい、バストの大きい女子だ」


 駿樹、それは言い直す意味があったのかい?


「俺は気にならないわけでは……」


『ギロッ』←葵


「全く気になりません」


 どうして葵が凍てつくような視線で睨んできたのかは分からないが、とりあえず否定すべきだと脳内の危険信号が発していた。


「お前ら変な奴だな……。あんな可愛い娘がいたら、普通仲良くなりたいって思うだろ?」


「おいバカ共、さっさと引け! 後がつかえてるんだ!」


 おっと、こんな話をしている場合じゃなかった。ていうか生徒を平気でバカ呼ばわりするなんて、普通におかしいと思う。

 

 俺達はそれぞれくじを引く。引き終わると、選んだ箸のくじを持って席に戻る。


「次、三号車だ」


 おお、と歓声があがる。おそらく園神さんが引く番だからだろう。男子がそれぞれ声を上げる。


『とうとう園神さんが引くぞ。頼む、俺の隣の番号!』


『バカ言え、俺の隣を引くに決まってる!』


『でも姫宮や遠山もいいんだよなー』


 園神だけでなく、葵や姫宮さんも人気のようだ。園神ばかりに注目がいってるけど、二人も学年でトップクラスの人気を誇る美人だ。男子にこう言われるのも十分納得がいく。


「全員引き終わったな。それじゃあ、移動してくれ」


 全員が机を移動させる。俺の番号は……33。お、ラッキー。三号車の一番後ろだ。こうなると、気になるのは隣の席の人。誰だろう、ある程度知り合いならいいのだが。


 俺が机を移動させ終わると、もう既に隣の人は座っていた。


 そしてなんとその人物は、噂の美少女転校生、園神夏音さんだった。


―――――――――――――――――


席替え結果


34 27   20 13   7 1

35 28   21 14  8 2

36 29   22 15  9 3

37 30   23 16   10 4

38 武  葵 姫   11 5

39 32   25 18  12 6

園 零   26 駿



 ……最悪だ。


『畜生、何で俺じゃなくて、高崎なんかが園神さんの隣に……!』


『高崎の野郎、一生恨んでやる……』


『……もし私の前でイチャつきでもしたら、殴り殺すわ』


 さっきからこんな感じで、男子(&葵)の殺気の籠った視線が刺さりまくっている。居心地悪いことこの上ない。くそ、どうしてこんな目に遭わなくちゃいけないんだ。


 しかし、くじで決まってしまったものは仕方がない。今は運命を嘆くより、現実を受け入れて、この席で楽しくやっていけるように努めるのが最善だろう。


 よし、まずはコミュニケーションの第一歩、挨拶だ。俺は声を掛けるべく園神の方を向き、その綺麗な横顔をしっかりと見る。


「よ、よう。俺、高崎っていうんだ。これからよろしくな!」


 努めて明るく言ってみた。


「そう。よろしく」


 しかし、その返事はとても単調なものだった。


「あの、自己紹介とかは……? せめて名前だけでも……」  


「名前? ホームルームで言ったばかりじゃない。もう忘れてしまったの?」 


「い、いやそういう意味じゃなくて……」


 え、反応冷たすぎない? しかも地味にバカにされている気がするぞ……?


「よし、移動終わったな。では隣になった者同士で、お互いに自己紹介をしろ。もう三年生なのだから、コミュニケーション能力の重要さを理解しているはずだ。隣のヤツとも仲良くなれんようじゃ、社会でやっていけないぞ。じゃ、今から5分数えるからな」


 嘘だろ……。こんな調子で、5分も会話が続くのか?




―――――――――――――――――




「そ、そういえばさ! 園神さんの出身校、晴斗学園って言ってたよな。あそこって全国でも偏差値トップクラスの学校だろ?」


「そうね」


「てことは園神さん、めちゃめちゃ頭良いんじゃん! すげーな!」


「ええ、ありがとう」


 俺は奮闘していた。何とかして園神さんと仲良く……とまではいかなくても、普通に楽しく会話できるようになるために。しかし、相変わらず冷たい反応しか返ってこない。


 だが諦めてなるものか。ここは一つ、少し軽口を言ってみよう。気を遣って話すより、少しフラットな感じでいった方が、案外打ち解けるかもしれない。


「頭が良いってすぐに認めるってことは、余程自信があるんだなー……」


「本当のことを言ったまでよ」


「そ、そうだよな。……なんかすまん」


 失敗。サッパリと斬られる。……くそ、でもここで話を終わらせちゃダメだ。諦めるな俺、何か良い話題を探すんだ。諦めたら試合終了って、どっかのスポーツ漫画でも言ってただろ。ん、スポーツ漫画……そうだスポーツだ!


「園神って、何かスポーツやってたのか?」


「いえ、何も」


 うわマジかよ……。何かやってればそこから話広げられたのに。また話のチョイスミスったか……?


「運動は苦手なのか?」


「そういう訳ではないわ」


「そ、そうなのか。園神のことだから、運動神経もすごかったりしてな」


「どうかしらね」


「…………」


「…………」


 うおお、何を話しても一言で簡潔に返事してきやがる……! 会話が続かない。そのせいで、彼女がどういう人なのか全く掴めない。


 分かっている事と言えば、全国最高峰の偏差値を誇る高校に通っていたことくらい。本人はさらっと言ってるけど、超高校級の頭脳がないとその高校にはまず入れない。つまり早い話、彼女は間違いなく天才だということ。


 しかも絶世の美少女ときた。まさに、才色兼備というやつじゃないか。


 これは俺の想像にすぎないが、彼女が冷たいのは、こんな学校にいる生徒の事などどうでもいいと思っているのではないだろうか。


 彼女のいた晴斗学園に比べれば、この学校の生徒など虫けら程度のものだろうし。


 そんなひねくれた考え方をしてしまう。だって仕方ないだろ。


 ……俺は才能があるやつを尊敬していると同時に、妬ましいとも思っているんだから。


 しかし、だからといってそいつが憎いだとか、蹴落とそうなどとは思っていない。むしろ頑張っているなら応援する。


 とはいえ才能があるものからしたら、俺達は自分より下のどうでもいい奴に見えるのかもしれない。


 そしてどうでもいいやつにしつこく関わられるのは、迷惑なのではないか?


 俺は迷惑を掛けるつもりは一切ない。しかし、もし彼女にとって俺はどうでもいい存在なのだとしたら、


 虫けらの俺は、天才の彼女に関わるべきではないのではないか。



 その後、この時間が終わるまでもう彼女と会話することはなかった。


席替え表見づらくてすみません!気合いでなんとかみてください。


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