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才色兼備の少女が隣の家に引っ越してきたんだが  作者: 江谷伊月
第二章.凡人と天才の憂鬱
33/44

29.プレゼント会。姫宮さんの誕生日

 放課後。3年1組の教室にて。


「スズ、誕生日おめでとー!!」


「わぁ、ありがとうございます!」


 パァン!!


 葵がクラッカーを鳴らす。今日は姫宮さんの誕生日。皆でささやかなお祝いとプレゼントをしようと、葵からメールがきたのだ。


 俺の他にも、武志、駿樹、園神もいる。ももすけの奴は用事があるようで、申し訳なさそうに先に帰っていった。


「葵、お前な。いくら放課後でも教室でクラッカー鳴らすなよ」


 俺達の他に誰もいないとはいえ、マナーってものがあるだろう。


「いいでしょ、このくらい! それより早速プレゼント、皆用意してきたわよね?」


 皆が頷いた。


「おっけー! じゃあ順番にプレゼントタイムといこうじゃない!」


「え、皆さんプレゼントを用意してくれたんですか?」


「そうだよ! 姫宮さんにはいつもお世話になってるからね!」


 武志がここぞとばかりに胸をはる。そうだな、それには同感だ。


「嬉しいです……! 皆さん、本当にありがとう!」


 とても嬉しそうな顔をする姫宮さん。この幸せそうな顔をももすけにも見てもらいたかったな。残念だ。


「(ねぇ、高崎くん)」


 ヒソヒソ声で話しかけてきたのは、園神だった。


「(なんだよ急に)」


「(なんで私までここに呼ばれたのかしら)」


「(は? 当人の友達が誕生日を祝うのは当たり前のことだろうが)」


「(友達……)」


 園神が考え込む仕草をする。その顔はほんの少しだけ嬉しそうだ。


「(そうだよ。お前は姫宮さんと友達になっただろうが)」


「(それはそうだけど、あなたたちの方が付き合いは長いはずでしょ)」


 うわぁ、こいつ可愛くねー。どんだけ素直じゃないんだよ。普通に参加すりゃいいのに。


「(細かいことはどうでもいいんだよ。それにお前だってちゃんとプレゼント用意までしてきて、祝う気満々じゃねーか)」


 園神の手には小さな箱がのっていた。おそらく葵に聞かされてプレゼントをもってきていたのだろう。


「(な、これは……! 葵がいうから仕方なくよ……!)」


 こうは言っているがちゃんとプレゼントを用意するあたり、姫宮さんの誕生日のことを大切に考えているのは明白だ。案外優しいところもあるんだな。俺にはあんなに口が悪いのに。


 それに、いつの間にか「葵」って呼び捨てで呼ぶようになってるみたいだし、だいぶ溶け込んできているみたいだ。


「おーい、二人とも何コソコソしてんだー?」


 小声で話していると、武志に不審がられる。皆も不思議そうにこちらを見ていた。


「なんでもないよ。さぁ、プレゼントタイムといこうぜ!」


「お、おう! そうだな!」


 半ば強引に流すと、雰囲気はもとにもどっていった。


「(ほら、いいからちゃんと参加しろよ)」


「(分かったわよ……。何かあなたに諭されたみたいで嫌気がさすわね……)」


「(何でだよ……。ホントに可愛くねーなお前ってやつは……)」


「(は? 調子に乗らないでちょうだい。口には気を付けることね)」


「(はいはい……)」


 ホントに、可愛くない。こんな調子で一緒に課外活動なんてできるのかよ……。前途多難だなぁ……。




――――――――――




 いよいよ、プレゼントタイムとなった。


「じゃあまず一番手は私からね! はいこれ、改めておめでと!」


 葵が、リボンつきで包装されたそれを手渡す。中身は先日一緒に購入したリップスティックや化粧水などだ。


「嬉しいです……! ありがとう、葵ちゃん!」


「喜んでもらえてよかった! 今度使い方とか教えてあげるわね!」


「うん、お願いね!」


「よーし、次は僕の番だ!」


 こんな感じで、一人一人順番に渡していく。そして、俺の番となった。


「誕生日おめでとう、姫宮さん」


 俺は、葵と一緒に買ったキーホルダーを差し出した。


「うわぁ、このキャラすごく可愛いです! ありがとうございます……!」


 姫宮さんは、目をキラキラさせてそのキーホルダー見ていた。喜んでもらえてよかったな。一応買うとき葵に見てもらってよかった。姫宮さんが好きそうかどうかを葵に訪ねながら選んでいたのだが、さすがは親友、見事好みを的中させたようだった。


「礼なら葵にも言ってやってくれ。実のところ俺一人じゃ姫宮さんの好みがわからなかったから、葵にも選ぶの手伝ってもらったんだ」


「そうだったんですか! 葵ちゃんもありがとう……って高崎くん!?」


 葵にもお礼をしたかと思ったら、急に何かに気づいたように驚く姫宮さん。


「ど、どうしたの?」


「葵ちゃんに手伝ってもらったってことは、その、一緒に買いに行ったってことですか……?」


「う、うん、そうだけど」


 なんだ? 姫宮さんの様子がおかしい。何かへんなことをしたか?


