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才色兼備の少女が隣の家に引っ越してきたんだが  作者: 江谷伊月
第二章.凡人と天才の憂鬱
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35.姫宮さんとデート(後編)。名前で呼ばせてください!

 カフェから出た俺と涼花は、100円ショップに来ていた。


 何でも、「葵ちゃんだけおそろいの物があるのはずるい、私もおそろいの物が欲しいです!」ということらしい。何でそこで張り合ってるんだこの人は……。


「時間的にここで用を済ませたら解散かな」


「はい、そろそろいい時間ですもんね。早いものです……」


 そういう涼花はなんだかちょっと寂しそうだった。


「まぁ、最後も楽しんで終わろうぜ?」


「はい、そのつもりです!」


 その言葉どおり、俺たちは意気揚々と店内を見て回る。


「わあ、高崎くん、このヘアゴム可愛いですよ!」


 早速いいものを見つけたらしい。可愛らしく装飾をされたヘアゴムを手に取り、俺に見せてくる。これは涼花に似合いそうだ。


「お、確かにいいね」


「はい! これ一緒に買いましょう!」


「いいかい涼花。俺は男なんだ」


 ロン毛でもない俺には到底似合わないことだろう。


「あぁ、そ、そうでした! すみません、つい同姓の友だちのノリで言っちゃって……」


「…………ううん、大丈夫だよ」


 俺が男子であることを、まるで今気づいたかのように言われた件については触れないでおこう。


 涼花って、天然なところあるよな。そこもまたこの人の魅力なんだけど。


「でもこのヘアゴム可愛いから買っていきたいです……」


「それじゃあ、俺は美奈に買っていくことにするよ」


 キュートなこのヘアゴムは、美奈にも似合うだろう。というわけで、購入することにする。


「本当ですか! やった、美奈ちゃんとおそろいですっ!」


 嬉しそうに持っていたヘアゴムを眺める涼花。


「嬉しそうでよかったよ」


 妹のことで喜ばれるのも、兄として悪い気はしないな。


「さて、私たちの分を見ましょう!」


 買うことにしたヘアゴムを持ったところで、また店内を探して回った。





――――――――――――――





 一通り回って買うことにしたのは、同じデザインのシャープペンシル。色はお互いの好みで選んだので違うが、これで涼花とのペアルックもできた。


「ふふ、嬉しいです……! ちゃんと使ってくださいねー?」


「うん、分かってるよ」


「ならいいんです!」


 少し気恥ずかしさはあるが、使わなければ買った意味がないからな。


「じゃあ、ここでお別れだな」


「……はい」


 とうとう、楽しかったデートも終わりの時が来てしまった。少し空しさが心に残る。


「それじゃ、気をつけて帰……」


「あ、あの!!」


「な、なに!?」


 突然呼び止められ、つい驚いてしまう。一体何だろう、涼花はやけに真剣な顔つきだ。


「えっと……。高崎くんのこと、名前で呼んでもいいですか……?」


「え……!」


 その言葉に俺は面食らう。いろいろと恥ずかしさはあるが、断ることでもないし……。ここは素直に返事しよう。


「う、うん! もちろんいいよ?」


「あ、ありがとございます! それじゃあ、零人くん……?」


「っ……!」


 恥ずかしさを押し殺したように言う涼花。そのあまりの可愛らしさに、俺は一瞬見惚れてしまった。


 ただ名前を呼ばれているだけなのに、こんなにドキドキするなんて……。


「な、なんだい?」


「えへへ、ついに名前で呼んじゃいました……!」

 

「うっ……!?」


 少し顔を赤くしながらはにかむ涼花は、とんでもなく魅力的だった。こんな顔、やっぱり反則だろ……。


「こ、これでお互い名前呼びなので、おあいこですね!」


「そ、そうだね!」


 といってもどっちも涼花からの提案なんだ、とは言わない方がいいだろう。お互い正常に頭が働いてないので、言葉選びが変になっていた。


「「ふぅー……」」


 お互い深呼吸して、落ち着きを取り戻す。し終えると、涼花がくるりと背を向けた。


「では、今度こそさよならです!」


 一瞬だけ振り向いてそういうと、涼花はまた歩いていった。


「うん。今日はありがとう! 気をつけてかえってね!」


 それを見送る。こうして、涼花と解散したのだった。




――――――――――――




 涼花サイド 


「とうとう名前で呼んでもらえました……!」


 零人くんとのデートの日の夜、私は一人で嬉しさに悶えていました。


 彼を好きになって以来、今まで名前でずっと呼んでほしかったのに、恥ずかしさのせいか言えないでいて。


 それが今日、やっと叶った。はぁ、これ以上ないくらい嬉しいです……!


「これでやっと、葵ちゃんとは同じ土俵ですね」


 もちろん葵ちゃんも零人くんの事が好きなのは分かっています。そしてやっと、幼馴染みという点を除いては同じ条件になれました。これからは対等に戦えます!


 あとは多分、桃ちゃんも彼に好意を抱いているはず。とにかく二人ともとっても魅力的で可愛い人たちで、すごく強力なライバルです。


 でも、負けるわけにはいかない。零人くんを好きになったあの時以来、私は彼のことが頭から離れなくなるほど好きになってしまったから。とてもじゃないけど、他の人にはどうしても譲れそうにないですし。


「よし、これからも頑張らないとですね。もう三年生ですし」


 実質今年が最後のチャンスなので、恥ずかしがっていられないてます。頑張って振り向かせるんだ、私。


「あとは……」


 他に不安要素といえば、夏音ちゃんのこと。


 最近何故か、零人くんと放課後一緒にいるのをよく見かけます。ずいぶん馴染んではいるみたいだけど、お互い恋愛感情があるかどうかはまだ分かりません。恋愛目的で一緒にいるわけじゃないと思うけど、もしものことがあると思うと、少し不安かもです……。


 夏音ちゃんもライバルとなると、ただでさえ厳しいのにさらに振り向かせることが難関になってしまいます。


 ……そうならないといいな。


 そんな少し悪いことを考えながら、私は眠りについたのでした。


閲覧ありがとうございました! 感想等あればぜひお願いします。

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