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才色兼備の少女が隣の家に引っ越してきたんだが  作者: 江谷伊月
第二章.凡人と天才の憂鬱
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28.デート(後編)。2つのキーホルダー

「さて、折角勝ったことだし、何をしてもらおうかしらねー」


「ちっ、負けたもんは仕方ないからな。なんでもこい!」


 クレーンゲームコーナーを歩き回りながら葵が楽しそうに考えている。できればあんまりキツくないものにしてもらいたいところだ。


「あ、これかわいい! 零人、これとってよ!」


「ん、なんだ?」


 葵が目を輝かせながら見ているのは、UFOキャッチャーの景品の小さい犬のストラップだった。どこかで見たことがあるな。何かのキャラクターだった気がする。


「これなんてキャラクターだったっけ」


「えー知らないの!? これね、『ヌピ太郎』っていうの! 今女子の間で可愛いって有名なのよ!」


「へー、そうなんだ。確かに愛嬌あるなあ」


 名前のセンスはともかく、見た目は確かにかわいい。女子が好きそうなものだった。


「おっけー、これをとればいいんだな。小さいから取りやすくていいよ」


 これくらいならお安い御用だ。


「そう? じゃあ……、余裕って言うなら2つとってよ!」


「え、2つも欲しいのかよ」


「いやそうじゃないけど! いいから2つとりなさい!」


「わ、わかったよ」


 なんだ、1つでいいなら何故2つ欲しがるんだ? まぁ小さいからまとめて2つ狙えそうだし、いっか。


 お金をいれて、ボタンを押してアームを動かす。ベストな位置は……こんな感じか?


 ボタンを押し終えると、アームが下降していく。ちょうどキーホルダーが2つあるところに落ちた。ここまでは狙い通り、あとはアームがうまく持ち上げてくれるかだ。


 アームがまた上昇していく。するとアームの爪にキーホルダーがひっかかり、そのまま2つとも持ち上がる。そして途中で落ちることなく穴まで運ばれていき、無事取り出し口に落ちた。よし、一発で景品ゲットだ。


「えー、すごい!! あんたこういうの上手いのね!」


「いや、景品が小さいから取りやすかったんだ。ほら、あげるよ」


「ん、ありがと、嬉しい!」


 獲得した2つのキーホルダーを、葵に手渡す。喜んでもらえてなによりだ。


「はいこれ」


「ん?」

 

 葵に何かを手渡される。見てみると、俺があげたキーホルダーが1つあった。


「なんだよ、気に入らなかったのか?」


「違うわよ、2つもいらないって言ったでしょ。だから、これは、その……」


「?」


 葵が顔を赤くして、恥ずかしそうに言うのをためらう。何故かは分からないが、最近はこんな姿をたくさん見ている気がする。なんだよ、こいつらしくないな。


「わ、私達のおそろいのものにしたいなって……」


「っ……!!」


 葵のその一言で、今度は俺の方が顔を赤くする。


 ペ、ペアルックにしたいだと……。それって男女だと恋人同士でするものじゃないか……! まさか、いやそんなわけないよな!!


 で、でも、葵のやつめちゃめちゃ恥ずかしそうにしてるな……。なんだよ、らしくないのが逆に可愛く見えるじゃないか……。


 って何を考えてるんだ俺は! 相手は葵だぞ! ずっと一緒に過ごしてきたなんてことないただの幼馴染みなはずだ! 落ち着け俺よ……。


「いや……?」


「べ、別にいいよ。ペアルックにしたいだなんて、葵も案外乙女っぽいところあるじゃないか」


「う、うるさいわね! それに案外って何よ!」


「い、いや、今までそういうのなかったからさ、ほんのちょっと意外だなって思っただけだよ」


「そういうことならいいけど……」


 ふう、危ない。折角機嫌が良さそうなのにまた怒らせるところしたな。


「まぁ、こ、今回はたまたまおそろいにしただけよ、いい? たまたまなんだから!」


「お、おう」


 やけにたまたまを強調してくるな……。そんなこと分かってるってのに。


「ふん、分かればいいのよ……! この可憐で純粋な乙女である私に感謝することね!」


「え、それはな……」


「あ"?」


「それはないすです!!」


 怖い。いつも通りの葵だ。


「とにかく、どっかに飾っておきなさい! 失くすんじゃないわよ」


「分かったよ」


 帰ったらスクールバッグにでも飾っておくとするか。


「じゃあ、そろそろ時間だし解散しよっか」


「そうね。なんかあっという間だったわ」


「そうだな。久しぶりに二人で遊べて楽しかったよ。ありがとな」

 

「う、うん。私も楽しかったわ」


「それはよかったよ」


 たまには皆で遊ぶんじゃなく、こうして二人で遊ぶのも悪くないな。


「よし、じゃあ途中まで道同じだし、一緒に帰るか」


「う、うん! そうしましょ!」


 そういって俺が歩きだすと、葵は嬉しそうに後をついてきた。


 こうして、いろいろと刺激的だった葵とのデートが終わったのだった。




―――――――――――――




葵サイド


 零人とのデートが終わった後の夜。私は、彼にとってもらった『ヌピ太郎』のストラップを手にもっていた。


「(これ、あいつとおそろいなんだ……。嬉しい……! 勇気だして言って良かった!)」


 キーホルダーをぎゅっと胸に抱く。小さいのに、やけにその暖かさが伝わってくるような気がした。


 しかしそれは、幸福感の中にほんの少しだけ、寂しさと虚しさを伴っていた。


「(そろそろ、好きって伝えないとダメだよね……。もう高校三年生だし)」


 あいつを好きになってもう何年もたつ。そして未だに思いを伝えることができずにここまできてしまった。


 高校が終わったらさすがに今よりは会う機会が減ってしまう。だから、今年が最後のチャンスだ。


「(そういえば、零人って卒業後の進路決まったのかな?)」


 前に聞いたときはまだ決まってないっていってたけど、あんまり遠くじゃないといいな。もしかしたら同じだったりして。そしたらまた一緒にいられるのに。

 

 まぁとにかく、今年は何事もがんばらないと!


前話の後書きで次回は明日の19時といいましたが、今日の間違いでした。1日で2本投稿したのは初めてかもです。

明日も19時に投稿します。休日なので、もしかしたらまた2本投稿するかもです。よければ感想よろしくお願いします。

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