32.姫宮さんとデート(前編)。名前で呼んでください!
ついに姫宮さんとのデートが明日まで迫ってきた。どうしよう、とても楽しみだなぁ……。
しかしますは進路を決める件を進めなければならない。浮かれる気持ちを抑え、目の前の資料を読み漁りながらパソコンなどを使って調査を進めた。
ふうっ、結構進んできたな。最初は調べても意味があるのかだとか面倒だとか思っていたけれど、いざやってみれば案外ためになるし、できるもんだ。もらった資料を元に調べれば、面白そうなのはいくつかあったしな。
よし、あとはそれをピックアップして進路先を絞るだけだ。ずっと進路を決められずにいた俺が、こうしてある程度まで決めれるようになったのも、鬼山のサポートのおかげだ。しっかり感謝しないとな。
さて、俺はこんな感じだが、園神のやつはどうなんだろうか。LINEで様子を聞いてみようかな。
園神とは、欠席した場合の連絡など、何かと連絡先を交換した方が都合がいいとのことで、鬼山に言われてLINE交換をしていた。とはいえ、今まで挨拶以外はほとんと話していないが。
返ってくるかは分からないが、とりあえず送ってみよう。
「えっと、『進路を調べる件についてだが、調子はどうだ?』っと」
相手に送信する。すると、数分で返事がきた。意外と返信早いんだな。
『順調よ。あなたこそ、ちゃんとパソコンは使えてるかしら?』
く、ちょっと馬鹿にしやがって……。まぁ、こういう軽口程度ならむしろ言い合える方がいいことだし、許してやるとしよう。
「『当たり前だ馬鹿。こっちも順調だよ』っと。送信」
送ると、またもすぐに返信がきた。
『そう。あなたってローマ字が分かるのね』
「分かるわそんなん!!」
明らかに煽ってきている返信に対して、思わず一人で声を荒げてしまう。これはどう考えても悪口だろ!
くそ、ローマ字が分からないなんて、最早小学生だ。こいつには俺がどんな馬鹿に見えているのだろう。
「『お前嘗めすぎだわ! とにかく、順調そうでなによりだよ』っと」
ツッコミつつ、優しく受け止める理想的な返信をする。また数分後、返信がきた。
『優しくおだてても、アルファベットの打ち方は教えてあげないわよ?』
「いい加減にしろこのアマぁぁぁぁぁぁ!!!!」
今日も今日とて、園神の毒舌は絶好調であった。
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次の日。今日は待ちに待った姫宮さんとのデートだ。
昨日は散々園神に馬鹿にされてしまったが、今日はそんなことを忘れてこの素晴らしいデートを楽しむとしよう。
さて、先に待ち合わせの場所についてしまった俺だが、そろそろ姫宮さんが来る頃かな?
「すみませ~ん、遅くなっちゃいました! 待たせちゃいましたか?」
お、やっぱり来た。遅くなったといってもしっかり集合時間の5分前だ。決して遅刻はしていないというのに謝るなんて、相変わらず礼儀正しくて良い子だな。
「いや、全然待ってないよ」
「そうですか? よかったあ」
そういって彼女は顔を綻ばせる。あぁ、なんて可愛らしい。服も綺麗でよく似合っているし、なんといってもその大きめの胸元が強調されているのがセクシーすぎる。とても魅力的だ。
「服、似合ってるね」
あまり下心を出さないように心がけながらしっかりほめる。これ、デートの基本だぞ。
「ふぇっ!? そうですか……?」
ぼんっと顔を真っ赤にする姫宮さん。
「うん、とても綺麗だよ」
「はぅぅ……! 恥ずかしいです……」
顔を両手で覆い隠してしまう姫宮さん。しかし耳まで真っ赤なので、照れているのはバレバレだ。
「(恥ずかしくて着るの迷っちゃって時間かかっちゃったけど、勇気だして良かったあ……! とても綺麗だよ、なんて言われたら私……嬉しすぎて死んでしまいます……)」
姫宮さんはずっと顔を手で覆ったままだ。そんなに恥ずかしがらせてしまったのか。なんかちょっと申し訳ない。
「えっと、ごめんね? そんなに恥ずかしがられるとは思わなくて」
「も、もう!! 高崎くんったらいじわるです!」
ようやく顔から手を離す。しかし顔にはまだ赤みが残っていた。
「悪い悪い。ほら、行こうぜ、姫宮さん」
「……涼花です」
「へ?」
「姫宮さん、じゃダメです! 涼花って呼んでください!」
「えぇ!?」
ふっきれたように言う姫宮さん。これって、名前で呼べってことだよな? 今まで名字で呼んでいた人を名前で呼ぶって結構キツいぞ……!
「え、えっと、涼花さん?」
「涼花です。さんはいりません!」
「えー……」
何としても名前&呼び捨てで呼んでほしいらしい。くそ、めちゃめちゃ恥ずかしいぞこれ……!! でも姫宮さんの顔は真剣みたいだし、言うしかないか……!
「じゃあ、す、涼花」
「……! はい!」
うぉぉぉ!! 恥ずかしいし、名字じゃないのめちゃ違和感あるぞ!
「ねぇ、これめちゃ恥ずかしいんだけど、やっぱりやめ」
「ダメです。これからも呼んでくれないと反応しません!」
「うっ……」
ダメ元で断ろうとするも、あっさりブロックされてしまう。もう名前で呼び続けるしかないようだ。
まぁ、今は恥ずかしくてもそのうち慣れるだろう。と、信じたい。
「分かったよ、涼花……」
「はい! よろしくお願いしますね!」
「うん……」
「(えへへ、ついに名前で呼ばれちゃった……。ずっと名前で呼んで欲しかったから嬉しい……)」
こうして涼花とのデートは始まったのだった。
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今日2話目です。予定通り明日の6時にも投稿します。
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