「それって……二人きりで行ったんですか?」


「まぁ、そうだね」


「…………!」


 俺が答えると、一瞬ショックそうな顔をする姫宮さん。そしてだんだんむくれたような表情になって俺をじっと見ている。なんだ? さっきまであんなに幸せそうな顔をしていたというのに。


「(二人きりでデートだなんて……。ずるいです葵ちゃん……)」


「ん? な、なんて?」


「高崎くん!」


「はい、なんでしょう!?」


 いきなり勢いよく呼ばれ、思わず敬語になってしまう俺。


「今度は私とデートしましょう!」


「えぇ!? 姫宮さんと!?」


「いいですね!」


「ちょっ、なんで」


「い・い・で・す・ね!?」


「はい! もちろんいかせていただきます!!」


 考える暇も与えられずに答えさせられる俺。どうして俺の周りの女性たちはこんなにも強い人ばかりなんだ……。


「(スズったらあんなに大胆に……! こりゃ私もうかうかしてられないわ……)」


 葵が面白くないといった顔をしていたようだが、あまり気にしないようにしよう。


「よ、よし! 最後は園神の番だな!」


 この変な雰囲気を断ち切るために、強制的に進行させる。


「ん、誕生日おめでとう、涼花」


 照れくさそうに言いながら、プレゼントを渡す。


「ありがとう、夏音ちゃん!」


 笑顔で受けとる姫宮さん。いつもどおりの平和が戻ってきてよかった。


「その、何をあげればいいのか分からなくて……。ケーキを焼いてきたの」


「これ、手作りなんですか! 嬉しいなぁ……!」


 手作りケーキまで作ってきておいて参加するのを躊躇(ためら)ってたのかよ……。気持ち入りまくりじゃないか。


「そ、そう? 友達の誕生日を祝うのなんて初めてで……。これでよかったのかしら?」


 初めてで慣れてないながらも、園神なりにちゃんと祝おうと考えたのがしっかり伝わってくる。やっぱり、根はめちゃめちゃ良い奴なんだよな。


「はい! 私はとってもうれしいですよ!」


「そ、それなら良かったわ」


 安堵の表情をする園神と、心から幸せそうな姫宮さん。そしてそれを嬉しそうに見る葵。この三人は、これからも絆を深めあっていくことだろう。本当に、二人に園神を紹介してよかった。


 おっと、とてもいい雰囲気なおかげでわすれるところだったが、俺にはまだ違う奴にプレゼントをしなければならないんだったな。


「おい武志」


「んー?」


「お前にもプレゼントがあるんだ」


「え、まじ!? やったあ! やっぱり持つべきものは親友だな!」


「あぁ、お前にも世話になってるからな。ほら」


 そういって俺は大きい袋を取り出した。武志の喜ぶ姿が目に浮かぶ。


「おお、ありがとな……ってメイド服じゃねーか!?」


「まだあるぞ、ほら、ゴリラの被り物だ」


「いらんわこんなもん!!」


 折角あげたメイド服とゴリラを床に投げ捨てる武志。


「なんだよ、似合うと思って買ったのに」


「誰がこんなの似合うんだよ!? 完全に変態じゃないかあ!!」


 ゴリラを被りながらメイド服を着ている武志……おえ。想像したくもない気持ち悪さだ。


「そうだな。だからド変態なお前に似合うとおもって」


「誰がド変態だこの野郎……! 悪意しか感じないぞてめえ……!」


「悪意しかないからな」


「キーッ!! お前を天国にプレゼントしてやる!!」


 ガンを飛ばしあう俺と武志。


「お前ら落ち着けよ……」


 駿樹が止めに入る。確かに、ここで喧嘩なんてしては姫宮さんに申し訳がたたないな。


「仕方がないな。今回は許してあげるよ零人」


「そうだな。喧嘩した詫びにゴリラとメイド服はくれてやる」


「いらないっていってるでしょ!?」


 いらないといわれてしまったので、俺は渋々ゴリラとメイド服を袋にしまう。今はくだらない争いをするよりも、誕生日を祝うことが先決だと、冷静になってから判断する。


 思い返せば、なんてしょうもない争いだったんだ……。


「悪い、姫宮さん。騒いじゃって」


「いえいえ。いつもどおり賑やかで楽しいですよ。ふふっ……」

 

 これがいつもどおりなんて、やはり俺たちの感性はものすごく変わっているのかもしれない。


「何はともあれ、これでプレゼントタイムは終わりね! 最後にまた、皆で祝いましょう、せーの!」


「「「ハッピーバースデー!!」」」


 いきなりにもかかわらず、皆、息ぴったりに声がそろう。事前に葵から聞かされていたからだろう。


「はい、皆さんありがとうございました! 最高の誕生日です……!」


 感動したように喜ぶ姫宮さんの机の上は、プレゼントでいっぱいになっていた。


 こうして姫宮さんの誕生日プレゼント会は、終わったのだった。


閲覧ありがとうございました! 感想等よろしくお願いします!



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